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富 山地方鉄道(軌道線)
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諏訪川原電停 2011.10

国際会議場前電停付近 2011.10
目 次
1.環状線の計画の具体化まで
2.環状線の開業
3.環状線の開業後の状況
4.富山大橋の架け替えと延伸案
5.上滝線への乗り入れ
6.ICカードや新型車両の導入
7.その他

 富山は今、最も路面電車が熱い都市≠ニ言えるだろう。否、「路面電車」と言ってはいけないのかもしれない。富山は確実に「LRT」を目指し、そし て着実に LRT化を実現させているので。
 長年、富山の路面電車は注目を集めることは少なかったように思う。広島、長崎、熊本、岡山など他の路面電車先進都市≠ニ比べると何となく地味な印象が 続い ていたからだ。例えば1975年に廃止された笹津線や1980年に廃止された 射水線は、いずれも郊外路線が都心部に乗り入れるという運行形態を取り、もし現在も残っていれば確実にLRTの先駆けとして注目された存在になっただろう が、惜しくも利用客の減少によりバス輸送へ転換されてしまった。その後も1980年代はいくつかの市内線の路線が廃止されるなど縮小を重ねて何とか 現状維持しているような印象を数年前までは私を含め多くの方が持っていたのではないだろうか。
 しかし富山は行政が動き、事業者である富山地方鉄道もこれに応える形で新しい路面電車、LRT化へ向けて脱皮を図りつつある。きっかけは何と言って も富山港線のLRT化(富山ライ ト レー) が大成功したことに尽きるのだが、そこからの動きが実に早く、1982年に豊 橋鉄道が運動公園前まで延長して以来となる本格的な路面電車の路線新設(2009年)、富山 大橋架け替えに伴う単線区間の複線化(2011年度中)、西町に新電停設置(2013年春)、更に富山ライトレールと接続へ向けた動き(2014年以降) など、これほど前向きな活性化策が次 々と実現かつ具体化している路面電車は現在、富山以外に見当たらない。まさに富山は路面電車を核に都市の構造を大きく変えるという壮大な実験に取り組ん でいると言 えるだろう。目に見える成果はこれからだろうが、個人的には将来が大変楽しみな都市の1つである。

1. 環状線の計画の具体化まで  

▼富山市の路面電車 大手町ルートで環状線化 市長が正式表明  (2006年6月3日『北國新聞』)
 森雅志富山市長は2日、市役所で記者会見を開き、丸の内〜西町間の延伸による市内の路面電車環状線化について、大手町経由のルートを基本に事業化を図る ことを正式に表明した。2009年ごろの開業を目指し、事業費は20億円から30億円の見通し。環状線化される一帯については「公共施設 (の整備)も、この周辺を視野に入れていく」との考えを示した。
 環状線化が図られるのは、富山地方鉄道(富山市)富山軌道線のうち、本線と枝線、安野屋線の一部。丸の内から大手モールを経て西町までを結ぶ延長0.9 キロの大手町ルートを新設する方向となる。事業費には、レール敷設のほか車両の購入や電停の整備費が含まれる。
 森市長は大手町ルートを基本とする理由として、富山国際会議場や市民プラザと近いこと、富山城址公園と大手モールとの一体的整備で「魅力ある都市空間の 創造が可能」なことを挙げた。事業手法などについては今後、富山地方鉄道など関係機関と協議、調整するとした。
 大手モールについては、市の現段階の案では中央に単線で路面電車を走らせ、その両側に一車線ずつを確保する。
 森市長は環状線化の必要性と意義について、▽富山駅周辺地区と平和通り周辺地区のアクセス強化▽都心地区全体の回遊性と魅力の向上▽富山駅の高架化に合 わせた南北路面電車連結後のネットワーク形成――の3点を挙げた。
 環状線化をめぐっては、富山市や県、富山地方鉄道など関係機関・団体でつくる市内電車・環状線化計画検討委員会が、先月までに大手町ルートが望ましいと する報告をまとめていた。

▼富山市の路面電車環状線化 運営と整備の分離制度導入検討  (2006年12月23日『北國新聞』)
 国土交通省は次世代型路面電車(LRT)に関して、運営と整備の事業者が別々でも運営・整備を認める特例措置「上下分離制度」導入の検討に入った。来年 度政府予算財務省原案で、関連施策に2億6,600万円が盛り込まれた。同制度が導入されれば、富山市がLRTを利用して目指す市内の路面電車の環状線化 で、運営事業者の富山地方鉄道(同市)だけでなく、市による軌道新設と保有が可能となり、実現に大きく前進する。
 市は2009年ごろをめどに路面電車の環状線化を目指しており、実現には軌道の延伸を伴うため、多額の費用が必要となる。路面電車の運営事業者は富山地 鉄で、市は民間企業の同社に軌道敷設の費用を助成する方法では「市民の理解が得られにくい」(市都市整備部)として、公設民営による軌道整備を想定してい る。
 しかし、市都市整備部によると、現行の軌道法は運営と整備の事業者が同じ場合しか想定しておらず、これまで事業者が別々の事例はない。このため、市の公 設民営による軌道の整備と保有は困難な状況となっている。
 上下分離制度の導入は、国交省が公共交通の再生と活性化に向けて来年度の創設を目指す新制度の一環として検討されている。新制度は、市町村や公共交通事 業者、道路管理者、住民が協議会を設置して地域公共交通総合連携計画を策定し、国交相が計画を認定すれば、上下分離制度などの特例措置が認められる仕組み となる。
 新制度の関連施策として、財務省原案に盛り込まれた地域公共交通活性化・再生事業では、計画の策定や調査などに助成する。

▼車両、電停に総合デザイン 富山市が路面電車環状線化に向け  (2008年1月19日『北國新聞』)
 富山市は18日までに、2009年度の開業を目指す路面電車の環状線化に向けて、車両や電停、歩道のデザインに統一感を持たせる「トータ ルデザイン」を採用する方針を固めた。07年度中にも有識者や専門家、地域住民、関係者による検討委員会を設置する。トータルデザインは富山ライトレール にも導入され、グッドデザイン賞の金賞を受賞するなど全国的な評価につながっており、環状線化では中心市街地で“県都の顔”の創出を目指す。
 市は路面電車の環状線化で、丸の内から大手モールを経て西町に至る約940メートルの軌道新設区間で電停3カ所を新設するほか、バリアフリーの低床型 車両3両を導入し、大手モールの歩道を再整備する。これらにトータルデザインを取り入れることで、魅力的な都市景観の創出を図る。
 富山ライトレールでは、04年4月に富山港線デザイン検討委員会を設置し、1年間かけてトータルデザインを検討。1編成ごとに7色に塗り分けた車両の外 観や内装、海を感じさせるマストをモチーフにした電停に加え、会社のシンボルマーク、運賃収受用のICカード、乗務員のユニホームなどを総合的にデザイン した。
 その結果、富山ライトレールは06年4月の開業後、日本初の本格的LRT(次世代型路面電車)としてだけでなく、デザイン面でも全国的に注目された。日 本産業デザイン振興会(東京)によるグッドデザイン賞建設・環境部門の金賞や、日本サインデザイン協会(同)によるSDA大賞(経済産業大臣賞)などを受 賞した。
 路面電車の環状線化では、市が施設や車両を整備し、富山地方鉄道が軌道運送事業者となる。市都市整備部は「共同事業者である富山地鉄と今後、デザインに ついて十分に協議したい」としている。

▼軌道新設を認可 富山の路面電車環状化で国交省 市、年度内に着工  (2008年11月28日『北國新聞』)
 国土交通省は27日までに、富山市が来年12月の運行を目指す路面電車の環状線化事業で申請していた丸の内〜西町間(延長940メートル)の軌道新 設工事を認可した。これを受け、市は今年度内に丸の内から大手モールを経て越前町までの約500メートルの区間で、軌道路盤やレールの工事に着手する。
 環状線化事業は、富山地方鉄道(富山市)の市内電車が運行している既存の軌道に、新設する軌道を接続することで、JR富山駅や大手モール、総曲輪フェリ オなどを回る路線を開設する。
 国交省は既に、市が軌道整備を担い、富山地鉄が運送事業者となる「上下分離方式」の計画を認定している。市は県を通じて国交省に軌道工事の認可を申請 し、国交省から県に認可書が発送された。
 市は今年4月から、丸の内〜越前町間の軌道工事に備え、水道管など地下埋設物の移設工事を進めている。今回の軌道工事認可を受け、消雪装置や架線柱、保 安施設などを含めた工事に取り掛かる。軌道路盤などの整備は、富山地鉄が市の委託を受けて実施する。
 軌道新設区間のうち、残りの越前町〜西町間については、今年度内に地下埋設物の移設工事を始め、来年度に軌道を整備する計画である。

▼GPS活用で定時運行 路面電車の環状線化で富山市 位置把握、間隔一 定に (2009年3月6日『北國新聞』)
 富山市は5日までに、12月の開業を目指す路面電車の環状線化で、衛星利用測位システム(GPS)を活用した定時運行システムを導入する方針を固めた。 環状区間を走る2編成のLRT(次世代型路面電車)の位置をGPSでチェックし、車両の間隔が一定になるよう調整することで、日中は10分間隔とする定時 性 の確保につなげる。
 環状線化では、車両が約3.5キロの環状区間を反時計回りに約20分で一周する予定。市は日中に2編成の運行を計画しているが、乗降客が多い場合や、車 両の前を右折車がふさいだり、信号待ちが重なった場合は、運行に乱れが生じる。
 定時運行システムでは、市が4月に発注する新車両にGPS装置を取り付け、運送事業者となる富山地方鉄道の事務所に車両の位置をチェックできる端末を置 く。2編成の車両の間隔に乱れが出そうな場合は、事務所から運転士に連絡し、間隔を一定に保つように努める仕組みとなる。
 市は、車両の接近表示システム導入にもGPS装置を活用するほか、富山地鉄の市内電車の車両にもGPS装置設置に補助する方針で、運行の円滑化につなげ る。
 環状線化では、市が丸の内から大手モールを経て西町まで軌道を新設し、既存の市内電車の軌道と結ぶ。朝のラッシュ時については、富山駅と富大、南富山駅 の各方面を結ぶ市内電車に配慮し、1編成の運行とする。夜間も1編成とし、いずれも20分間隔となる。市は1日79本の運行を予定している。

▼市電環状線化、急ピッチ 12月下旬開業に向け (2009年9 月22日『読売新聞』)
 富山市の中心市街地で、富山地方鉄道市内電車(市電)の環状線化工事が急ピッチで進められている。12月下旬に開業の予定で、市は公共交通の利用増や市 街地のにぎわい創出などへの効果を期待している。

 ■新区間は940メートル
 市電の環状線化では、丸の内交差点〜西町交差点間に、約940メートルの軌道を新設する。市が軌道整備を担当し、富山地鉄や列車運行を担当する「上下分 離方式」で、市の総事業費は約30億円。丸の内〜西町間に設けられる電停名は、「国際会議場前」「大手モール」「グランドプラザ前」と決まった。市は、沿 線居住者の利用増や、大和富山店や近隣 商店街への来街者増などで、開業当初は1日あたり、現在の市電利用者の約1割(1,000人程度)の乗降を見込んでいる。

 ■スケジュール
 現在、富山国際会議場前などでレールを敷設する工事が進められている。9月末までにレールが納入され、11月末までに軌道を敷いたり、電停を設置したり する工事を終える見込み。
 富山ライトレールと同型で、白、黒、銀色の新型車両3編成も、11月半ばには富山地鉄の南富山車両基地に搬入されるといい、その後、習熟のための運転な どを行う。国や県の検査を経て、開業は12月下旬の予定だ。西町付近の歩道工事は来年3月末までかかる。

 ■運賃・ダイヤ
 環状線の運賃や運行ダイヤは富山地鉄で決定することになる。
 丸の内〜西町間は、片道運行で、おおむね10〜15分間隔のダイヤを予定。両交差点を約20分で結ぶ。
 運賃について森雅志市長は、1日の記者会見で「現在の市電が200円均一なので、おそらく同額になる」との見通しを示した。
 ただ、今年度地鉄では、ICカードを利用した精算システムを市電で導入することとしており、市はライトレールからの乗り継ぎ割引などの検討を求めていく 方針。市議会建設委員会でも、委員から「ライトレールから市電に乗り継ぐと、現在はそれぞれ200円ずつで往復800円。高いと利用が伸びないのでは」な どの指摘があった。
 市路面電車推進室は、「北陸新幹線開業後に、富山駅の南北を路面電車で結ぶ計画もある。バスなども含め、市民が利用しやすい公共交通にするため、運行の あり方について協議していきたい」と話している。


2. 環状線の開業  

▼「大環状線」からの転換 (2009年12月23日『朝日新 聞』)
 神通川をはさんで、富山市の市街地をすっぽりと囲む都市計画道路である草島東線・西線は、市の大動脈である国道8号、41号のバイパス機能を果たす「大 きな環状線」だ。総延長計約26キロ。沿線には、大きな駐車場を備えたスーパーやファミリーレストランが並ぶ。
 地図上のバイパス道路に目を落としながら、市都市政策課の幹部が言う。「この環状線の中に住んでもらおうという計画だったが、結果として、人が外へ行っ てしまった」
 道路の整備が決まったのは1966年。ちょうどトヨタ自動車が大衆車・カローラの販売を始めた年だ。マイカーが普及し、渋滞緩和を目的としたこの道路整 備と比例するように、市中心部に住む人は郊外へと移り住んだ。いま、人口密度が高い「人口集中地区」の面積は1970年の倍にまで広がった。その結果、中 心市街地の人口密度は全国の県庁所在地で最低水準になった。
   ◇
 高齢化に伴い、医療費などの義務的経費が市の財政に占める割合は09年度、48%に達した。こうした経費が今後、さらに上昇すれば、各地区の施設整備な どにかける経費は減り、ペースを落とさざるをえなくなる。「これまでのように、広い範囲を均等に整備していくというやり方は、もう続けられない」とまちづ くりを担う都市整備部の複数の職員も指摘する。
 「大きなまち」から「小さなまち」への転機が訪れた。
   ◇
 広がった生活圏をどう縮めるか――。超高齢化社会を前に、市は「車がなくても暮らせるまちを」と、公共交通を強化すると同時に、その周辺への移動を後押 しする。富山ライトレールへの支援や、JR高山線の増便。23日に環状線化する路面電車「セントラム」は計画の核に位置づけられる。いずれも、周辺への移 住には補助金を出すなどして、「まちなか居住」の推進策を打ち出してきた。
 「20年後でも暮らせるのは、と考えたらここだった」。そう話すのは、4年前に市北部の戸建てから市役所そばのマンションに夫婦で移った会社役員の男性 (55)だ。
 移住を決めたのは、県外の大学に進学した長男が、そのまま県外で就職したころ。「庭の手入れも雪下ろしも大変になる。いつか車を運転できなくなれば買い 物もできない」。すでに市が中心市街地の活性化に乗り出していたこともあり、「今後便利になるはず」と、今の場所を選んだ。日常的な買い物は、徒歩と市電 による移動で済ます。郊外の一戸建ては若い夫婦に貸しているという。
 この数年、「郊外から中心部へ」という人の流れが、できつつある。中心市街地の転入者と転出者の差を示す「社会増減」は、90年代には年間で数百人単位 で減ったこともあったが、08年には16人増え、09年も9月までで70人以上増えた。ある住宅メーカーの担当者は「団塊の世代を中心に富山でも都心回帰 の動きがある。逆に、郊外は苦戦している」と分析する。
 11月、路面電車「セントラム」の開業を前に会見した森雅志市長も、図書館や病院などを郊外に移してきた街づくりにふれ、「これからは環状線化を中心と したエリアに施設を凝集する」と改めて強調した。
   ◇  ◇
 富山市の中心市街地ににぎわいを取り戻す切り札と期待される「セントラム」が23日、開業する。この機会に、富山市が進める「コンパクト」なまちづくり の取り組みをみた。(久保田一道)

▼セントラムきょう発車 環状線36年ぶりに復活  (2009年12月23日『読売新聞』)
 富山市の路面電車環状線が23日、36年ぶりに復活する。環状線を循環するのは次世代型路面電車(LRT)「セントラム」。白、黒、銀の3編成のおしゃ れな車両は、にぎわいを取り戻したい同市中心部の新しい顔となる。かつての環状線を走らせていたベテラン運転士も感慨深げに、この日を迎える。
 「待ったかいがあった。車両は静かで本当に素晴らしい」。セントラムを運行する富山地方鉄道(富山市)で、路面電車運転歴44年の藤野松雄さん(65) は今月、セントラムを試運転し、胸がいっぱいになった。引退を1年延長し、開業の日を待っていた。
 運転士になったのは21歳の頃。当時の環状線は、一度乗務すると、1周20分強のルートを5周し、30分の休憩を挟んでまた運転し、多い日でこれを4回 繰り返した。
 「同じところをグルグル回って、まるで動物園のクマ」と冗談まじりに振り返るが、当時、行き交う人でにぎわっていた繁華街を循環する環状線乗務は楽し かった。通常、同じ場所を走っていると刺激がなく、注意散漫になることもあるが、「環状線は人や車の流れがその都度違うので、精神的につらくなかった」と いう。
 特に夏休みの頃は、西町近くの中教院前に夜店が並び、夜遅くまでにぎわいが絶えなかった。「終電も満員ですごかった。みんな夜遅くまで楽しんでいた」と 懐かしむ。
 富山市中心部、丸の内周辺の生まれで、子どもの頃から環状線が生活の足だった。だから、車社会に押される形で1973年に環状線が廃止になったときには 寂しさが募った。
 60歳で嘱託社員となり、本来は65歳となった今年1月に満期となり、一線を退く予定だった。しかし、環状線を復活させ、新型車両を走らせる計画を知 り、「元気だから、もう1年と会社にお願いした」。嘱託期間を1年延長した。
 ただ、23日の開業以降、本番の環状線運転はしない予定だ。自ら指導した若手に委ね、静かに引退するつもりだという。「私は試運転で十分満足。若手が 育っているから。あとは大丈夫ですよ」。そう言って笑った。

▼セントラム 相次ぐ事故 (2010年1月6日『読売新聞』)
 国道41号・一番町交差点に注意!!
  富山地鉄が運行する路面電車環状線「セントラム」は、先月23日の開業からわずか2週間以内に、車との接触など2件の事故が相次いだ。現場 はいずれも交通量の多い富山市一番町の国道41号・一番町交差点で、県警がセントラム対策として「右折・直進分離式信号」を導入したばかり。2件とも車両 と並走していた車との間に起きたもので、同様のパターンの事故は市内電車でも問題となっている。県警交通規制課は、現場の信号機の再調整を検討するととも に、車の運転手に注意喚起する方針だ。(石井恭平)
 事故は先月30日と今月2日。富山中央署によると、先月30日の事故は、正午頃、セントラムと並走していた乗用車が右側に寄り、交差点内でセントラムの 左側面と接触した。
 今月2日の事故では、午前10時25分頃、セントラムが混雑した交差点に進入したが、いったん停止。この間に信号が切り替わり、女性の乗用車が交差点に 入って右折しようとしていたところに、セントラムが再び発進し、その右側面に衝突した。弾みで乗用車は交差点内にいた男性医師の乗用車とも接触した。
 同課によると、分離式信号は、「止まれ」の赤点灯のほか、「直進・左折」と「右折」に切り替わる。直進と右折を別々にすることで、直進するセントラム と、並走状態から右折する車が接触することを防ぐ狙いがある。セントラム対策では一番町交差点のみだ。
 ただ、分離式信号に慣れないドライバーもいる。本紙の取材によると、同交差点では、5日正午〜午後1時に計4台の車が「直進・左折」の表示で進入し、右 折しようとした。通りかかった富山市の主婦(55)は「富山には、あまりない信号機。慣れていない運転手が間違えて発進してしまうのでは」と話す。

渋滞も原因か
 同課によると、2件の事故は、いずれも信号機が直接の原因ではないとみているが、現場近くのグランドプラザの駐車場に入ろうとする車の交通渋滞が背景に あると判断。周辺の違法駐車を取り締まるなどし、渋滞を緩和する対策も必要だとしている。
 一方、富山地鉄は、事故を受け、セントラムの運転士に対し、早めに警笛を鳴らすことや、渋滞時に交差点で減速することなどを通達。今後は警察と協力しな がら事故対策を講じるとしている。

▼富山市の平和通りを連動信号に 渋滞緩和、接触事故防止へ 11年度から  (2010年2月16日『北國新聞』)
 富山県警は2011年度から、富山市中心部で路面電車(市内電車)の環状線が走る平和通りで、慢性的な渋滞の緩和と、環状線の車両「セントラム」と車の 接触事故を防ぐため、交差点の信号を連動させる。渋滞解消と事故防止の「一石二鳥」の試みで、まちなかの交通環境の改善につなげる。
 15日に富山市役所で開かれたセントラム事故防止対策会議で、県警側が明らかにした。
 計画では、環状線と平和通りが交わる「越前町」、「一番町」、グランドプラザ前付近の2つ、「西町」の計5つの信号を連動させ、車の流れを良くする。
 現在、越前町と一番町の2つの信号は連動しているが、グランドプラザ前や西町は連動していない。例えば、越前町方面から西町方面に進行しても、グランド プラザ前や西町で赤信号になることが多く、渋滞発生の一因となっている。平和通りと交差する国道41号の信号は、一帯の信号を連動操作しており、渋滞緩和 を図っている。
 環状線では、昨年12月23日の開業から1カ月半で車との接触事故5件が発生している。事故はいずれも道路を右折かUターンしようとした乗用車がセント ラムと接触したもので、車の運転手の不注意が原因だ。ただ、県警は今後、渋滞が事故の原因になる可能性もあるとみており、信号の連動で事故防止を図る。
 会議では、環状線開業に合わせ一番町交差点に導入した「右折車両分離方式」信号の仕組みや右折時の後方確認の徹底などを呼び掛けるチラシ15万部を配布 することが報告された。県警からは、道路と軌道の境界を、分かりやすくする工夫が必要との指摘もあった。

渋滞緩和とセントラムの事故防止へ信号の
連動が計画される平和通り=富山市内



3.環状線の開業後の状況  

▼「セントラム」開業1ヶ月 予想超す乗客数  (2010年1月29日『読売新聞』)
商店街に知恵期待
 富山市の環状線路面電車「セントラム」が23日で開業1か月を迎えた。
 中心市街地活性化の切り札として同市が約30億円をかけて導入したが、「客足は伸びない」と渋い顔の商店主もおり、開業効果は今のところ実感できるほど ではないようだ。一方、街中心部に住民を増やす取り組みが、じわりと広がっている。
 床が低く、乗り降りしやすい2両編成の路面電車が、JR富山駅、県庁、富山城などを静かに巡る。
 市の中心部から約2キロ離れた郊外に住む会社員佐々木浩さん(33)は「普段は車で出掛け、じっくり中心市街地を回ったことはなかったが、気付かなかっ た風景が見えてきた。知らない店が多く、これからセントラムを使って訪ねてみたい」と話す。
 車の免許を返上し、沿線に住む亀井三郎さん(77)は「楽にゆったり乗れるのでありがたい。昔のように路面電車の路線をもっと延ばしてほしい」と語り、 利用者には好評だ。
 富山市は、車がなくても快適に暮らせる街づくり事業「コンパクトシティー」の認定1号を2007年に国から受けた。セントラムは、その中心部に人を運ぶ 目的で、市電の在来線2.5キロに、総曲輪通り沿いなどの新線を加え、3.4キロを1周する。
 総曲輪通りと中央通りの両商店街の約180店舗のうち6分の1が空き店舗となっている。06年に富山西武が撤退し、中心部で空洞化が進んでいる。従来の 市内電車では約1万人だった1日平均の乗降客数は、環状線が出来て2割近く増えた。1割増を見込んでいた同市の予想を上回った。
 しかし、新駅「大手モール」前にある創業80年のラーメン店「末広軒」経営者の山口道子さん(49)は「お客さんが多かったのは開業初日だけ。若者向け 洋服店やCDショップは郊外に多いから、人は街中には来ない。中心部に人がいないのに乗り物だけをつくっても駄目だ」と手厳しい。
 近くの老舗呉服店「秋吉屋」6代目、秋吉克彦さん(44)は、不満を隠せない。開業を盛り上げようとセントラム柄の手ぬぐい販売を準備したが、開業前の 昨年11月、商標権を持つ市から待ったがかかった。「店の売り上げアップとセントラムのPRの相乗効果を狙ったのに……。市街地活性化と言いながら本末転 倒」
  ◇
 路面電車を始めとした公共交通沿線での住宅新築などに市が最大50万円を補助する事業は、今年度の利用者が66件(昨年12月末現在)と、前年度1年分 の1.5倍を既に超えた。担当者は「セントラム効果もあるのではないか。じわじわと求心力を発揮できれば」と期待する。
 また、中央通り商店街は、商店主でつくる協同組合が資金を出して、マンション(125戸)を3月に着工する。指中恒夫事務局長は「住む人を自分たちの手 で増やしたい。郊外の大型店に奪われたにぎわいを、街中に取り戻す」と力を込める。
 セントラムは、にぎわいを運ぶことができるか。森雅志市長はにぎわい創出の「装置」と表現。「セントラムで市内のますのすし店を巡るといった楽しみ方も ある」とし、商店街などが知恵を出すことが重要としている。

▼路面電車、環状化好評 富山市中心部 (2010年1月30日 『中日新聞』)
 富山市中心部で昨年12月に開業した、路面電車の環状線。マイカーの普及で一時は廃線が進んだが、新たに線路を敷き直して37年ぶりに中心街をぐるりと 周回する。狙いは市街地の活性化だ。公共交通を生かした街づくりに、全国から注目が集まっている。
 車が行き交う街なかを、次世代型路面電車(LRT)が走る。白、黒、銀の3種類で、愛称は「セントラム」。低床式で車いすでも乗り降りしやすい。市内の 主婦(77)は「外観がすてき。富山のイメージも明るくなる」と話す。
 昨年12月24日の運行開始から1カ月の乗降客は、環状線全体で1日平均3,379人。新設区間にできた3つの停留所の乗降客は1日平均1,450人と な り、市の需要予測(1,320人)を上回った。
 路面電車の線路延長、環状化は市の政策として実現した。利用者が増えてきたためではなく、乗降客はむしろ10年前に比べて約3割も減っていた。
 地方都市の多くが抱える中心部の空洞化問題は、富山も例外でなく、マイカー普及や持ち家志向の高さから、郊外居住が進み、郊外型ショッピングセンターが それに拍車をかけていた。1960年代から路面電車の利用は減少傾向で、72年には環状運行をやめ、翌年には今回線路が敷かれた区間の一部は廃線となっ た。
 車社会を前提とした都市が形成されてきたが、一方で高齢化社会を迎えて車の運転を卒業した市民の「足がない」という問題も顕在化。諸問題の打開策として 打ち出されたのが、鉄路の復権だった。
 森雅志市長は「公共交通を軸としたコンパクトなまちづくり」を掲げる。2006年には、廃線になったJR富山港線を活用し、第三セクターの路面電車「富 山ライトレール」を開業。JR富山駅を起点とした環状線を中心に、東西南北へ放射状に鉄路が延びる。14年度末予定の北陸新幹線開業後には、富山ライト レールと環状線を接続する構想もある。
 「1つの装置を作ったので、商業者を含めた市民が街の魅力を高めてほしい」と森市長は期待。人の流れの誘導とともに、中心市街地の居住者増も図る。公共 交通を中心にした街づくりは「環境に優しい」と評価され、08年、国から環境モデル都市に選ばれた。
    ◇
 昭和初期には65都市にあった路面電車は、利用者減で廃線が続き、現在は17都市に。岐阜市中心部を走っていた路線も、05年に廃線となった。
 しかし最近は環境意識の高まりで脚光を浴びており、広島、鹿児島市などは路面電車を生かした街づくりを推進。愛知県豊橋市は08年に低床式の新型車両 「ほっトラム」を導入し、市は「街の顔としてシンボル性を高めたい」と期待する。
 路面電車のない宇都宮市や松江市などでもLRT新設の構想があるが、採算面などで難しい現状もある。福井大大学院の川上洋司教授(交通計画)は「富山は 既存レールを活用して、戦略的に街づくりをしている」と評価。「車依存の社会には限界があり、公共交通の復権は世界的な動き。市民の合意を得て、将来を見 据えた取り組みが必要だ」と話す。

37年ぶりに環状化された路線を走る
次世代型路面電車(LRT)。=富山市内で

 【路面電車環状線セントラム】 富山地 方鉄道の既存路線に、約900メートルのレールを新設して環状化。市が軌道と車両を整備し、運行を富山地鉄が行う 「上下分離方式」を採り、市は30億円を投じた。2両編成でJR富山駅前と中心商店街を結ぶ1周3.4キロを約20分で周回。日中は10分間隔で反時計回 りに走る。

▼セントラム3電停 利用 ほぼ予測通り  (2010年2月27日『中日新聞』)
運行開始から1ヵ月調査
 富山市は、昨年12月24日に運行を始めた路面電車環状線セントラムの利用状況をまとめた。1月末までの1カ月余りで、新設した3電停の乗降客数は1日 平均1,386人。市の需要予測をわずかに66人上回った。
 新電停のうち、総曲輪フェリオ近くにある「グランドプラザ前」の利用が最も多く同1,024人、「大手モール」が同185人、「国際会議場前」が同 177人だった。
 曜日別では、土日祝日が同1,894人で、平日の約1.8倍となった。路面電車推進室は「通勤よりも、買い物目的の人が利用しているのではないか」と している。
 セントラムは平日79本、土日祝日は80本運行。日中は約10分おきに運行している。 (渡辺ゆり)

▼開業から3カ月 薄れる効果 脱“セントラム頼み” (2010 年3月22日『中日新聞』)
 にぎわい創出 商店街で機運高まる
 富山市中心部に、にぎわいを取り戻す切り札として昨年末に走り始めた路面電車環状線「セントラム」が23日、開業3カ月を迎える。乗客数は開業効果が 薄れて減少傾向だが、地元商店街ではまちの魅力向上への機運が高まっている。 (渡辺ゆり)

 ■半減
 新設した3電停の乗降客数は2月末現在で1日平均1,196人。需要予測を約100人下回ったが、市路面電車推進室は「利用が多い休日に雪が降ったた め」と し、「目標の1,000人は超えた」と幸先の良さを強調。総曲輪フェリオを管理する総曲輪シティの五艘(ごそう)光洋社長も「休日はたくさん乗っていて、 店にも 入ってくれる」と開業効果を語る。
 ただ月別に見ると、12月は1,992人、1月は1,229人、2月は931人。乗客は最初の月の半数以下になり、開業効果は徐々に薄れつつあ る。総曲輪通り商盛会の石黒俊志(たかし)事務局長は「冬なのでもともと客足は落ちる時期。環状線だけで極端に客が増えることはない」と指摘する。
 一方、新型車両のセントラムは、走行時の“静かさ”から接近しても乗用車が気づきにくく事故多発が心配された。
 12〜1月、右折して線路を横切ろうとした車との接触事故などが5件あったが、2月以降は発生の報告はない(19日現在)。ドライバーにもセントラムの 特長が周知されてきたようだ。

商店街の入り口前を走るセントラム。路面電車を生かし
たにぎわいづくりに注目が集まる=富山市総曲輪で

 ■新店
 レールが新設された大手モールでは今月7日、住民らがパリの朝市を参考にした「越中大手市場」を1年ぶりに再開した。実行委員長の秋吉克彦さん(44) は「電車が走っただけでは効果はない。プラスアルファが必要」と魅力の創出に意欲を燃やす。
 中央通り商店街などで今月、ガラス展を開いた寝具店経営の平野安治さん(54)も「すぐに人は増えないが、イベントをきっかけに店のよさを知ってもらう ことが大事」と息の長い取り組みを目指す。
 商店街で問題となっている空き店舗。総曲輪地区には約70店あるが、2007年のフェリオ開業時になかった空き店舗が現在は10軒ほどある。
 市が新規出店者に店舗の改修費用や賃借料を補助する制度の後押しで、今月中に服飾店、4月には時計店が開店する。石黒事務局長は「ほかにもいくつか話は ある。新しい店が出れば客の見方も変わる」と期待を示す。
 国土交通省が今月18日発表した地価(1月1日現在)は、新電停付近で横ばい。県内全域で下落傾向の中、セントラムの開業効果で下げ止まった。郊外から 中心部のマンションに移り住む若者世代も増えつつある。
 秋吉さんは「セントラム自体で商店街が大きく変わることはない。地元から発信することが大事」と力を込める。にぎわいを創出する仕掛けづくりが、ますま す重要になりそうだ。

▼セントラム効果 いまひとつ きょう開業1年  (2010年12月23日『中日新聞』)
乗客数伸び悩み
「商店街に魅力必要」
 富山市中心部を走る路面電車環状線「セントラム」が、23日で開業1年を迎える。新路線周辺の人通りは少し増えたが、乗客の数と商店街への波及効果はい まひとつの“徐行運転”だ。(永井響太)
 市によると、新設した3電停(国際会議場前、大手モール、グランドプラザ前)の1日平均の乗降客数は、11月末までで956人。当初見込みの1,000 人を 下回った。1日約80本運行しているので、1便ごとの乗客は平均十数人。土日祝日の1,309人に対し、平日は783人と少なかった。
 他方で、市が3月に行った3電停近くでの歩行者量調査は、1年前と比べて67.1%増えた。市は、セントラムが買い物客らを呼び込んだとみる。
 森雅志市長は1日の定例記者会見で「一定の効果は出ている」と強調したが「もうちょっと乗客数が伸びてくれれば」と本音も吐露した。
 開業を機に、沿線の商店街は「日曜市場」を復活させるなどして、にぎわいづくりに力を入れたが、沿線商店街「大手モール」の振興会の秋吉克彦さん (45)は「よくなったと思わない」と効果を実感できないでいる。
 周辺では、セントラム開業後の今年3月に「ロッテリア」、年末に「サイゼリヤ」と若者に人気の飲食店の全国チェーンが相次ぎ撤退する。
 秋吉さんは「魅力ある取り組みをする意欲を持たないとセントラムに乗ってもらえないし、商店街に来てもらえない」と商店街や店の意識改革を訴える。
 まちづくりに詳しい富山大人文学部の大西宏治准教授は「セントラムは新しい交通を提供しただけ」と取り組みの不十分さを指摘。利用者増や街のにぎわいの ために「中心市街地の駐車場料金とセントラムの切符をセットにした企画があれば新たな動線ができる」とマイカーと連動した仕組みを提案する。

▼セントラム開業 平日に恩恵 路面電車の利用 4割増  (2011年5月20日『中日新聞』)
10年客数1万299人
市街地滞在時間 「変化なし」で課題も
 富山市内を走る路面電車全体の利用者数が、環状線セントラムの開業効果で、平日に約4割増えたことが市などの調査で分かった。その一方で、中心市街地で の滞在時間は変わらず、にぎわいづくりにはいまひとつといえそうだ。(永井響太)
 調査は、2009年末のセントラム開業前後にそれぞれ特定の日を選んで実施。平日の利用者は、同年が7,253人だったが、10年は1万299人となり 42%増えた。休日は、09年が5,037人、10年は5,682人で12.8%増えた。
 中心市街地に来る頻度をセントラムと自動車とで比べた場合、週1回以上訪れる割合はセントラムが平日で37%、休日で38%。ともに自動車より約2倍高 かった。
 一方で、セントラム利用者に中心市街地での滞在時間について尋ねたところ「増えていない」と回答した人が平日で53%、休日で59%いた。
 市は本年度から、市街地のにぎわいを増やす施策に着手。路面電車にICカードで1日複数回利用すれば4回目以降の運賃を無料にしたほか、65歳以上が 100〜200円で鉄道やバスに乗れる「おでかけ定期券」の利用対象に路面電車も加え、滞在時間増を図っている。
 調査は市と富山地方鉄道が、セントラムを含めた路面電車全線、グランドパーキング(同市総曲輪)の利用者に調査票を配布するなどして実施した。

 都心環状線の開業と前後して富山市中心部では様々な再開発計画が始動している。それら再開発を路面電車の利用者増にどう結び付けるかが今後の課題と言 えるだろう。

▼西武跡地前に新電停 セントラム利便性向上 (2011年8月 24日『中日新聞』)
来年度着工

 富山市と富山地方鉄道(富山市)は、路面電車の新しい電停(停車場)を、同市総曲輪の旧富山西武跡地前に設置する。2012年度に着工し、13年春の利 用開始を目指す。
 市路面電車推進室によると、電停は長さ20メートル、幅1.75メートルで富山駅前方面に設置。旧富山西武跡地前の歩道を約1.5メートル狭める。路面 電車を運行する富山地方鉄道が設けて、市が補助する。荒町や西町など既存の電停はそのまま残る。
 反時計回りに進む環状線セントラムに乗った場合、グランドプラザ前〜荒町間が約470メートル離れている。地元住民や商店街から新たな電停設置の要望 があり、市や同社などが設置場所を検討していた。新電停はグランドプラザ前から約300メートル、荒町から約170メートルの距離に計画されている。
 06年に閉店した旧富山西武跡地は、大和小田急建設(東京都)がアパマンショップホールディングス(同)から土地と建物を取得する見通し。商業施設とマ ンションの入る24階建てビルを計画している。(永井響太)

新しく路面電車の電停が設置される場所。
左側の建物が旧富山西武跡地=富山市総曲輪で



▼富山西武跡、5億円で売却 アパマンHDが大和小田急と契約へ  (2011年7月12日『北國新聞』)

 2006年3月に閉店した富山市総曲輪3丁目の西武富山店跡について、土地と建物を 所有するアパマンショップホールディングス(HD、東京)が、大和小田急建設(同)に約5億円で売却する方針を固めた。12日にも契約を交わす。大和小田 急建設は約80億円をかけ、跡地にマンションと商業施設の複合ビル建設を目指す。既存ビルについては来年4月にも解体に着手する。
  関係者によると、旧富山西武のビル解体費は3〜4億円とみられる。大和小田急建設は跡地約3,100平方メートルと周辺の土地を加えた約 3,800平方メートルの敷地に、2014年度末までに24階建てのビルを再開発事業で建設し、今年度内の都市計画決定を目指す。1〜4階は食品スーパー などの商業施設を誘致し、5〜24階は200〜150戸の分譲マンションとする。戸数に応じた駐車場も整備する。
  富山西武跡は、西武百貨店の撤退後、アパマンショップHDグループの駒矢ビル(東京)が2007年8月に取得。商業施設などのビル建設を目 指したが、長引く不況やリーマンショックで計画は進んでいなかった。

来年4月にも解体される旧富山西武
=富山市総曲輪3丁目


▼旧大和跡地ビルに市立図書館 (2010年1月29日『読売新 聞』)
コンパクトなまちづくり加速 富山市方針富山第一銀も入居検討
 富山市は、同市西町の旧大和富山店跡地に建設される再開発ビルに市立図書館を移転する方針を固めた。29日に発表する。富山第一銀行もビル入居を検討し ており、中心市街地空洞化の象徴となってきた同跡地の再開発が、大和移転の2007年以来3年ぶりに始動し、2014年度の完成を目指す。市は集客力のあ る施設を中心部に集めることで、コンパクトなまちづくりを加速させたい考えだ。
  再開発ビルは、地権者でつくる「西町南地区市街地再開発準備組合」(河上弥一郎理事長)が約4,400平方メートルの敷地に建設を計画。当初、08年度の 都市計画決定を目指し、市も08年度予算に再開発ビルの基本設計や測量など事業計画作成の補助金1億3,200万円を盛り込み、市立ガラス美術館をビル内 に新設する方針も打ち出した。しかし、入居の有力候補と目された富山第一銀行との話し合いが進まず、市は年度途中で事業費を全額削った。
  市は仕切り直す中で、城址公園にある市立図書館が老朽化し、耐震基準を満たしていない点に着目。北陸新幹線が開通する2014年度までに城址公園を整備す るのに合わせ、1日1,000人以上の集客力を誇る施設として再開発ビルへ移転させ、中心部のにぎわい創出を図ることにした。新年度予算に1億円程度の関 連事業費を計上する方向で調整している。
  現在の図書館は1970年建設。7階建て複合公共ビルの1階と4〜6階の計5,200平方メートルに85万冊の蔵書を持つ。移転先は当初、車を利用する市 民の便を考慮して郊外を想定していたが、中心部への移転により、車がなくても快適に暮らせる市の「コンパクトシティー」構想の促進にもつなげることにし た。総曲輪小学校跡地も候補に上ったが、「路面電車環状線『セントラム』の開通で注目度がいっそう高まった旧大和跡地が好ましい」と判断した。
  一方、富山第一銀行は同市総曲輪にある現在の本店が手狭になり、改築や移転の必要性が高まっている。再開発ビルへの入居については「前向きに検討中」(広 報担当)で、どの程度まで機能を移すか、29日に市に報告することにしている。
  旧大和は1932年から同市中心部の繁華街で営業していたが、建物が老朽化したことなどから、07年9月、西町から近くの総曲輪に移転。市内の一等地に巨 大な廃ビルが残った。総曲輪には06年に撤退した富山西武の廃ビルもあり、周辺商店街や市民から早期の再開発を求める声が強まっていた。

市立図書館の移転先となる方針が固まった
旧大和跡地(28日、富山市西町で)



4. 富山大橋の架け替えと延伸案  

▼富山県、富山大橋の架け替え工事着手へ・11月  (2006年5月10日『日本経済新聞』北陸版)
 富山県は県道の富山高岡線(富山市〜高岡市)で、神通川をまたぐ富山大橋の架け替え工事に11月にも着手する。事業費は約250億円の見込み。橋の老朽 化が進み、2車線で交通渋滞が常態化しているため、4車線の橋を新たに架ける。
 建設する橋は橋梁(きょうりょう)部分が466メートルで、関連道路を含めると延長は約1.3キロメートルとなる。2011年度に供用を始め、13年度 までに古い橋を撤去する予定。
 橋の上を走る富山地方鉄道の路面電車の線路を複線化する。北陸新幹線の富山〜金沢間の開業後に新型路面電車の富山ライトレールと接続するため、ダイヤを 柔軟に組みやすくなる。

▼富山大橋:架け替え起工式 路面電車を複線化−−11年度完成/富山  (2006年10月26日『毎日新聞』)
 富山県は、富山市安野屋町〜鵯(ひよどり)島の神通川に架かる富山大橋の架け替えに着手し24日、現地で起工式を行った。11年度に完成予定。
 現在の富山大橋は1936年完成。片側1車線で、中央を富山地鉄の路面電車が走行する。近年、老朽化が進んだことなどから架け替えを決めた。
 新しい橋は約4.5メートル下流側に建設。全長466メートル、幅30.5メートルで、片側2車線とし路面電車も複線化する。また、立山連峰などの風景 を眺められるように、計4カ所にバルコニーを設け、街灯や路面電車の架線も中央部に一体化する。
 式典には約80人が出席。石井隆一知事は「市と県をもっと魅力ある地域にする一環として、立派な橋にしたい」とあいさつした。また、地元の芝園小と五福 小の児童も加わり杭打ち式を行った。
(柳沢和寿)


▼市電富山大が延伸案 工学部前まで900メートル/電停2つ新設 地鉄・市・県に要望へ  (2012年1月26日『読売新聞』)
 富山大は、富山市五福の「大学前」が終点となっている富山地方鉄道の市電を同大工学部前まで約900メートル延伸し、電停を2つ新設することを、富山地 鉄や市、県に要望することを決めた。26日に地元住民の代表らと会合を開き、延伸案について理解を得る。
 「大学前」電停は、同大五福キャンパスの正門から約300メートル南東の県道上にある。一方、工学部は同じ五福キャンパスでも、電停からは五福公園を挟 んで南西側にあり、利便性が悪い。
 同大の延伸案では、大学前電停から、五福公園と五福キャンパスの間を南西方向に通り、さらに南東方向に折れて工学部前まで延ばす。新電停は、県営球場と 五福キャンパスの間と、工学部前の2か所に設ける。
 工学部の近くには、富山商業高と、専門学校の富山歯科総合学院もある。同大によると、これらの学生や生徒は合わせて約3,000人で、延伸が実現すれば 新電停を利用することが見込めるという。
 同大は昨年12月の役員会で延伸を要望することを決定。26日の会合で住民の了解が得られ次第、文書で地鉄や市に正式に要望する。将来的には、南西に 4.5キロ離れた、医学部などがある杉谷キャンパスへの延伸も要望したい考えだという。
 同大はまた、来年4月の導入を目指して学生証のICカード化も検討。富山地鉄の市電やバスで使える交通系ICカード「ecomyca(えこまいか)」の 機能も搭載できるようにしたい考えだ。
 富山地鉄総務課は「延伸を期待されることはありがたい。資金面などのハードルがあるが、要望を受けてから検討したい」としている。


 富山大学の杉谷キャンパスはここ(地図)。市街地から相当離れた丘の上に あって、ここまでの路面電車の延伸はいくらなんでも無理があると思うのだが…。

▼市電延伸案おおむね了承 富大と懇談で五福の住民 (2012年 1月27日『北國新聞』)
 富大は26日、五福キャンパス周辺への市電延伸案を五福地区の住民代表に説明し、おおむね了承を得た。ただ、ルートについては現行案では呉羽方向への延伸の可能性がなくならないかなどの意見が出さ れ、地元とさらに協議を重ねることになった。同大はできるだけ早期に、延伸と電停新設を県や富山市などに要望する。
 地元の意見を聞くため、五福キャンパスで非公開の懇談会を開いた。大学側から遠藤俊郎学長や理事ら8人、住民側から五福校下自治振興会長ら6人が出席し た。
 富大の延伸案は終点電停の「大学前」から県道を左に折れ、五福キャンパスと五福公園の間を通って南東方向に曲がり、工学部付近まで約1キロ伸ばす。県営 富山球場と工学部近くに新電停を設けることになっている。
 懇談会後に会見した広瀬貞樹理事・副学長によると、市電延伸ルートに対する住民側の質問に対しては、大学の提案は将来的に呉羽地区や杉谷キャンパスまで の延伸を含むとの考えを伝えた。
 遠藤学長は「地域代表から得た意見を踏まえ、検討を継続し、早い時期に県や富山市、富山地方鉄道などの関係機関に要望したい」とコメントした。

 呉羽方面への延伸は面白そうだ。現在の終点である大学前電停から600mほど県道44号線を西に進んだ五福周辺(地図)はマンションやアパート、戸建住宅などが密集し、居住人口は少なくなさそ うである。更に西に進むと高山本線と交差するが、そこで両者が乗り換えできるようにすれば高山本線から富山市中心部への到達時間を短縮できるという効果も 期待できる。

大学前電停から西を望む 2011.10

県道44号線の五福付近 2011.10


5. 上滝線への乗り入れ  

▼上滝線に路面電車乗り入れ 富山市が活性化基本計画  (2010年6月5日『北國新聞』)
 富山市議会まちづくりと公共交通対策特別委員会(岡本保委員長)は4日開かれ、市側は富山地方鉄道の上滝線について、将来の望ましい運行形態などを盛り 込んだ上滝線活性化基本計画を示した。基本計画では、上滝線に市内電車(路面電車)の低床車両が乗り入れ、現行の鉄道車両と併用する案を「最適」とした。
 基本計画では、運行形態として、
(1)現行のまま新駅などを設置する
(2)鉄道区間も走行できる複電圧の路面電車の低床車両を導入して乗り入れる
(3) 上滝線の車両をすべて低床の路面電車車両とする
(4)不二越線も含めて路面電車車両とする
―4案を検討。
 利用者の見込み数は(4)案が最多で現行の1.51倍となったが、初期投資に約44億7千万円が必要で、年間収支は1億5,900万円の赤字となる。輸 送 力にも問題があり、不適とした。(3)案も年間1億6,700万円の赤字となり、(1)案は収支がプラスになるものの、中心市街地活性化への効果が低いと し た。
 (2)案は年間5千万円の赤字となるが、市内電車の乗り入れで中心市街地へのアクセスが向上し、1.38倍の利用者増が見込めるため、最適とした。
 新駅の設置も駅勢圏人口や周辺施設などを考慮して盛り込んだ。近くに県立中央病院がある「稲荷町〜不二越」、商業施設に近い「南富山〜朝菜町」のほか、 大規模なパークアンドライドの用地が確保でき、住宅団地にも近い「開発〜月岡」で駅を新設すべきとした。南富山駅での鉄軌道の結節強化や上堀駅などでの構 内踏切の設置も提案した。


6.ICカードや新型車両の導入  

▼富山市内の路面電車にICカード導入へ   (2009年2月18日『北日本放送』)
路面電車の全ての車両に、ICカード導入へ
 富山市は富山地方鉄道と連携して市内を走る路面電車の全ての車両に、ICカードで運賃を支払えるシステムを導入する方針を固めました。
 今年12月の環状線開業に合わせての利用開始を目指していて、富山ライトレールの「パスカ」とも相互利用できるようにする方針です。
 公共交通の運賃の支払いなどに使える「ICカード」は現在、県内では富山ライトレールに「パスカ」が導入されています。
 富山市は富山地方鉄道と調整を進めた結果、今年12月までにこうしたICカードシステムを地鉄が運行する市内電車でも導入する方針を固めました。
 ICカードの導入を検討しているのは既に運行している路面電車17台と、12月開業予定の市内電車環状線を走る新型車両3台で、カードは、富山ライト レールの「パスカ」とも相互利用できるようにする方針です。
 市は事業費を新年度予算案に計上して、システム導入を支援する方針です。
 一方、環状線が通る予定の平和通りのアーケードの一部、総延長273メートルが取り壊されることになりました。
 これは路面電車が走るため、歩道を従来より1メートル狭くする必要があるためです。
 取り壊し工事は来月末には完了する見込みで、その後、新しいアーケードが作られるかどうかは、まだ決まっていません。

▼富山地鉄がICカード「えこまいか」導入 3月から環状線を含めた路面 電車に (2010年2月5日『北國新聞』)
 富山地方鉄道(富山市)は4日、運賃支払いに利用できるICカードを導入し、3月14日から環状線も含めた市内電車(路面電車)でサービスを開始すると 発表した。同時に先行する富山ライトレールのICカード「パスカ」との相互利用も始める。2010年度以降、路線バスや鉄道線に範囲を広げ、公共交通の利 用促進を図る。
 ICカードはエコとマイカード、富山弁にちなみ「えこまいか」と名付けた。利用時の市内電車の運賃を大人は30円、小児は10円割り引く。パスカを利用 した時でも運賃、割引とも同額にする。有効期間が同じならば最大5枚分の定期券をまとめられる。
 えこまいかは市のコミュニティバスでも使用できる。電鉄富山駅などで販売し、価格は保証金500円を含めて1枚2千円。車内などで入金できる。既存の 「トラムカード」は取り扱いをやめる。
 今回の総事業費は2億円あまりで、うち7割を国、県、市が補助する。普及が順調に進めば他の交通事業者や商業、公共施設と連携することも検討する。
 県は、富山地鉄がICカードシステムの設置をバスに拡大する取り組みを補助するため、新年度当初予算案に2,900万円を盛り込む。バス路線の関係自治 体 も補助する見通しである。

▼路面電車 若返る 地鉄 南富山―富山で28日から (2010 年4月17日『中日新聞』)
低床式 車いすにも優しく

 富山地鉄(富山市桜町)の路面電車新型車両「T100形」の報道向け試乗会が16日、同市大町の南富山駅であり、同駅〜富山駅前間を往復した。21日か ら運転士の訓練を行い、28日から営業運転を始める予定。(山田晃史)
 老朽化に伴って更新された新車両は県内初の3連接車両。低床式で、全国では愛知県豊橋市の路面電車で同じ型の車両が走っている。
 当面は南富山駅〜富山駅前間のみを1時間に1往復するが、線路の整備ができ次第、大学前まで運行区間を延ばす。
 車両は長さ16.3メートル、幅2.4メートル。床の高さは地面から38センチで、既存車両の約半分。車いすでも乗り降りしやすいのが特長。購入費は 2億4,500万円で、そのうち国が半分、県と市が8分の1ずつを補助した。
 15日まで行っていた愛称の公募には、県内外から256通の応募があった。愛称は営業運転で行う出発式で発表する。

南富山駅を出発する新型車両「T100形」


7. その他  

▼消えゆく風情ある石畳 富山の市内電車、車通過で徐々に傷み  (2007年10月21日『北國新聞』)
 富山市中心部を走る富山地方鉄道の市内電車の軌道敷に石畳が使われている区間が、全路線の1割、約700メートルにまで減少している。かつてはほぼ全線 で 使われていた石畳だが、通過する車の増加で傷みが激しくなり、より管理しやすいコンクリートやアスファルト舗装に代わった。現存する部分も補修時期が来れ ば切り替えられる見通しで、市民からは「昔ながらの風情ある光景が見納めになってしまう」とさみしがる声も上がっている。
 富山地鉄によると、市内電車の軌道敷は、1913(大正2)年に開業して以来、中心市街地を幾つもの路線が張り巡らされていた1970(昭和45)年 前後までは、ほとんどの区間で石畳だった。
 しかし、高度経済成長期を経て車の交通量が急増し、変化が訪れる。軌道敷部分は原則、車の走行は認められていないものの、右折などで横断する際に軌道上 を頻繁に通る影響で、削れたり割れたりする石が増えてきた。石を取り換えて敷き詰めるのは手間がかかることもあり、コンクリートやアスファルトの舗装に順 次、切り替わっていった。
 昭和40〜50年代には、車社会の広がりに伴う利用者の減少などで、路線の廃止も相次いだ。廃線跡にはアスファルト舗装が施され、路面電車が走っていた 形跡は消えていった。南富山駅前〜富山駅前〜大学前の1路線6.4キロとなった現在、石畳の軌道敷が残るのは南富山駅前、富山中央郵便局前の両交差点の一 部と、富山駅前〜丸の内間だけとなっている。
 石畳が現存する3カ所についても「いずれ補修する時期が来るが、石畳を残す可能性は低いだろう」(富山地鉄技術課)としている。市内電車を長年にわたり 見続けてきた総曲輪通り商盛会の松井健資理事長(58)は「電車と石畳はワンセットで富山の街の情景となっていた。このまま消えてしまうのはさみしい」と 話している。

数少なくなった石畳の軌道敷
=富山市桜橋通り


【参考文献】
佐藤 信之『富山のライトレール文化』「鉄道ジャーナル」第40巻第11号、通巻第481号、2006年

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