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西日本鉄道株式会社
本 社所在地
福岡市中 央区天神一丁目11番17号
設 立年月日
明治41 年12月17日
資 本金
261億 5,729万円(2011年3月31日現在)
公 式Webサイト
http://www.nishitetsu.co.jp/
目  次
1.福岡都市圏と西日本鉄道
2.西日本鉄道の利用状況
3.西日本鉄道の沿線風景
4.西日本鉄道とJR九州の競合関 係について

西鉄福岡(天神)駅 名車2000形は2010年に引退してしまった 2007.11

大牟田駅 電車が発着する時間以外はひっそりとしている 2007.11

1.福岡都市圏と西日本鉄道  
 西日本鉄道は大手民鉄16社の中で唯一、三大都市圏以外の福岡都市圏を地盤とする鉄道だ。また逆に地方中枢都市「札幌・仙台・広島・福岡」の中で唯 一、大手民鉄が存在するのが福岡とも言える。この1つの事実だけでも福岡が札仙広福≠フ中でも一線を画し、むしろ三大都市圏に準ずる都市圏であること を象徴しているように感じる。そしてその福岡を大都市たらしめている様々な都市的装置≠ェある中で、「西日本鉄道」の存在は格別に大きいものがあるでは ないか と個人的に思っている。
 それは西鉄福岡(天神)駅を訪れると容易に感じることができるものだ。バスターミナルと百貨店が同居した4面3線の巨大なターミナルは日中でも1時 間当たり片道で特急2本、急行4本、普通6本の計12本もの列車が発着していて自動改札を行き交う人の流れは途切れることがない。ちなみに同駅の1 日の乗降客数は約13万人で、これは近鉄名古屋駅の同約11万人を上回るレベルなのだ。まさに大手民鉄の名に相応しい、日本有数の私鉄ターミナルと言える だろう。JR(国鉄)や地下鉄・路面電車だけではなく、大手民鉄が存在することによって生まれる経済活動や文化、消費行動、生活習慣など様々な要因が福岡 をより高次元の都 会へと飛躍させた原動力となったような気がするのだ。
 ただ一方で、西日本鉄道の輸送人員を他社と比較すると大手民鉄16社の中で圧倒的に少ない輸送量であることも紛れもない事実だ。鉄道輸送の主力の天神大 牟 田線においても大手民鉄の幹線≠轤オい水準の輸送を行っていると言えるのは、西鉄福岡から久留米近郊の花畑または大善寺までだろう。それ以南については 特急停車駅以外は 日中片道30分毎に普通列車が停まるだけであり、低密度な輸送を行うローカル線といった様相を呈している。それはつまり都市圏の広がりという観点で見れ ば、福岡都市圏と三大都市圏の差は大きいものがあることの証左の1つなのかもしれない。

■天神大牟田線沿線都市の人口推移

1980年10月
1985 年10月
1990 年10月
1995 年10月
2000 年10月
2005 年10月
2010 年10月
福 岡市
1,088,588
1,160,440
1,237,062
1,284,795
1,341,470
1,401,279
1,463,743
(福 岡市中央区)
不 明
140,707
140,291
139,596
151,602
167,100
178,429
(福 岡市南区)
不 明
218,185
233,137
238,652
243,039
246,367
247,096
(福 岡市博多区)
不 明
162,787
165,631
169,319
180,722
195,711
212,527
春 日市
65,838
75,555
88,699
99,206
105,219
108,402
106,780
大 野城市
64,109
69,435
75,214
82,903
89,414
92,748
95,087
太 宰府市
50,273
57,737
62,402
64,913
66,099
67,087
70,482
筑 紫野市
57,966
63,242
70,303
81,988
93,049
97,571
100,172
小 郡市
41,057
43,811
47,116
50,612
54,583
57,481
58,499
久 留米市
不 明
222,847
228,347
234,433
236,543
239,272
236,493
大 木町
12,721
13,177
13,232
13,525
13,862
14,282
14,350
柳 川市
不 明
44,942
43,791
43,245
41,815
39,937
38,332
高 田町
不 明
17,766
17,053
16,038
15,081
14,219
13,395
大 牟田市
163,000
159,424
150,453
145,085
138,629
131,090
123,638
『国勢調査』より筆者作成、※は合併後も旧エリアの人口

 天神大牟田線の沿線自治体の人口推移を見ると福岡都市圏の広がり方がよく分かる。1980年代や90年代は春日市、大野城市、筑紫野市といった福岡の周 辺都市がベッドタウンとして驚異的な人口増加を遂げている一方で、2000年代には福岡市内への都心回帰の傾向も強まり、春日市は2005年と2010年 を比べると僅かに人口が減少すらしている。また福岡市中央区は首 都圏と京阪神圏以外では唯一、人口密度が1万人を超える行政区であり、その中央部を連続立体交差化された高架線で貫いている天神大牟田線の 車窓からは高密度な都市空間を確認することができる。福岡空港が近いために超高層ビルが見当たらないことを除けば、首都圏や京阪神圏の都心部の大手民鉄線 と遜色ない都市景観である。
 一方で久留米市は人口面からすると停滞傾向を示し、その南の大木町は福岡都市圏や久留米都市圏のベッドタウンとして成長が見られるものの、それ以南の柳 川市、高田町、大牟田市は完全に人口減少が続いている。特に大牟田市は人口減少は著しく、1980年から2010年までの30年間で約25%減、絶対数で 約4万人もの人口が減っている。三井炭鉱の閉山などに理由を見出せるものの福岡都市圏のベッドタウンとなるには遠すぎることが著しい人口減少に歯止めをか けることができない理由の1つであろう。

 これらの結果を纏めてみると、自治体・行政区の人口が天神大牟田線の沿線人口とイコールではないことに留意しつつ、2010年10月現在の福岡市〜久留 米市の沿線人口(福岡市は中央・南・博多の3区)は合計およそ130万6千人、 同じく大木町〜大牟田市は合計およそ19万人で、比率では約6.9:1となる。1985年10月時点で同じ計算をすると、計105万4千人と計23万5千人、比率で4.5:1なので久留米を境とした人口動向の南北格差が拡大していることが実感 できる。このような福岡〜久留米間と久留米〜大牟田間の都市化の対照性が、天神大牟田線のダイヤや輸送動向などに色濃く反映している。

西鉄福岡(天神)駅の広々としたコンコース 2013.4

西鉄久留米駅で特急と普通が緩急接続する 2013.4


2.西日本鉄道の利用状況  

■西日本鉄道 天神大牟田線の主要駅(西鉄福岡(天神)〜津福間は各 駅)の1日当たり乗車人員数の推移 (単位:人)

営業`
停 車
1996 年度
2000 年度
2004 年度
2005 年度
2006 年度
2007 年度
2008 年度
2009 年度
2011 年度
西 鉄福岡(天神)
0.0

83,756
76,296
71,515
69,789
70,104
69,434
68,992
66,704
64,773
薬 院
0.8

15,921
15,685
15,644
16,608
17,088
17,429
17,537
17,482
17,959
西 鉄平尾
1.8

6,137
6,200
5,795
5,874
6,181
6,207
6,000
5,707
5,601
高 宮
2.9

11,847
10,879
9,825
9,690
9,715
9,500
9,367
9,205
9,074
大 橋
4.3

21,304
18,888
17,545
17,411
17,427
17,126
17,175
17,058
16,913
井 尻
6.1

13,934
12,395
11,162
10,956
10,992
10,970
10,890
10,562
10,156
雑 餉隈
8.0

9,674
8,608
7,811
7,885
7,849
7,694
7,712
7,518
7,202
春 日原
9.5
11,702
10,617
9,969
9,850
9,877
9,904
9,927
9,814
10,006
白 木原
10.8

5,183
4,650
4,425
4,421
4,428
4,349
4,400
4,321
4,371
下 大利
11.6
10,725
9,063
8,036
8,014
7,976
7,922
7,870
7,764
7,744
都 府楼前
13.8

不 明
不 明
不 明
不 明
不 明
不 明
3,083
3,069
3,131
西 鉄二日市
15.2

15,912
13,602
13,058
13,088
13,063
13,077
13,241
12,647
11,033

16.1








617
2,462
朝 倉街道
17.6
7,677
6,633
5,874
5,970
6,118
6,077
6,241
6,433
6,279
桜 台
19.4

1,603
1,329
1,162
1,137
1,134
1,115
1,088
1,090
1,120
筑 紫
20.8
3,438
3,195
2,918
2,838
2,863
2,943
2,978
2,981
3,112
津 古
23.0

不 明
2,086
1,822
1,816
1,763
1,711
1,679
1,580
1,457
三 国が丘
24.1

不 明
2,148
2,002 2,029
2,062
2,118
2,162
2,111
2,271
三 沢
25.6

不 明
1,444
1,247
1,232
1,202
1,159
1,115
1,083
1,019
大 保
27.0

不 明
1,511
1,422
1,419
1,447
1,470
1,353
1,325
1,374
西 鉄小郡
28.7
不 明
7,059
6,207
6,151
6,159
6,161
6,163
5,995
5,903
端 間
30.7

不 明
1,196
1,028
995
974 938
904
899
864
味 坂
33.7

不 明
201
136
135
128
121
125
130
120
宮 の陣
36.5 不 明
不 明
不 明
1,041
1,041
1,068
1,123
1,134
1,167
櫛 原
37.7

不 明
不 明
不 明
397
416
385
386
389
434
西 鉄久留米
38.6

不 明
不 明
不 明
20,721
20,192
19,749
19,455
18,603
17,918
花 畑
39.5

不 明
不 明
不 明
2,293
2,663
2,967
3,274
3,337
3,607
試 験場前
40.1

不 明
不 明
不 明
1,488
1,474
1,385
1,370
1,312
1,489
津 福
41.4

不 明
不 明
不 明
1,512
1,507
1,443
1,375
1,334
1,268
大 善寺
45.1

不 明
不 明
不 明
1,975
1,989
1,959
1,932
1,827
1,740
西 鉄柳川
58.4

不 明
7,577
6,640
6,594
6,484
6,335
未 公表 5,967
5,819
新 栄町
73.7

不 明
2,797
2,488
2,526
2,532
2,489
2,460
2,348
2,318
大 牟田
74.8

不 明
5,436
4,962
4,833
4,740
4,661
4,633
4,488
4,407
※は乗降客数のデータしか公表されていないため便宜的に乗降客数の半分を乗車人員とした。新栄町駅と大牟田駅の2000年度の乗車人員は 2001年度のデータ。
各自治体の統計年鑑や西日本鉄道グループのWebサイトなどから作成。



3.西日本鉄道の沿線風景  

@天神大牟田線 西鉄福岡(天神)〜大橋
 西鉄福岡(天神)駅は4面3線の巨大なターミナルである。ホームは10両編成まで停車可能だが現在の西鉄は最長で7両編成なので、些かオーバースペック 感も漂う。建設されたバブル期当時は輸送人員が増え続けており、将来を見越した設備だったのだろうが近年は輸送人員の減少が続いており、既にピーク時の7 割程度となっていることから今後10両編成の電車が走る可能性は無さそうである・・・。

西鉄福岡(天神)駅 ホームの有効長には余裕がある 2013.4

薬院駅に進入する太宰府行き普通列車 2013.4

 西鉄福岡(天神)駅を出発すると全列車がすぐに隣の薬院駅に停車する。薬院駅は地下鉄七隈線や博多方面のバスとの乗り換えに便利で、交通結節点の機能が 強化されたことで、利用者は僅かながら増加傾向にある。
 西鉄平尾駅、高宮駅、大橋駅と高架駅が続くが、各駅は同時に高架化されたわけではない(下記年表参照)。長年に亘る苦心の末、大橋駅までの連続立体交差 化が完了しているのである。この都心ターミナル側の約5kmに及ぶ連続立体交差化が完了している点に複々線や地下鉄との相互乗り入れといった三大都市圏の 大手民鉄のようなインフラこそ無いものの、西鉄の大手民鉄としての矜持を感じる。

■西鉄福岡(天神)〜大橋間の設備改良等の推移
1961 (昭36)年11月01日
西鉄福岡駅 が高架化
1978 (昭53)年03月03日
西鉄平尾〜 大橋間が高架化(高宮、大橋の各駅が高架化、平尾は開業時から築堤上の高架駅)
1983 (昭58)年03月26日
西鉄福岡駅 のホーム改良工事が完成。5線5ホームから3線3ホームになり全ホーム7連停車可能に
1993 (平05)年08月26日
西鉄福岡駅 の改築工事のためバスセンター直上の線路を東側に移し2線2ホームでの営業を開始
1995 (平07)年03月25日
西鉄福岡〜 西鉄平尾間の高架化完了(薬院駅高架化)。西鉄福岡駅は2線のうち1線が南に100m移動
1995 (平07)年05月27日
西鉄福岡駅 のもう1線も同様に移動し営業キロで南に100m移動
1997 (平09)年09月27日
改築工事完 成。3線4面ホーム化
1999 (平11)年04月24日
ソラリアス テージビルの完成で2階の外コンコースが完成し、ソラリア計画のすべての事業が完了
2001 (平13)年01月01日
西鉄福岡 (天神)駅に改称
2005 (平17)年02月03日
地下鉄七隈 線が開業(薬院駅開業)


薬院駅を出発する大牟田行き特急 2013.4

2面4線で緩急接続や特急待避を行う大橋駅 ホームは12両編成に対応 2013.4


A天神大牟田線 大橋〜西鉄二日市
 大橋駅を発車すると鳥栖筑紫野道路と繋がる県道福岡筑紫野線を跨ぎ、高架線は終わる。那珂川を渡り、九州新幹線をくぐると地平の井尻駅である。周囲は密 集した住宅地と商店街で道路が狭いこともあり下町といった雰囲気で、大橋駅付近までの整備された市街地とは対照的な景色が広がる。井尻駅の先で福岡都市高 速環状線と福岡外環状道路の間を潜る。そして次の雑餉隈駅から春日原、白木原、下大利の各駅が連続立体交差事業に伴い将来は高架駅となる。尚、雑餉隈〜春 日原の間に新駅も設置される予定なので、計5駅が高架駅となるのだが井尻駅だけは今のところ高架化される予定が無く、高架区間に挟まれた地平駅として当面 残ることになりそうだ。また雑餉隈駅の連続立体交差事業は福岡市の事業だが、春日原〜下大利間は福岡市外となり福岡県が事業主体だ。

■西鉄天神大牟田線連続立体交差事業(雑餉隈駅付近)
事 業区間
福岡市博多 区南八幡町〜福岡市博多区西春町
延 長
約 1.86km
事 業費
約318億 円
事 業期間
平成22年 度〜平成35年度
事 業内容
取り除かれ る踏切:7箇所
立体交差道路:11箇所
整備される側道:6路線
事 業経緯
平成20年 3月 都市計画決定
平成22年7月 都市計画事業認可
福 岡市のwebサイトより)
平面図



■西鉄天神大牟田線(春日原〜下大利)連続立体交差事業

 連続立体 交差事業とは、道路整備の一環として鉄道の一定区間を高架化又は地下化することにより、鉄道と複数の道路との立体交差を一挙に実現する事業である。
 現在、福岡県では、大野城市内及び春日市内において約3.3km区間の鉄道施設を高架化する「西鉄天神大牟田線(春日原〜下大利)連続立体交差事業」を 実施している。
 この事業により、既存道路12箇所において踏切を除却、交差道路を7箇所新設し、合計19箇所において道路と鉄道を立体交差化する。
 また、この区間の北側に隣接して福岡市においても、福岡市内約1.9km区間で「雑餉隈駅付近連続立体交差事業」が実施されており、合わせて約 5.2km区間の鉄道施設が同時に高架化されることとなる。
 完成予定年度は平成33年度である。

 事業区間約3.3km内には12箇所の踏切があり、それらの踏切遮断時間は1日当たり概ね7〜8時間、また、ピーク時は1時間当たり概ね35〜42分間 である。このため慢性的に交通渋滞が発生しやすい状況となっている。

福岡 県のwebサイトより)

▼3.4キロ高架化に着手 西鉄天神大牟田線 春日原〜下大利  (2004年1月15日『西日本新聞』)
 福岡県は14日、西鉄天神大牟田線の春日原〜下大利間を中心とする高架化事業(3.46キロ)に本格着手するため、2月にも地元説明会と用地買収を始め る方針を、春日市と大野城市などの関係自治体に伝えた。工期は本年度を含めて約10年間とし、工費は300億円を超える見通し。完成すれば12カ所の踏切 が消え、福岡都市圏南部の慢性的な交通渋滞の解消に大きな役割を果たすと期待されている。
 県は、国土交通省が年度内に事業を認可する見通しとなったことを受け同日、福岡市内で開いた同線連続立体交差協議会で用地買収の着手を表明。工期や工法 などについても詳細に説明した。
 高架化事業の起点は福岡市博多区春町一丁目の都市計画道路那珂川宇美線。終点は御笠川手前の大野城市下大利団地。この間にある春日原、白木原、下大利の 三駅はいずれも高架駅となり、駅前の広場などが整備される。
 工事は(1)高架橋ができるまでの間、上下線の仮線を現線路の脇に造って対応する「仮線部」区間(2)現線路はそのまま使いながら真上に高架橋を建設し ていく「直上部」区間―の2方式に分けて進める。仮線部は起点(春町)から春日原駅までの約620メートルと、白木原駅から終点(下大利団地)までの約 1,090メートルの2区間となる。直上部は春日原駅から白木原駅までの約1,750メートルが対象となる。
 事業主体の福岡県は、用地買収の期間として2年を想定。国の事業認可後に工事基本協定を締結し、本工事着工は2006年以降となる見込み。高架工事費は 現時点で、国が半分を負担し、残りを県と春日、大野城両市、西鉄が分担する方向。
 計画が動きだせば、福岡市内で高架化されていない大橋〜井尻〜雑餉隈間などの連続立体交差事業への追い風となりそう。この区間では、すでに政府が雑餉隈 駅を対象として来年度予算案に調査費を計上している。

▼西鉄高架化を発表 渋滞緩和に期待感 麻生知事  (2004年2月3日『西日本新聞』)
 福岡県は3日、西鉄天神大牟田線春日原〜下大利間の高架化事業に本格着手すると正式に発表した。年度内に地元説明会を開き、用地交渉を始める。福岡都市 圏南部では踏切遮断による交通渋滞が慢性化しているだけに、麻生渡知事は「鉄道で二分されていた人の流れが回復できる」と期待感を示した。
 事業区間は福岡市博多区西春町二丁目から同県大野城市下大利三丁目までの3.46キロ。この間の春日原、白木原、下大利の3駅は高架駅となり、区間内 12の踏切もなくなる。
 総事業費は約376億円。国が172億円、県が121億円を負担。春日、大野城両市が計60億円、西鉄が23億円を分担する。工期は2014年度までを 予定している。

 高架化に伴う仮線工事たけなわの下大利駅付近を過ぎると、九州自動車道が上を跨ぐ。この九州の大動脈は太宰府IC〜鳥栖間Jct間は6車線を有するので さすがに幅員が広い。九州道と直交する と今度は国道3号福岡南バイパスと並行する。こちらも立体交差の多い高規格道路である。この辺は西鉄とJR鹿児島本線、九州自動車道、国道3号線といった 主要な交通が集まっており、九州の天王山≠ニいった感がある。周囲は住宅が幾分疎らにになり、都市近郊にありがちなバイパス的風景となる。そんな立地の 都府楼前駅は天 神大牟田線の福 岡〜二日市間で最小の乗車人員(約3千人/日)で、やがて左手から単線の太宰府線が近付いてくるとすぐに西鉄二日市駅に到着する。
 西鉄二日市駅は4面5線の大きな駅で全列車が停車する。天神大牟田線と太宰府線の列車がひっきりなしに行き交い賑やかである。

西鉄二日市駅 2013.4

西鉄二日市駅 西鉄福岡駅行き特急 2013.4

西鉄二日市駅 柱に填め込まれた発着電子表示板が珍しい 2013.4

西鉄二日市駅を発車する太宰府行き普通列車 2013.4


B西鉄二日市〜花畑
 西鉄二日市駅を出ると天神大牟田線で最も新しい(2010年3月開業)紫駅である。同駅の開業に伴い西鉄二日市駅は乗車人員数を減らしている。
 筑紫駅を過ぎると車窓左手に広大な筑紫車庫が広がる。そして車庫が終わると田畑が広がり、殆ど切れ目無く連続していた福岡都市圏の市街地がようやく途切 れたことが分かる。筑紫 駅は西鉄福岡(天神)駅から約20kmであり、都市圏としてこの辺が一区切りという感覚だろうか。
 この20km圏で比較すると、例えば仙台の仙石線では東塩釜駅の先、広島では山陽本線の宮島口の手前、阿品駅が該当するので、都市圏の広さとしてやはり 近い ものがありそうだ。
 この先、西鉄小郡駅の前後は線形が良く、特急は110km/hの最高速度で快走する。途中の味坂駅は、福岡〜久留米間で最小の乗車人員(120人/日) だが、周辺は完全に田園地帯である。西鉄甘木線と合流する宮の陣駅を過ぎ筑後川を渡るとそこはもう久留米市街地で、高層マンションやオフィスビルも多く福 岡以来の大都市であることは 車窓からも伺える。影の薄い櫛原駅を過ぎると高架線に上がり西鉄久留米駅に到着。2面4線の高架駅でホームでは多くの利用者が福岡行きの特急電車を待って い るのが印象的だ。

西鉄久留米駅で多くの乗客が下車し発車して行く特急大牟田行き 2013.4

西鉄久留米駅 久留米以南では普通列車はワンマンの2両編成がメイン 2013.4

 西鉄久留米〜試験場前間は2004年10月17日に高架化が完成した。これに伴い花畑駅は特急停車駅に昇格し、全列車が停車するようになった。そのため 花畑駅の乗車人員数は増加傾向にあるが、その分というか西鉄久留米駅は長らく減少傾向にある。1990年代初頭には3万人弱/日の乗車人員があったが現在 は2万人を割り込み約1万8千人/日である。
 花畑駅は増加傾向にあるとは言っても乗車人員は約3,600人/日程度であり、駅構内はいたって静かである。2面4線の立派な高架駅であり駅前もロータ リーが整備され、新しいマンションが建っていたりと今後の発展を期待できそうではあるが、西鉄久留米と花畑の関係は、西鉄福岡と薬院とは比ぶべくもないだ ろう。

花畑駅 2面4線の立派な設備だが利用客は少なく静か 2013.4

花畑駅 駅前もまだ開発途上といった感が漂う 2013.4

C花畑〜大牟田
 今後作成予定。


4.西日本鉄道とJR九州の競合関係に ついて  

西鉄福岡(天神)駅と渡辺通り ヒトもクルマもバスも多く終日混雑している 2013.4

JR博多駅 「JR博多シティ」が開業し面目を一新 2013.4
 西鉄福岡駅とJR博多駅は直線距離で約2kmほど離れており、福岡市中心部へと向かう利用者は最終目的地に応じて西鉄とJRを使い分けることになるだろ う。また例えば久留米においても西鉄久留米駅とJR久留米駅は大きく離れており、西鉄とJRが同じ場所に立地するのは大牟田駅が唯一といっても過言ではな い。そういった意味では両者の競合関係は、さほど強くなくむしろ補完関係にあるとも言えそうである。ただ近年(2011年)、そのようなバランスを崩す事 態が発生した。
 西鉄福岡駅が位置する天神地区は九州最大の商業地区として古くから繁栄していたのに対して、JR博多駅の位置する博多地区はどちらかと言えば業務地区と しての印象が強かった。しかし九州新幹線全通を目前にした2011年3月、JR博多駅に阪急百貨店や東急ハンズなどを核テナントとする「JR博多シティ」 が開業し、博多駅自身が高度な商業機能を持つに至り博多駅を目的地とする利用者が増加している。即ち西鉄を利用して買い物に出かけていた人々がJRへシフ トするということが起きていると考えられるのだ。これに対し天神地区は守勢に回りつつ反攻を窺うような状況だが、そもそも商業集積という面では天神地区に は一日の長があり、街として面的な魅力を更に磨いていくことが西鉄の利用者を増やし、西鉄の企業価値を高めることにも繋がろう。

■西日本鉄道とJR九州の対福岡の区間別優位性比較

西 日 本 鉄 道
J R 九 州
区   間
西 鉄福岡
〜雑餉隈
西 鉄福岡
〜西鉄二日市
西 鉄福岡
〜西鉄久留米
西 鉄福岡
〜大牟田
博  多
〜南福岡
博  多
〜二日市
博  多
〜久留米
博  多
〜大牟田
営 業キロ
8.0km
15.2km
38.6km
74.8km
6.7km
14.2km
35.7km
69.3km
運   賃
240 円
330 円
600 円
1,000 円
220 円
270 円
720 円
1,250 円
所 要時間
12 分(普通)
13 分(特急)
18分(急行)
30 分(特急)
40分(急行)
63 分(特急)
72分(急行)
7 分(快速)
12分(普通)
14 分(快速)
25〜28分(普通)
34〜37 分(快速)
50〜53分(普通)
62〜64 分(快速)
日 中の
運行頻度
普 通:6本/時
特 急:2本/時
急行:4本/時
普通:6本/時
特 急:2本/時
急行:2本/時
普通:2本/時
特 急:2本/時
快 速:3本/時
普通:4本/時
快 速:3本/時
普通:4本/時
快 速:3本/時
普通:2本/時
快 速:2本/時
普通:1本/時
(時刻表などから作成)

■西日本鉄道・天神大牟田線の主要駅の乗車人員数の推移

1990年 頃
1996年 度
2000年 度
2007年 度
2011年 度
西 鉄福岡
約 88,000
83,756 76,296 69,434 64,773
雑 餉隈
約 11,000
9,674 8,608 7,694 7,202
西 鉄二日市
約 18,000
15,912 13,602 13,077 11,033
西 鉄久留米
約 30,000
不 明
不 明
19,749 17,918
大 牟田
約 7,000
不 明
5,436 4,661
4,407
(『福岡県統計年鑑』等により作成)
※西鉄二日駅は2010年に紫駅が開業し乗車人員が減少した

■JR九州・鹿児島本線の主要駅の乗車人員数の推移

1990 年度
1996 年度
2000 年度
2007 年度
2011 年度
博  多
73,295
97,844
96,123
98,653
107,112
南  福 岡
6,245
7,364
7,939
8,198
8,838
二  日 市
5,577
6,848
6,473
6,558
7,055
久  留 米
5,542
6,684
5,961
不 明
6,616
大  牟 田
不 明
不 明
3,491
3,550
不 明
(『福岡県統計年鑑』より作成、博多駅はJR西日本利用者を除く)

 1990年代前半までは、西鉄福岡駅の利用者数はJR博多駅を凌駕していたのだが、西鉄の鉄道事業の輸送人員のピークは1992年度でそれ以降は減少傾 向が続いており現在ではJR博多駅が逆転し、その差は開く一方となっている。JR九州は福岡都市圏を中心に快速列車の設定、普通列車の本数増加、新型車両 の導入や新駅の設置など多方面に亘る改善に努めたほか、九州新幹線の開業もあり福岡都市圏を中心に利用者は増えている。
 天神大牟田線沿線で比較すると、データ入手が不完全だが、雑餉隈vs南福岡ではJRが優位に立っているようである。確かに運賃、運転頻度でJRが優位で あるし、博多駅の吸引力が高まっているので特にその傾向が顕著に出ているのかもしれない。一方で西鉄久留米vs久留米ではJR久留米駅が中心部から外れて いるという立地に加え、運賃、所要時間、運転頻度のいずれも依然として西鉄が優位だ。そのことは乗車人員にも現れており、西鉄久留米駅はJR久留米駅の3 倍程度の利用者がある。大牟田の場合は西鉄とJRの利用者は久留米ほどの大差がないように見えるが、西鉄は大牟田駅に隣接して新栄町という特急停車駅もあ ることを踏まえると、やはり西鉄の方が優位であると言える。

 天神と博多の間は西鉄が100円バスを高頻度で運行しており、「JR博多シティ」に行く場合も西鉄で薬院駅まで行きバスで博多駅まで移動する方が便利な 利用者もそれなりにいる筈である。しかしJR鹿児島本線の改善が進むことで西鉄の競争力が相対的に低下していくことになり積極的に西鉄を利用する人が減り こそすれ増えにくい状況であるので、博多地区の商業的な魅力も増した現状を踏まえると、天神大牟田線の厳しい状況は当面続きそうである。


【参考文献】
『鉄道ピクトリアル臨時増刊号 【特集】西日本鉄道』2011年4月
鶴 通孝「福岡天神に根を張る ときめきレールロード 西日本鉄道」『鉄道ジャーナル8月号』通巻第418号、2001年所収
若林 進一「福岡近郊 5方面の鉄道地図を見る」『鉄道ジャーナル5月号』通巻第295号、1991年所収
谷口 良忠「西日本鉄道鉄道線≠フ電車」『鉄道ジャーナル11月号』通巻第177号、1981年所収

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