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札幌市交通局(地下鉄)
公式webサイト
http://www.city.sapporo.jp/st/
目 次
1.札幌 市営地下鉄と札幌都市圏
 @札幌市営地下鉄の概要
 AJR北海道との競合関係
  (1)南北線・ 麻生駅とJR札沼線・新琴似駅
  (2)東西線・琴似駅とJR函館本線・琴似駅
  (3)東西線・新さっぽろ駅とJR千歳線・新札幌駅
  (4)東 西線・白石駅とJR函館本線白石駅
  (5)東西線・南郷13丁目とJR千歳線・平和駅
 B延伸計画
2.南北線
3.東西線
4.東豊線
5.経営施策について

南北線・真駒内駅 2013.6

大通公園に面した大通駅 2013.6

1.札幌市営地下鉄と札幌都市圏  
 札幌市営地下鉄は、札幌オリンピック開催を目前にした1971(昭和46)年12月に南北線・北24条〜真駒内間が開業したのを皮切りに1976(昭和 51)年6月に東西線・琴 似〜白 石間が開業、東豊線は1988(昭和63)年12月に栄町〜豊水すすきの間が開業した。その間やその後も各路線で延伸が行われ、1999(平成11)年2 月の東西線・琴似〜宮の沢 間の開業によって現在の営業キロ48kmに及ぶ地下鉄ネットワークが完成した。地下鉄開業前の札幌市内の公共交通機関の主力は路面電車とバスであったが、 高 度成長期に札幌は100万 都市へと急成長を続ける中でその輸送力は限界に達していた。そのような中で札幌オリンピックの開催が決まり地下鉄の建設が一気に具体化し実現した。この オリンピッ クの開催により札幌の発展が10年早まった≠ニよく言われているようだが、実際オリンピック前後では民間資本の建設ラッシュが起き、街の様相が一変した という。 地下鉄の開業も札幌の風景を大きく変えた象徴の1つと言えるだろう。

 その後の札幌市は札幌市営地下鉄の路線網拡大と同様に、いやむしろそれ以上のスピードで拡大を続けている。1970年10月の国勢調査では約101万人 と晴れて「百万都市」の仲間入りをした。1985年10月の国勢調査では約154万人と15年間で人口が約1.5倍という著しい増加ぶりで、全国で5番目 の人口 を抱える大都市 となった。そして直近の2010年10月の国勢調査では約191万人にまで増加している。札幌市営地下鉄は長年、札幌都市圏を支える動脈として確固たる地 位を維持・確立して いるが、利用者数は1995年度をピークに減少傾向で近年は増減を繰り返す横這い状態で推移しており、居住人口の増加に見合う利用者獲得に成功していな い。その点を大きな問題として意識しつつ、以下様々な切り口で札幌市営地下鉄を分析してみることにする。


@札幌市営地下鉄の概要  
 札幌市営地下鉄は南北線・東西線・東豊線の3路線、営業キロは計48.0kmである。ちなみに札幌市内のJR線(函館本線、千歳線、札沼線)の営業キロ は計50.6kmであるので、ほぼ同じ路線長を地下鉄が有しているということになる。また全国の地下鉄の中では、東京メトロ、大阪市交通局、東京都交通 局、横浜市交通局に次ぐ第5位の営業キロである。尚、横浜市交通局の営業キロは計53.4kmなので、ほぼ同レベルであり、札幌市より短い営業キロの地下 鉄は京都 市(31.2km)、神戸市(30.6km)、福岡市(29.8km)、仙台市(28.7km)の各交通局である。これら4都市と地下鉄の路線長を比較す ると、札幌市の路線長のレベルの高さ≠実感できる。

 但し、例えば京都市には京阪や阪急の地下線、神戸市には神戸高速鉄道や北神急行電鉄、福岡市は地下鉄 と相互乗り入れする筑肥線、仙台市には仙石線の地下区間があり、単純に地下鉄の営業キロを比較するだけでは不十分とも言えそうだ。更に1日平均乗車人員数 に着目すると札幌市と横浜市が共に約60万人と同レベルであることも指摘 しておく。

■1983年度以降の路線ごとの1日平均乗車人員数の推移
年  度
南 北 線
東 西 線
東 豊 線
総  数
主 な 出 来 事
1983 年度
325,959
216,248

542,207

1984 年度
323,693
223,612

547,305

1985 年度
320,026
226,091

546,117
【1985年10月】国勢調査による札幌市の人口:1,542,979 人
1986 年度
321,084
229,446

550,530
【1986年11月】JR函館本線に稲積公園、発寒、発寒中央の各駅が 開業
1987 年度
319,603
231,252

550,855

1988 年度
314,968
233,258
62,421
610,647
【1988年11月】JR札幌駅が高架化 【1988年12月】東豊線:栄町駅〜豊水すすきの駅間が開業
1989 年度
294,413
234,143
61,209
589,765

1990 年度
294,779
235,561
65,022
595,362
【1990年10月】国勢調査による札幌市の人口:1,671,742 人
1991 年度
299,940
241,690
69,352
610,982

1992 年度
293,308
237,043
70,629
600,980
【1992年9月】札樽道・札幌西IC〜札幌Jctが開通し道央道と接 続
1993 年度
288,189
232,627
70,685
591,501
【1993年4月】サッポロビール工場跡地に大型複合施設「サッポロ ファクトリー」開業
1994 年度
279,193
227,530
106,807
613,530
【1994年10月】東豊線:豊水すすきの駅〜福住駅間が開業  【1995年3月】JR札沼線:太平駅〜篠路駅間が複線化
1995 年度
277,965
229,154
119,336
626,455
【1995年10月】国勢調査による札幌市の人口:1,757,025 人
1996 年度
264,477
218,990
117,958
601,425
【1996年6月】新さっぽろ駅前に「新さっぽろパレスホテル」(現 シェラトンホテル札幌)が開業
1997 年度
251,784
210,852
114,935
577,571
【1997年11月】北海道拓殖銀行が経営破綻
1998 年度
243,877
224,170
113,924
581,971
【1999年2月】東西線:琴似駅〜宮の沢駅間が開業
1999 年度
236,555
215,087
114,652
566,294
【1999年8月】JR札沼線:新川駅〜新琴似駅間が高架化  【2000年3月】JR札沼線:八軒駅〜太平駅間が複線化
2000 年度
232,719
206,914
107,504
547,137
【2000年10月】国勢調査による札幌市の人口:1,822,368 人
2001 年度
229,246
206,802
109,782
545,830
【2001年6月】札幌ドームが開業 【2001年7月】環状通エルム トンネル供用開始
2002 年度
227,221
202,885
109,213
539,319
【2003年3月】JR札幌駅に「JRタワー」が開業
2003 年度
225,473
198,314
110,523
534,310
【2003年6月】旧国鉄東札幌駅跡地に「札幌コンベンションセン ター」が開業
2004 年度
225,495
198,811
112,447
536,753

2005 年度
223,472
195,891
113,237
532,600
【2005年10月】国勢調査による札幌市の人口:1,880,863 人
2006 年度
237,351
207,035
130,467
574,853
【2006年10月】プロ野球「北海道日本ハムファイターズ」が優勝し 日本一
2007 年度
235,797
205,523
130,721
572,041

2008 年度
233,687
206,036
132,124
571,847
【2009年1月】札幌市営地下鉄にICカード乗車券「SAPICA」を導入 【2009年3月】創成川通アンダーパス開通
2009 年度
226,208
203,892
130,845
560,945

2010 年度
224,503
204,864
131,895
561,262
【2010年10月】国勢調査による札幌市の人口:1,913,545 人 【2011年3月】札幌駅前通地下歩行空間が開通
2011 年度
219,161
205,249
132,200
556,610

2012 年度
223,780
211,050
136,136
570,966

2013 年度
227,909
217,277
140,588
585,774

2014 年度
227,141
222,816
144,668
594,625

2015 年度
227,690
226,679
148,369
602,738
【2015年10月】国勢調査による札幌市の人口:1,952,356 人 【2015年12月】札幌市電ループ化開業
2016 年度
233,749
234,060
152,136
619,945

2017 年度
236,548
239,702
151,581
627,831

(『札幌市統計書』より筆者作成)

 札幌市営地下鉄の1日平均乗車人員数のピークは1995年度の626千人だったが、その後は漸減し2005年度の533千人を底に横這いから微増であっ たが、2012年度以降は再び増加傾向を辿り、2017年度には遂に過去のピークを上回る628千人となった。

 札幌市営地下鉄は長年、南北線が最大の乗車人員を誇ったのだが、近年は横這い傾向で、2016年度には東西線の乗車人員に逆転された。1980年代には 東西線が南北線の2/3程度と大きな差があったのだが、南北線の乗車人員が大きく減ったこともあり、2000年代頃から同レベルになりつつあった。これは 南北線の利用者の一部が東豊線 にシフトした影響やJRとの競合も考えられる。

 ち なみにJR札幌駅の1日平均乗車人員数は国鉄時代の1985年度は47,118人だったが、2017年度は99,448人と倍増以上で、増加分 の一部は地下鉄利用者から移行してきたと考えられる。そのような地下鉄とJRの競合関係については、以下の項で詳しくみていきたい。


AJR北海道との競合関係  
 札幌市営地下鉄は、路線網の割にJR線と同一駅で接続しているところが少なく、さっぽろ駅と新さっぽろ駅の2ヵ所しかない。しかし南北線の北部でJR札 沼線と、東西線はJR函館本線やJR千歳線と接続可能であり、かつ競合関係にもあると思われる駅がいくつか存在する。札幌市営地下鉄は独自のゴムタイヤ方 式を採用したためJR線 への乗り入れが難しく(技術的に不可能ではないらしいが)、そのことがJR線との接続駅を積極的に設置しなかったことと無関係ではないと思われる。

 特に南北 線・麻生駅とJR札沼線・新琴似駅の位置関係 はまったくもって不可解で、わざと乗り換えをし難くしているとしか思えない。実際そのことに不便を感じている利用者は少なくないであろうし、地下鉄とJR の関係は、互いに 競合関係にはなり得ても、協調関係が生まれにくい立地に なっているのではないだろうか。その結果として、地下鉄利用者の伸び悩みの原因の1つにもなっているかもしれない。

 更に札幌〜大通間に札幌駅前地下歩行空間が開通したこともJRに追い風になろう。即ちJR線から大通周辺まで雨や雪の影響を受けずに移動するには、従来 は 地下鉄を利用し なくてはならなかったのだが、地下歩行空間が開通したことでJR札幌駅から大通まで地下を歩いていくことが可能になり、必ずしも地下鉄を利用しなくても移 動できるようになったのである。実際、地下歩行空間開通後に地下鉄・南北線のさっぽろ〜大通間の利用者が半減したという報道もあり、影響は大きいものと思 われる。
札幌駅前地下歩行空間(札幌市のwebサイトより)

 さて、ここでは地下鉄とJRの競合関係を纏めつつ、両者の接続駅という観点でも考察してみたい。

(1)南北線・麻生駅とJR札沼線・新琴 似駅  

雑然とした雰囲気の地下鉄・麻生駅周辺 2013.6

整然と整備されたJR新琴似駅 人影はまばら 2013.6

 「麻生」駅と「新琴似」駅、全く異なる駅名なのだが両者は約700mほど離れてはいるものの同一地区にある地下鉄・南北線とJR札沼線の駅である。両駅 間を乗り換える利用者は少なからずいるものと思われる。(そして更に ややこし いのは札幌市内には地下鉄とJRにそれぞれ「琴似」駅も存在することである)

 さて麻生駅と新琴似駅はなぜこのような中途半端な距離で隔たっている のであろうか。地下鉄南北線の前身とも言えるかつての札幌市電・鉄北線には「新琴似 駅前電停」が存在し、今の麻生駅よりも新琴似駅に近い場所まで線路が伸びていた。それでも新琴似駅と電停は200m程離れていたのだが…。実は新琴似駅前 電停までの延伸の目的は、「国鉄との連絡よりも、新琴似地区にバスターミナ ルを設けて市電との乗り継ぎ拠点とし、郊外地区との連絡を図ることに主眼が置かれていた」(『札幌市電が走った街 今昔』JTB、2003 年)とのこと。つまり地下鉄・麻生駅の立地も新琴似駅とは無関係にバスターミナルとの接続で十分と考えられたのであろう。

 南北線の北24条〜麻生間が延伸 開業したのは1978(昭53)年3月であるが、手元にはそれより2年ほど前の1976(昭51)年3月の時刻表がある。国鉄・札沼線を調べてみると当時 は1日11往復のみの運転で日中は片道2時間に1本程度の列車本数である。地下鉄・南北線が札 沼線 の存在を無視してしまったのも無理はないと思える体たらくぶりだが、当時の国鉄の地方ローカル線はせいぜいこの程度であり、決して札沼線だけが酷いわけで はない。

 しかし結果的に麻生駅と新琴似駅の位置関係は、利用者にとって極めて不便になってしまったのは事実で、昨今の札沼線の利便性が大きく向上し利用者も増加 している中で、新琴似駅と麻 生駅の接続が極めて不便なのは札幌市の交通政策が長期的な視野に 欠けていたという誹りから免れることはできないであろう。例えば、新琴似駅より北にある JR篠路駅から北海道大 学最寄りの地下鉄・北18条駅まで行くことを考えたときに、JR札幌駅まで大回りして南北線を利用した方が運賃は多少割高でも、乗り換えの歩行距離を考えると楽で早いというような状況が生 まれて いるの だ。

 例えば、麻生駅から1駅延伸して地下鉄・新琴似駅をJR新琴似駅の真下に設置するということも意義はあるのではないか。新琴似駅の東側に住む住民の利用 も期待できるので、乗り換え需要だけではない利用者増もありそうに思える。

■麻生駅と新琴似駅の対札幌中心部までの利便性比較

地 下 鉄  南 北 線
麻生〜さっぽろ
J R 札 沼 線
新琴似〜札幌
ダ イヤ
1988 年9月現在
2013 年7月現在
1988 年9月現在
2013 年7月現在
営 業キロ
4.9km
7.2km
運 賃
160 円
240 円
180 円
220 円
所 要時間
8 分
8 分
12〜13 分
11〜13 分
運 転頻度
4〜9 分毎
朝 ラッシュ:4分毎
 日 中:7分毎
夕ラッシュ:5分毎
それ以外:8〜10分毎
朝 ラッシュ:毎時2〜3本
日中:毎時1〜3本
夕ラッシュ:毎時2〜3本
それ以外:毎時1〜2本
朝 ラッシュ:毎時4本(10〜20分毎)
日 中:毎時3本(10〜30分毎)
夕ラッシュ:毎時4本(約15分毎)
それ以外:毎時2〜3本
終 電
さっ ぽろ発 23:45
さっ ぽろ発 0:18
札 幌発 23:07
札 幌発 23:59
(『JTB時刻表』や札幌市交通局のwebサイトより作成)

 さて実際に麻生〜さっぽろと新琴似〜札幌の利便性を比較してみると、地下鉄の方が所要時間や運転頻度の面で相当有利であることが分かる。営業キロの差を 考え ると所要時間にこれだけの差があるのは当然であろう。一方で、運賃を見ると営業キロの長い札沼線経由の方が僅かながら安いのは特筆されよう。札沼線のダイ ヤは15年の時を経て、運行頻度や終電の面で相当改善が進んでいることも分かる。インフラ面でも1980年代の新琴似駅は「単線、非電化、地平駅」だった のが 今や「複線、電化、高架駅」へと変貌を遂げており、まさに都市型鉄道≠ヨと生まれ変わったと言える。

■麻生駅と新琴似駅の1日平均乗車人員数の推移

1985 年度
1990 年度
1995 年度
2000 年度
2005 年度
2010 年度
2011 年度
2017年度
麻 生駅
34,990 34,103
33,476
22,855 21,667
21,263 21,156 20,854
新 琴似駅
948
1,595
2,505
2,959
3,095
3,382
3,457
4,097
(『札幌市統計書』より作成)

 ではどの程度、麻生駅から新琴似駅に利用者がシフトしたのであろうか。1日平均乗車人員数を比較するとまだまだ麻生駅が新琴似駅を圧倒しているこ とが分かる。新琴似駅の利用者は年々増加しているのだが、それでも麻生駅の2割以下の水準だ。むしろ気になるのは、麻生駅が1995年度から2000年度 の5年間で乗車人員を1万人も減らしたことだ。その前後の時期はほぼ横這い(微減)傾向なだけにこの5年間の減少っぷり≠ェ目立つ。何があったのだろ う…。麻生駅の 減少分に見合う増加が新琴似駅に見られれば納得できるのだが、そんなこともないだけに不思議である。



(2)東西線・琴似駅とJR函館本線・琴 似駅  

琴似バスターミナルを備えた地下鉄・琴似駅 2013.6

高架駅のJR琴似駅 広々とした駅前広場も整備されている  2013.6
 地下鉄・琴似駅とJR・琴似駅、全く同じ駅名だが両駅は約800mほど離れており、乗り換えには徒歩で10分程度はかかる。このように実質的には別の駅 なのに同一名称となっている駅が見られるのも札幌市営地下鉄の特徴の1つである。しかし(1)で見た麻生と新 琴似の場合は、同一地区なのに別々の駅名と なっており、このような違いをなぜ生じさせたのか理解に苦しむところだ。逆に東西線には、琴似駅と同様な例が白石駅にも見られる。白石駅の場合は琴似駅以 上に酷くて、地下鉄とJRの駅は約2kmも離れており同じ駅名というのは琴似駅以上に不自然さを感じる。

 琴似地区は西区役所が存在する札幌市西部の拠点である。地下鉄・琴似駅はその西区役所に近く、またバスターミナルを備え、スーパーのダイエーとも直結し ている。一方のJR琴似駅は周辺が再開発されイトーヨーカドーなどの商業施設やタワープラザやタワープレイスといった超高層マンションがそびえ立ち、琴似 地区のランドマークとなっている。そして両駅周辺と両駅を結ぶ商店街も人通りは多く賑わっている。麻生駅と新琴似駅の場合は、賑わい方に大きな差があり それがそのまま両駅の利用者数の差となっていたが、琴似駅にはそのような差はあまり感じられない。

 地下鉄・琴似駅は1976(昭51)年6月の開業時から1999(平11)年2月の琴似駅〜宮の沢駅間延伸開業まで東西線の西の起点だったこともあっ て、今なおターミナル的 な雰囲気を残している。駅構内は広々としたコンコースがあり、コンパクトなバスターミナルもあって拠点駅といった趣だ。しかしJR琴似駅への乗り換えは不 便である。もし 地下鉄を今の二十四軒手稲通ではなくて、北側の桑 園発寒通に通して琴似駅を設置していれば、JRと地下鉄は極めて乗り換え至便になったことであろう。

 現在は例えばJR手稲駅から東西線・西11丁目駅まで行こうとするとJR琴似駅から東西線・琴似駅を徒歩乗り換えするよりも、JR札幌駅で南北線に乗り 換えて大通駅で東西線に乗り換えるという遠回りをした方が速いケースもある。運賃面も前者が450円、後者が460円と大差が無い。このように地下鉄と JRの琴似駅が離れていることにより鉄道ネットワークの利便性を 損なっていると言えるだろう。

■琴似駅の対札幌中心部までの利便性比較

地 下 鉄  東 西 線
琴似〜大通
J R 函 館 本 線
琴似〜札幌
ダ イヤ
1988 年9月現在
2013 年7月現在
1988 年9月現在
2013 年7月現在
営 業キ ロ
5.7km
3.8km
運 賃
160 円
240 円
170 円
200 円
所 要時 間
8 分
11 分
普 通のみ:7〜8分
快 速:5分 普通:6分
運 行頻度
4〜9 分毎
朝 ラッシュ:4〜5分毎
 日 中:7分毎
夕ラッシュ:5〜6分毎
それ以外:8〜10分毎
朝 ラッシュ:5〜14分毎
日中:毎時4〜7本
夕ラッシュ:毎時6本
それ以外:毎時4〜5本
朝 ラッシュ:3〜8分毎
日 中:毎時 普4本 快4本
夕ラッシュ:毎時 普5〜6本 快4本
それ以外:毎時 普5本程度
終 電
大 通発 23:48
大 通発 0:19
札 幌発 23:07
札 幌発 23:59
(『JTB時刻表』や札幌市交通局のwebサイトより作成)

 JR琴似駅は快速も停まる主要駅なので、日中でも1時間に片道で普通4本、快速4本の運転頻度があり利便性は非常に高い。更に札幌中心部までの所要時間 も地下鉄より短く、そういった面でも有利だ。もちろん最終目的地が大通公園周辺ならば地下鉄利用が優位と言えるのだが、下記の乗車人員数の推移から明らか な ように既にJR琴似駅は地下鉄・琴似駅に匹敵する利用者がある。琴似周辺の住民は目的地に応じてJRと地下鉄を使い分けることもでき、交通の利便性 が非常に高い地域と言えるだろう。

■東西線・琴似駅〜宮の沢駅とJR・琴似駅〜発寒駅の1日平均乗車人員数の推移

1985 年度
1990 年度
1995 年度
2000 年度
2005 年度
2010 年度
2011 年度
2017年度
東 西線・琴似駅
27,084
25,275
23,468
13,319
12,080
12,282
12,401
14,290
東 西線・発寒南駅



7,037
7,174
7,349
7,447
8,837
東 西線・宮の沢駅



9,587
10,571
11,445
11,635
14,683
小  計
27,084
25,275
23,468
29,943
29,825
31,076
31,483
37,810
JR・ 琴似駅
5,427
7,005
8,582
8,292
10,234
11,074
11,258
11,692
JR・ 発寒中央駅

3,014
4,197
3,587
3,649
3,517
3,654
4,330
JR・ 発寒駅

2,468
3,038
2,450
2,789
4,014
4,159
4,548
小  計
5,427
12,487
15,817
14,329
16,672
18,605
19,071
20,570
(『札幌市統計書』より作成)

 東西線の琴似駅〜宮の沢駅の延伸は、地下鉄・琴似駅の利用者数を減らすという効果以外にJR利用者からも利用者を奪う効果があったようで、1995年度 と2000年度を比較すると地下鉄利用者が伸びる一方で、JR利用者はやや減少している。しかしその後の傾向はJRの利用者の伸びの方が大きい。2000 年度と2011年度を比較すると地下鉄3駅の利用者数の合計は5%増に対して、JR3駅は33%増となっている。特にJR・発寒駅は近くに「イオンモール 札幌発寒」が2006(平18)年10月に開店したことなどにより利用者が近年急激に増加している。



(3)東西線・新さっぽろ駅とJR千歳 線・新札幌駅  

新さっぽろ駅の改札口 コンコースは広々している  2013.6

JR新札幌駅に停車中の快速「エアポート」 ホームは狭い  2013.6
 新さっぽろ駅は東西線の白石駅〜新さっぽろ駅間が延伸された1982年3月に開業した。同駅周辺は「厚別副都心構想」に基づき、札幌市と且D幌副都心開発公社によって開発が行われた。大規模な商業施設やホテル、業務ビ ル、公共施設などが集積し、地下鉄とJR、バスターミナルが一体的に整備されている。新さっぽろ駅は麻生駅や琴似駅と異なりJRとの連絡を明確に意識して 設置された。

 新さっぽろ駅の駅前には高さ約115m、32階建ての本格的シティホ テルの「シェラトンホテル札幌」があり、ランドマークとなっている。1996年6月に開業した当時は全道一の高さを誇るビルで、札幌駅前にJRタワーが開 業するまでは札幌を象徴するビルだったと言えよう。

 また業務ビルとしては道内最大手のコンサルティング会社である潟hーコンの本社ビルが1997年5月に開業しており、従業員約1,000名が勤務してい る。

 またJR新札幌駅は寝台特急を除く全ての列車が停車する駅となっており、利便性が高い。高架相対式ホームが2面あるだけのコンパクトな駅で、利用者の増 加に設備が追い付いていないような印象を受ける。その点、地下鉄の新さっぽろ駅はコンコースも広く設備に余裕があり、副都心としての利用者増加を見越した 作りになっているような雰囲気だ。

 ただ千歳線沿線の利用者が大通まで行く場合は、新札幌駅で東西線に乗り換えるよりもJR札幌駅まで快速で行き、南北線に乗り換えた方が運賃は高くなるも のの時間的には速い。JRの利便性の大幅な向上は、地下鉄にとってはもしかしたら誤算≠ネのかもしれない。新さっぽろ駅の乗車人員はピーク時の1990 年代初頭には1日平均2万6千人以上あったものが、近年は1万8千人台まで減っている。

 一方でJR新札幌駅はJR発足時には5千人程度だった1日平均乗車人員が、近年は1万4千人弱まで増加していて地下鉄との差を年々縮めている。目的地と してのJR札幌駅周辺の地位が相対的に向上していることや快速列車の拡充による利便性向上がJRへの利用者シフトの大きな理由であろう。


■新さっぽろ駅及び新札幌駅の対札幌中心部までの利便性比較

地 下 鉄  東 西 線
新さっぽろ〜大通
J R 函 館 本 線
新札幌〜札幌
ダ イヤ
1988 年9月現在
2013 年7月現在
1988 年9月現在
2013 年7月現在(特急を除く)
営 業キ ロ
11.6km
10.9km
運 賃
210 円
310 円
220 円
260 円
所 要時 間
18 分
19 分
快 速:12分 普通:15分
快 速:8分 普通:13分
運 行頻度
4〜9 分毎
朝 ラッシュ:4〜5分毎
 日 中:7分毎
夕ラッシュ:5〜6分毎
それ以外:8〜10分毎
朝 ラッシュ:毎時 普4本
日中:毎時 普2〜3本 快0〜1本
夕ラッシュ:毎時 普2〜3本 快1本
それ以外:毎時 普2本程度
朝 ラッシュ:8〜10分毎
日 中:毎時 普2〜3本 快4本
夕ラッシュ:毎時 普4本 快4本
それ以外:毎時 普4本 快2本程度
終 電
大 通発 23:41
大 通発 0:15
札 幌発 23:54 札 幌発 23:59
(『JTB時刻表』や札幌市交通局のwebサイトより作成)

 JRは(2)の琴似駅もそうであったが快速列車が日中でも毎時4本走るという利便性の高さが、利用者増加に 繋がっているような気がする。それは逆に言うと快速が 停まらない駅は意外と不便だったりすることがあるということで、その具体例は(5)の平和駅で 見ることにす る。その点、地下鉄は安心で各駅とも日中でも7 分毎で電車が来るのである。終電はかつてはJRよりも早かったのだが大幅に繰り下がって、今ではJRよりも遅くまで運転しているというのも心強い。

 運賃を見ると、地下鉄はJRよりも割高になってしまったが、土日祝日に使える地下鉄専用の1日乗車券「ドニチカキップ」というのがあって、これは500円である。例えば新さっぽろ〜 大通間を往復するだけで元が取れる計算になるし、JR線の新札幌〜札幌間の往復運賃よりも安いのだ。実際、新さっぽろ駅の自動券売機前で見たところ、ドニ チカキップを買う 人が相当多かった。地下鉄・新さっぽろ駅とJR・新札幌駅の両立が健全な競争関係を生んでいるといった感もある。

■新さっぽろ駅と新札幌駅の1日平均乗車人員数の推移

1985 年度
1990 年度
1995 年度
2000 年度
2005 年度
2010 年度
2011 年度
2017年度
新 さっぽろ駅
21,817
26,162
24,908
20,241
18,614
18,654
18,622
21,010
新 札幌駅
4,460
7,775
11,443
12,235
13,197
13,576
13,662
14,596
合  計
26,277
33,937
36,351
32,476
31,811
32,230
32,284
35,606
(『札幌市統計書』より作成)

 尚、新さっぽろ駅のバスターミナルに発着するバスの便数は1日約1,410便で、乗降客数は 約28,200人(いずれも 2008年3月現在、札幌副都心開発公社webサイトよ り)とのこと。新さっぽろ駅は地下鉄とJR、バスを合わせると1日平均10万人近い利用者がいることになり、まさに副都心としての機能を 果たしていると言えそうだ。



(4)東西線・白石駅とJR函館本線・白 石駅  
 東西線・白石駅とJR・白石駅は約2km程離れた全く別の駅であり、両駅の間を乗り換える利用者はほぼいないものと思われる。東西線・白石駅は地下鉄の 走る「南郷通」と札幌市街地を環状する「環状通」の交差点という交通の要衝にあり(下記地図参照)、白石区役所からも近いということもあってこの地域の中 核としての地位を確立していた。1976年6月の東西線開業時から1982年3月の白石〜新さっぽろ延伸までは、東側の終点であったという歴史もある。

 一方のJR白石駅は札幌〜白石間は函館本線と千歳線の方向別複々線区 間であり、列車回数は極めて多い。白石駅は普通と区間快速「いしかりライナー」が停車(快速「エアポート」は通過」)するので、日中でも毎時片道6〜8本 の発着があり、利便性は地下鉄並みに高いと言える。2011年1月には橋上駅舎と自由通路が供用を開始し、面目を一新した。このような札幌市による「JR 白石駅周辺整備事業」が行われており、地域の拠点としての地位を向上させている。

 東西線・白石駅〜大通駅間の運賃は240円、所要時間8分に対して、JR・白石駅〜札幌駅の運賃は200円、所要時間は快速で7分。互角の勝負といった ところだろうか。両駅の中間ぐらい、例えば国道12号線(札幌江別通)沿線住民の場合は大通に行くならば地下鉄、札幌駅に行くならばJRといった使い分け をすることになろう。

 ただ気になるのは東西線・白石駅はかつて周辺の駅と比べると乗車人員数で頭1つ飛び抜けていた存在であったのだが、近年はその差が急速に縮まってきてい るのである。JR白石駅の利用者数の増加も著しいが、東西線・東札幌駅も2000年代以降、利用者が増加傾向にある。かつて東札幌駅は「駅間調整のための ような駅」(『北海道630駅』小学館)と評されたが、2003年に近くに「札幌コンベンションセンター」が開設され、2008年には「イーアス札幌」と いう複合型ショッピングセンターがオープンするなど拠点性を増しており、それが東札幌駅の利用者増に結びついているものと思われる。


■地下鉄・白石駅とJR・白石駅の1日平均乗車人員数の推移

1985 年度
1990 年度
1995 年度
2000 年度
2005 年度
2010 年度
2011 年度
2017年度
東 西線・南郷7丁目駅
10,250
11,395
10,923
9,824
9,199
9,015
9,157
10,808
東 西線・白石駅
16,022
16,272
14,977
12,819
11,256
11,233
11,375
14,161
東 西線・東札幌駅
5,698
6,439
6,962
6,858
7,295
8,865
8,915
10,721
JR・ 白石駅
3,849
5,274
6,577
6,034
6,186
6,662
7,238
8,182
合  計
35,819
39,380
39,439
35,535
33,936
35,775
36,685
43,872
(『札幌市統計書』より作成)

 東西線・白石駅の地位は、相対的に低下傾向にあると言っても良さそうな利用者数の推移である。1994年10月に東豊線の豊水すすきの駅〜福住駅間が延 伸 開業し、白石駅から環状通を1.5kmほど南下した場所に美園駅が開業したことも利用者減の理由の1つかもしれない。近年は下げ止まりの傾向も見られるの で、今後の白石駅の動向に注目していきたい。



(5)東西線・南郷13丁目とJR千歳 線・平和駅  
 東西線・南郷13丁目駅とJR・平和駅は徒歩で約2.4kmも離れていて、一見それほど競合関係には無さそうに見える。ただJR・平和駅というのは実は利便性があまり高くないため、例えば下記の地図で○で囲った 白石東公園周辺の住民は、平和駅まで約1.0km、南郷13丁目駅まで約1.6kmという立地だが、おそらく距離的には遠いものの南郷13丁目駅を使う人 が多いのではないかと思われる。

 まずJR・平和駅の時刻表を見てみる。
時 間
千 歳線 下り列車 時刻表(抜粋)
(略)
7 時
5あ 25小  35手 47札 58手  
8 時
8手 16手  23小 39札 55
(略)
11 時
14小 29札  55
12 時
15小 39札  58
13 時
23小 38
14 時
00手 24手  40
15 時
15小 25札  56
16 時
11札 23小  39手 55
17 時
27小 40手 稲 55
18 時
9ほ 23小  41ほ 56
(略)
【行き先】あ:あいの里公園 小:小樽  札:札幌 手:手稲 ほ:ほしみ
 平和駅は朝ラッシュ時はほぼ10分間隔で列車があるものの、日中は毎時3本程度になる。それも20分間隔にはなっておらず、例えば14時40分発と15 時15分発の間は25分も空いているし、15時25分と15時56分の間は31分、16時55分と17時27分の間は32分も空いているなど、ぽっかりと 運転間隔が間延びしてしまう時間が散見される。

 そのような平和駅の不便さも気になるし、地図上で○を付けた地区は平和駅に行くには札幌新道を越えないといけないのだが、ちょうど大谷地ICもある札幌 新道やこの周辺の道路は交通量も多く、歩行者には快適な経路とは言えそうもない。そんなこともあって平和駅の方が近い場所に住んでいても、南郷13丁目駅 を利用する住民は意外と多いのではないかと思われる。

■南郷13丁目駅と平和駅の1日平均乗車人員数の推移

1985 年度
1990 年度
1995 年度
2000 年度
2005 年度
2010 年度
2011 年度
2017年度
南 郷13丁目駅
5,563
6,439
6,097
5,757
5,727
6,007
6,087
7,410
平 和駅

1,088
1,557
2,013
2,338
2,558
2,608
2,738
合  計
5,563
7,527
7,654
7,770
8,065
8,565
8,695
10,148
(『札幌市統計書』より作成)

 南郷13丁目駅の利用者は横這いを維持しており、平和駅は利用者を伸ばしているものの絶対数としてはまだまだ少ない印象。平和駅の使い難さ≠ェ結果と して南郷13丁目駅の利用者維持に多少なりとも貢献しているのではないかと考えている。個人的には平和駅のダイヤの完成度の低さに些か驚いているというのが正直なところで、実 は南郷13丁目駅には特に印象は無いのだが…。


B延伸計画  
 現在、札幌市営地下鉄に具体的な延伸計画は存在しない。しかし各路線とも構想は色々あるようだ。昨今の経済状況や頭打ちとなった人口増を踏まえると延伸 計画の具体化は難しいと言わざるを得ないだろう。これまでに検討された延伸計画は以下の通りである。
(1)南北線 真駒内〜藤野方面
(2)南北線 麻生〜茨戸方面、花川南方面
(3)東西線 宮の沢〜発寒又は手稲方面
(4)東豊線 福住〜北野方面
(5)東豊線 栄町〜丘珠空港方面


2.南北線  

■南北線の駅別1日平均乗車人員数の推移
駅  名
営 業`
1985 年度
1988 年度
1991 年度
1994 年度
1997 年度
2000 年度
2003 年度
2006 年度
2009 年度
2010 年度
2011 年度
麻  生
0.0
34,990
36,184
34,103
32,891
29,677
22,855
21,667
22,502
21,257
21,263
21,156
北 34条
1.0
11,188
9,815
7,708
7,283
7,010
7,248
6,946
7,196
6,715
6,768
6,873
北 24条
2.2
23,736
22,951
20,468
18,352
15,910
14,747
13,848
14,157
13,564
13,514
13,565
北 18条
3.1
13,799
12,708
10,520
9,398
8,255
7,169
6,669
7,076
6,910
7,159
7,293
北 12条
3.9
10,378
9,465
6,436
6,684
5,951
5,050
4,413
4,675
4,555
4,596
4,520
さっ ぽろ
4.9
70,714
68,762
65,570
64,715
57,188
50,828
54,286
60,191
58,663
57,904
52,533
大  通
5.5
36,011
34,623
33,387
29,910
29,480
41,231
36,835
37,507
34,176
33,982
34,088
す すきの 6.1
27,944
26,718
24,601
23,299
21,818
17,538
16,771
17,692
16,944
16,662
16,267
中 島 公 園
6.8
13,546
14,082
13,561
12,078
10,286
8,048
8,185
8,810
8,934
8,764
8,853
幌 平橋
7.8
7,734
7,545
7,339
7,390
6,227
4,663
4,744
5,080
4,786
4,836
4,848
中 の島
8.3
8,593
8,370
8,162
7,399
6,048
6,360
5,936
6,190
5,649
5,546
5,521
平  岸
9.0
11,515
11,368
10,942
9,332
7,370
7,183
7,242
7,576
7,716
7,713
7,720
南 平岸
10.1
11,119
11,653
11,179
10,417
9,014
8,512
8,251
8,458
7,820
7,831
7,847
澄  川
11.3
14,419
15,151
15,005
14,809
13,687
11,160
10,577
10,647
10,248
10,079
10,046
自 衛 隊 前
12.6
5,443
5,970
5,692
5,431
5,293
4,329
4,105
3,990
3,644
3,528
3,561
真 駒内
14.3
18,897
19,603
20,046
19,805
18,570
15,798
14,998
15,604
14,627
14,358
14,470
南北線  総数
320,026
314,968
294,779
279,193
251,784
232,719
225,473
237,351
226,208
224,503
219,161
(『札幌市統計書』より筆者作成)


▼駅前通地下歩行空間開通1カ月 人出予想以上 経済効果まだ出ず  (2011年4月13日『北海道新聞』)

 JR札幌駅と大通を結ぶ札幌駅前通地下歩行空間の開通から1カ月が過ぎた。1日の通行量は当初予想を大幅に上回ったが、東日本大震災を受けた自粛が影響 し、開通記念の販促イベントは不調に終わった。多くの人が地下歩行空間に流れ込む一方で、中心部活性化の効果はまだ見えない。(宇佐美裕次、川浪伸介)

 「札幌駅から職場まで信号で止まらずに通勤できるので、地上を歩かなくなった」。12日朝、地下歩行空間で小樽市の会社員金谷彰さん(61)が話した。 3月12日の開通から2週間の市のまとめでは、1日7万8,200〜8万7,700人が利用し、日銀札幌支店が試算した1日最大5万4千人を大幅に上回っ た。札幌駅側と大通側からの入場者数は、ほぼ半々だった。

 一方、市交通局によると、地下鉄さっぽろ駅〜大通駅間の1日の利用客数は、 地下歩行空間の開通後、それまでのほぼ半分の約8千〜約1万2千人に急落。 地上部でも、駅前通に面するドラッグストア「アインズ&トルペ札幌店」は、開通後に来店者数が4割減少した。同店は「客足は2割ほど戻ってきたが、これ以 上は回復しないだろう」と話している。

 地下歩行空間に人が集中する実態が浮き彫りになったが、開通前日に発生した東日本大震災の影響もあって、都心活性化の効果は上がっていない。地下歩行空 間の広場で3月に予定されていた大半のイベントは自粛による中止となり、管理・運営する札幌駅前通まちづくり会社は約200万円の減収となった。4月も、 義援金などの募金活動を除くイベントの予約は3件にとどまり、越山元社長は「中心部の回遊性の向上につながっているか、まだ分からない」と話す。

 また、札幌駅前通と札幌大通の両まちづくり会社が合同で3、4月に行った開通記念イベントも自粛が響いた。レシートを送ると抽選で景品が当たる「札幌お 買い物マラソン2011」は3,265通の応募があった。都心限定の商品券「サッポロまちけっと」の販売数は製作数の約15%、3,684枚。有料の冊子 で商業施設のスタンプを集める「まちなかのひみつ」で使われた冊子は現在、1,822冊。大半は小学校へ寄贈されたもので、販売は434冊にとどまった。 広川雄一社長(札幌大通)は「震災後も都心に人は来ているが、どう消費に結びつけるかが課題」と説明した。

 駅前と大通の両地区の百貨店も同様の見方だ。1日に経営統合した札幌丸井今井と札幌三越は、1〜3日の売上高が両店合わせ前年同期を2割上回ったが、 「集客への効果が分かるのはこれから」と指摘。大丸札幌店は、開通から3日間は来客者数が前年を下回ったものの、「地震で消費意欲が減退したのが要因。大 通側に人が流れたのかどうかは判断できない」と話している。

▼地下鉄さっぽろ〜大通間の利用者36%減 路線バス2社は「影響なし」  (2011 年9月14日『北海道新聞』

 札幌駅前通地下歩行空間が3月に開通して以来、通路とほぼ同じ区間の地下鉄さっぽろ駅〜大通駅間の利用者は、8月末までの平均で前年同期比36%減っ た。利用者数は徐々に回復しているものの、市交通局の本年度の運賃収入は大幅に減る見通しだ。

 同局によると、地下歩行空間が開通して以来のさっぽろ〜大通間の1日の利 用客数は、開通日の3月12日から同31日までが前年同期比52%減(約1万人減)の9388人と大幅に落ち込んだ。その後は、4月が同 42%減、5月は同34%減、6月は同32%減、7、8月は同29%減と、徐々に回復しているものの減少傾向は続いている。

 こうした結果について同局は、「春先は東日本大震災の影響で、外出を控える人が多かった」と話す一方、5月からの減少幅の縮小については「地下歩行空間 が(歩くには)距離が長いと感じ、地下鉄に戻ってきている」と分析する。

 同局は当初、同区間の地下鉄利用客数について1日当たり4千人減ると見込み、本年度の運賃収入を前年比2億4900万円減(予算ベース)と試算してい た。現状は開通直後の激減が響き、「収入減がさらに深刻化するのでは」と懸念する。

 市中心部の路線バスについては、じょうてつバスとジェイ・アール北海道バスは「(地下歩行空間による)乗降客数への影響はなかった」とし、北海道中央バ スは「現時点では影響は分からない」と話している。(片山由紀)


3.東西線  

■東西線の駅別1日平均乗車人員数の推移
駅  名
営 業` 1985 年度
1988 年度
1991 年度
1994 年度
1997 年度
2000 年度
2003 年度
2006 年度
2009 年度
2010 年度
2011 年度
宮 の沢
0.0





9,587
10,500
11,392
11,374
11,445
11,635
発 寒南
1.5





7,037
7,093
7,529
7,312
7,349
7,447
琴  似 2.8
27,084
25,739
25,812
23,551
21,234
13,319
12,506
12,820
12,078
12,282
12,401
二 十四軒
3.7
5,173
5,217
5,435
5,191
5,111
5,188
4,971
4,981
5,007
5,011
4,934
西 28丁目
4.9
11,307
11,246
10,849
9,979
8,810
8,948
8,588
8,995
8,606
8,717
8,816
円 山公園
5.7
13,716
14,434
14,120
12,997
11,435
10,796
10,587
11,124
12,267
12,297
12,406
西 18丁目
6.6
15,376
15,238
16,736
15,360
13,597
13,424
12,082
13,050
13,141
13,342
13,457
西 11丁目
7.5
17,441
17,374
18,466
17,005
13,980
14,808
14,048
14,786
14,126
14,139
13,809
大  通
8.5
32,490
32,337
32,836
32,411
34,131
26,571
23,748
24,465
23,866
23,543
22,697
バ スセンター前
9.3
11,528
10,007
7,534
7,388
5,901
6,400
6,420
7,245
7,279
7,392
7,445
菊  水
10.4
10,617
10,846
10,991
10,014
9,061
9,208
8,601
8,879
8,881
8,964
9,153
東 札幌
11.6
5,698
5,691
6,993
6,627
6,462
6,858
7,201
8,041
8,823
8,865
8,915
白  石
12.7
16,022
16,399
16,580
15,259
13,911
12,819
11,954
11,692
11,196
11,233
11,375
南 郷7丁目
14.1
10,250
10,890
11,900
11,065
10,037
9,824
9,472
9,539
8,975
9,015
9,157
南 郷13丁目
15.2
5,563
6,463
6,589
6,086
5,763
5,757
5,815
6,016
5,852
6,007
6,087
南 郷18丁目
16.4
10,424
11,724
12,385
11,976
10,522
9,674
9,236
9,647
9,558
9,578
9,829
大 谷地
17.9
8,346
11,478
13,993
14,411
13,579
12,220
12,400
12,835
12,538
12,657
12,646
ひ ばりが丘
18.9
3,239
3,270
3,656
3,561
3,413
4,235
4,045
4,346
4,355
4,374
4,418
新 さっぽろ
20.1
21,817
24,905
26,815
24,649
23,905
20,241
19,047
19,653
18,658
18,654
18,622
東西線  総数
226,091 233,258
241,690
227,530
210,852
206,914
198,314
207,035
203,892
204,864
205,249
(『札幌市統計書』より筆者作成)

▼札幌の地下鉄東西線 ホーム柵設置工事を来月から本格化  (2008年8月4日『北海道新聞』)

 札幌市交通局は9月1日から、地下鉄東西線の各駅に、車両の扉に合わせて開閉する「可動式ホーム柵」(ホームドア)の設置工事を本格的に始める。人件費 削減を狙って、東西線を来年度から運転手一人のワンマン運行に切り替えるのに伴う安全対策。2018年度までに南北線、東豊線にもホームドアを導入し、全 線をワンマン化する予定だ。
 ホームドアは、ホームに高さ1.3メートルの柵を建て、ドア部分が車両のドアと連動して開閉する仕組み。東京をはじめ各地の地下鉄などで導入されてい る。

 東西線では今年5月、「南郷7丁目」駅ホームの一部に設置して試験運用を始めた。9月1日から、新さっぽろ駅を皮切りに順次各駅に設置していき、本年度 中に完了する。導入費は約50億円。
 市交通局によると、東西線には現在、車掌と運転手合わせて110人がいるが、ワンマン化によって定員をほぼ半減でき、13年度までに19億円の人件費削 減が見込めるという。南北線は13年度、東豊線は18年度にワンマン化する計画だ。
 地下鉄のある全国9都市のうち、ワンマン路線がないのは札幌だけ。 (本庄彩芳)


4.東豊線  

■東豊線の駅別1日平均乗車人員数の推移
駅  名
営 業` 1988 年度
1991 年度
1994 年度
1997 年度
2000 年度
2003 年度
2006 年度
2009 年度
2010 年度
2011 年度
栄  町
0.0
4,269
5,602
6,797
6,947
6,195
6,133
7,176
7,117
7,287
7,336
新 道東
0.9
5,274
6,066
6,125
6,191
5,569
5,888
6,998
6,860
6,880
6,977
元  町
2.1
6,143
7,862
7,672
7,143
7,089
6,818
7,857
7,804
8,044
8,316
環 状通東
3.5
7,922
8,645
8,424
8,071
7,999
7,657
8,546
8,169
8,207
8,245
東 区役所前
4.5
8,458
9,363
9,255
8,058
7,461
7,131
7,990
7,982
8,124
7,979
北 13条東
5.4
2,455
2,735
2,745
2,526
2,511
2,486
3,136
3,061
3,145
3,215
さっ ぽろ
6.7
11,757
13,208
16,923
21,796
18,152
21,233
26,225
27,058
27,224
26,973
大  通
7.3
12,427
11,786
14,322
16,819
16,164
14,168
16,009
15,613
15,563
14,778
豊 水すすきの
8.1
3,716
4,085
4,890
5,881
5,384
5,719
6,561
6,687
6,679
6,603
学 園前
9.5


7,053
7,404
6,759
7,123
8,495
8,733
8,851
8,807
豊 平公園
10.4


2,209
2,409
3,364
3,680
4,388
4,351
4,462
4,564
美  園
11.4


2,692
2,819
3,260
3,240
3,952
4,015
4,046
4,144
月 寒中央
12.6


6,710
6,546
6,732
6,924
7,922
7,854
8,084
8,266
福  住
13.6


10,990
12,325
10,865
12,323
15,212
15,541
15,299
15,997
東豊線  総数
62,421
69,352
108,807
114,935
107,504
110,523
130,467
130,845
131,895
132,200
(『札幌市統計書』より筆者作成)

▼連絡通路の柵、邪魔 地下鉄南北、東豊線さっぽろ駅 商業者、撤去要請  (2011年4月14日『北海道新聞』)
 札幌駅前通地下歩行空間を出入りする人の流れを遮るとして、地下鉄南北線と東豊線のさっぽろ駅をつなぐ「連絡通路」の撤去を求める声が上がっている。通 路は鉄柵などで仕切られて横断できないためだ。「都心部の回遊を妨げている」と、地元の商業者は3月に市交通局に陳情書を提出。市は改善策を検討してい る。

 連絡通路は地下鉄乗り換えに必要で、全長240メートル、幅5メートル、鉄柵は高さ1.3メートル。南北線さっぽろ駅の改札口をはさんで東側は連絡通路 で遮断されている。また、幅20メートルの地下歩行空間に対して、幅8メートルまで狭まるため、通行の隘路にもなっている。


5.経営施策について  

▼札幌市、市営地下鉄の経営健全化計画を策定  (2004年3月5日『日本経済新聞』)
 札幌市は4日、市営地下鉄の経営健全化計画(2004―13年度)をまとめた。期間中にワンマン運転化や駅業務の外部委託などを進め、地下鉄事業で現在 約1,000人いる職員をほぼ半減、合計約270億円のコストを削減する。11年度の経常黒字化を目指す。

 改札など駅業務の外部委託で約370人を削減、人件費を190億円減らす。ワンマン運転は09年度にまず東西線から開始し、南北線などにも拡大する方 針。これにより132人を削減し、人件費は12億円圧縮できると見ている。今後の需要見通しでは、輸送人員数、運賃収入ともに減少すると想定。乗車人数は 計画最終年度の13年度に53万3900人(04年度見通しは55万7,000人)まで減る見通しだ。コスト削減と借り入れ金の利払い費が減少することか ら、13年度の経常損益は24億円の黒字を見込む。ただ10年度まで経常赤字が続くため、累積欠損金は3,600億円(03年度は約3,300億円)に膨 らむ見通し。

▼サピカ導入あすで1年 利用17%止まり JRやバスへの乗り継ぎに課題  (2010年01月29日『北海道新聞』)
 札幌市が市営地下鉄でIC(集積回路)カード「SAPICA(サピカ)」を導入して30日で1年になる。これまで13万6千枚を発行したが、乗客に占め る利用割合は25日の実績で17.6%にとどまっている。市は昨年12月からサピカ専用の改札機を設置、PRにも躍起だ。ただ、バスやJRとの相互利用の めどは依然ついておらず、有効策にはなっていない。

 サピカは、改札機の読み取り部分にかざすだけで、素早く改札を通過できる乗車券。入金すれば同じカードを繰り返し使える。定期券タイプもあり、地下鉄の 全3路線49駅で使用できる。

 発行枚数の目標は、2013年度までに30万枚。市交通局は「既に13万枚を超え、いたって順調」と評価する。ただ、30万枚を販売しても利用率は 34%。低い目標設定はバスやJRとの相互利用が確約されないためだ。

 首都圏で普及するJR東日本のICカード「Suica(スイカ)」の利用率は80%。昨年3月に導入された福岡市交通局のICカード「はやかけん」の利 用率は23%にとどまるが、今年3月からはSuicaなどとの相互利用が始まり、「飛躍的に利用率は伸びるはず」(福岡市交通局)。利用率2割に満たない サピカは他都市のカードに大きな後れをとっており、「市民に浸透してきた」とは言い難い。

 札幌市は昨年9月から広告やポスター約1,200枚を地下鉄構内などに張ってPRを強化。12月からはサピカ利用者が、改札をよりスムーズに通過できる よう専用の改札機を順次導入、本年度末までに100台を設置する計画だ。

 しかし、サピカは、ウィズユーカードのように市電、バスとの共通利用ができず、乗り継ぎ割引を受けられない。
 さらに、プレミアム(割り増し)も、最大15%のウィズユーカードに対して10%にとどまり、市民はウィズユーカードから切り替えしづらい状況だ。

 市交通局は、バス会社3社とサピカの共通利用に向けて協議を進め、JR北海道のICカード「Kitaca(キタカ)」とも相互利用を探っているが、いず れも導入コストや仕様の統一をめぐり、難航している。(長谷川紳二)


▼「女性の安心車両」利用加速 札幌市営地下鉄で導入から1年半  (2010年8月18日『北海道新聞』)

 札幌市営地下鉄の南北線と東西線で「女性と子どもの安心車両」の運行が始まって、南北線は1年半、東西線は1年が経過した。導入時間帯の痴漢被害の届け 出件数は、導入前と比べて半減するなど効果が表れ、女性客からも好評だが、その一方で、女性客の一部に対してマナー改善を訴える声も出ている。(山崎真理 子)

 安心車両は、2008年12月に南北線、09年7月に東西線で導入した。南北線は真駒内方面が先頭、麻生方面は最後尾の車両1両、東西線は、新さっぽ ろ、宮の沢方面ともに7両編成の4両目に設置。2路線とも平日の始発から午前9時まで運行している。

 市交通局によると、導入時間帯の痴漢被害の届け出は、07年度が14件、年末に南北線に導入された08年度が15件だったのに対し、夏に東西線でも始 まった09年度は6件に半減している。
 また、各路線とも最も混雑する2区間について、安心車両の導入直後と、今年5月の混雑率を調査した。

 その結果、2路線とも安心車両の方が、その他の車両より空いているものの、混雑率の差が大幅に縮まっており、「女性の利用が増え、定着してきている」 (同局)。
 導入当初は、男性客から「男女差別。男性車両も作るべきだ」との要望や、女性客から「男性が多く乗っている。周知徹底してほしい」との声も寄せられた が、「今では、苦情はほとんどなく、むしろ『もっと増やしてほしい』との声もある」(同局)ほどだ。

 ただ、安心車両への乗車制限は「任意」であり、強制力はない。実際、女性以外にも小学生以下の男の子や、障害者とその介護者の乗車も認めている。また、 駆け込みで安心車両と知らずに乗車する男性もいる。とりわけ、障害者には外見では気付かない人もおり、同局は「女性側にも『女性専用』ではなくて、男性も 乗車することを認識し、だれもが心地よく乗車できるよう協力してもらいたい」と呼びかける。

 さらに、「男性の目が少ない」と安心してか、一部に安心車両内で化粧をしたり、飲食する女性客も他の車両に比べ目立っており、マナー改善の必要性も指摘 されている。


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