表 紙に戻る
伊予 鉄道
本 社所在地
松山市湊 町四丁目4番地1
設  立
1887 (明治20)年9月14日
資 本金
15億円
公 式webサイト
http://www.iyotetsu.co.jp/

 松山市は人口517,231人(2010年10月現在)で四国唯一の「50万都市」である。四国の政治・経済の中心は「四国の玄関口」としての地位から 高松市 が担ってきたが、松山市は四国最大の都市として独特の貫禄≠持っているように感じられる。
 伊予鉄道(伊予鉄)はその松山都市圏に路面電車と鉄道線のネットワークを築き上げている。故・宮脇俊三氏は著書『時刻表おくのほそ道』の中で伊予鉄に ついて「松山を訪れると、自動車時代以前に戻ったような気がする。市内には昔なつかしいチンチン電車が健在であり、郊外へは三本もの路線が延びている。い まどき、こんな贅沢≠ネ地方都市は珍しい」と述べている。 宮脇氏が伊予鉄道を訪れたのは1981年2月のことなので、既に30年以上も昔のことなのだが路線網は現在も変わっておらず、伊予鉄を擁する松山都市圏は 今なお公共交通に恵まれた都市だと言えるだろう。
 また単に路線網が維持されているだけでなく、鉄道線は3線とも日中片道15分間隔で運転され、市内の路面電車は各系統が重複する南堀端〜大街道〜上一万 間は日中片道25本近くの電車が走るなど、運転頻度の高さからも優れた利便性を示している。このような他の地方民鉄では、ちょっと見られないような路線網 の維持と 列車本数の確保がなぜ伊予鉄では今も可能なのか、非常に気になるところだ。その理由の1つはおそらく伊予鉄のターミナル「松山市駅」の立地の良さにある のだろう。JRの代表駅「松山駅」は市街地の西の外れにあり、繁華街へは路面電車などに乗って移動する必要がある。一方の伊予鉄の松山市駅は、駅自身に 「いよてつ高島屋」という四国最大級の百貨店が同居し、周囲は松山最大の繁華街が広がり、官庁街などのオフィス街にも近い立地である。このことが松山市駅 を中心 に路線のネットワークを築いた伊予鉄が今なお松山都市圏の基幹交通として機能している最大の理由と思われる。また同時に行政側も県庁や市役所といった公 共施設を安易に郊外へ移転させることをせず中心市街地の中枢性を維持してきたことが、路面電車や鉄道線の利用の底固めとして重要だとも感じられる。
 伊予鉄が根を張る松山都市圏は地方の公共交通のあり方の優れた事例≠フ1つとして、もっと注目されても良いのではないかと個人的には思っている。

鉄道線についてはこ ちら

軌道線についてはこ ちら

《「改革」の時代に 03’総選挙 経営者は:1》伊予鉄道 森本惇社長  (2003年10月17日『産経新聞』)
 総裁選で再選を果たし、長期政権を狙う小泉首相、次の総選挙で政権奪取をめざす菅民主党−−。改革の中身や手法こそ異なるが、ともに「構造改革」の方向 では一致している。出口の見えない不況が続くなか、県内の経営者たちも出口を求めてそれぞれの「改革」を進める。総選挙を前に、経営者に改革の意味や将来 展望などを聞いた。

 −−これまでの改革の取り組みは
 「運賃引き下げや路線開設など1つ2つの改革メニューでは、お客様はこちらを向いてくれない。超低床型電車やノンステップバスの導入など、この3年間、 半年ごとに様々なサービスメニューを示してきた。社内的には、どんどん若手を登用し、組織を若返らせた。従来の考え方ではここまで変えられなかった。今は 30代の課長もいる」
 「今後は、まちづくりの中で公共交通の果たす役割を考え、長期的な方針を打ち出しながら年度ごとに個別の事業を示していく。松山観光港への電車延伸空港までのLRT(高性能路面電車)建設などを考えている。いずれも巨 額投資になるので国や県、市と話し合いながら進めていきたい」

 −−鉄道、バスの収支均衡への手だては
 「毎年、数億円の赤字を出し、会社全体の収支がとれなくなるので、組合と協議しながらリストラや省力化を図ってきた。赤字を減らすには人件費比率の引き 下げが必要で、契約社員制度を導入した。収益が改善されれば、電車とバスの運営に再投資できる」
 「しかし久万町や南予のバス子会社は、人口減少や高齢化でここ2、3年赤字で、本社と一体で経営改善を図っている。過疎地域では地元自治体の補助を受け ても、限界がある。住民にも、『乗ることで需要をつくる』という意識をもってもらわないとバスは生き残れない」

 −−リーダーに今、何が問われていると思うか
 「これまでは景気が落ちても再び上がるのを待てばよかった。今は下がる一方で、嫌なことも決断せざるをえない。リーダーが責任をすべて取るという心構え を今まで以上に持たないとダメになる」

 −−今の政治に何を望むか
 「改革には痛みが伴うことは理解できるが、改革の後にどれだけよくなるのかを見せてもらいたい。郵政、道路公団民営化が構造改革のメーンになっている が、経済人の立場から言うと、何がどう変わるのか、経済環境がどう良くなるのか見えてこない。中小企業は苦労している。そこに結びつく即効性のある改革の 姿を見せてほしい」

〈伊予鉄道〉 明治20年創立。計43.5キロの鉄・軌 道と路線バスなどを運行する。01年10月から始めた坊っちゃん列車の運行などが評価され、「鉄道友の会」の「グローリア賞」を受賞した。伊予鉄高島屋な どの子会社を含めた売上高は747億円(02年度)。

▼伊予鉄道が3月に梅津寺パークを閉園、入園者低迷続き  (2009年1月27日『日本経済新聞』)

 伊予鉄道(松山市、佐伯要社長)は26日、松山市内にある遊園地「梅津寺パーク」を3月15日で閉園すると発表した。入園客の減少による収入減に加えて 修繕費などの経費がかさみ、慢性的な赤字に改善が見込めないと判断した。約1万8,000平方メートルのエリアは遊具を撤去し、スポーツ・イベントスペー スとして有料で貸し出す。
 梅津寺パークは1963年のオープン。家族で楽しめる遊園地として一時期は多くの人を集めたが、その後は他の施設との競合もあり、入園客は減少。 2007年度は約5万8900人とピーク(63年度)の2割弱に減った。遊具の老朽化に伴って維持管理費も膨らみ、「ここ10年は毎年5,000万 〜6,000万円の赤字を計上していた」(一色覚常務)という。
 少子化の進行やレジャーの多様化で収支改善見通しが立たず、閉園を決めた。2月下旬から「さよならイベント」を実施する。遊園地エリアは整地し、サッ カーの練習やフリーマーケットなどに活用できるスペースにする。梅林は存続する。


表 紙に戻る