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広島 高速交通
本 社所在地
広島市安佐南区長楽寺二丁目12番1号
設 立年月日
1987 (昭和62) 年12月1日
資 本金
100億 円(2011年6月30日現在)
公 式Webサイト
http://astramline.co.jp/

古市駅を発車したアストラムライン 2011.12

大町駅 2011.12

1.厳しい経営状況について


▼広島市のアストラムラインが初の黒字 (2001年5月6日『中 国新聞』)
 広島市の新交通システム「アストラムライン」(本通〜広域公園18.4キロ)を経営する第三セクター広島高速交通の営業収支が、2000年度初めて黒字 になったことが5日までに分かった。乗客増とコスト削減が主な要因。累積赤字は約89億円に上っているものの、開業6年目で経営に好転の兆しが見え始め た。
 94年8月の開業後は、翌年度の22億7,900万円をピークに、営業収支は赤字続きだったが、2000年度決算では3,800万円の黒字を計上。年間 利用者は約1,934万人、1日平均5万2,998人で過去最高となった。
 アストラムラインは1日約7万人の利用者を想定して開業した。しかし、マイカー、バス通勤からの転換などが予想を下回って開業から3年間は4万人台にと どまり、経営計画の修正が迫られた。
 増便や急行の新設、朝のラッシュ時の2分半間隔運行などダイヤを改善し、2000年度は開業時に比べ、1日平均で約9,400人の増加となった。開業6 年目の乗客数については開業時比で4千人強の増加を見込んでいたため、伸び率は2倍以上となった。
 経営効率化も進め、退職者不補充などで社員を開業時より70人削減し192人にしたほか、外注業務の削減など運営費のコスト抑制を図った。
 ただ、長期借入金残高(今年3月末現在)は478億円で、支払い利息を含めた2000年度の当期損益は、6億5,300万円の赤字。累積債務は依然増え ているが「企業努力で改善できる営業収支の黒字転換は大きな励み」(同社総務課)としている。
 同社は資本金100億円のうち、広島市が51%を出資。4月11日にオープンした中区の紙屋町地下街「シャレオ」とは、本通 と県庁前の両駅が直結した。オープン後1週間で乗客が計約1万7千人増加した。
 上川孝明社長は「乗客の伸びは予想の2倍以上を確保し、運賃値上げをせずに営業黒字にできた。今後は、設備の本格的なメンテナンス時期を迎え費用もかさ むが、さらに健全経営に努力したい」と話している。

▼アストラム(広島 高速交通)立て直しなるか  (2003年7月7日『日刊工業新聞』)
▽市、205億円無利子貸し付け
 広島市の中心部から北西部までの18.4キロメートルの新交通システム「アストラムライン」を運営する第三セクター、広島高速交通(広島市安佐南区) が、03年3月期決算で債務超過に陥った。市は、新社長に前西武建設常務の中村良三氏を招聘。建設時に抱えた高利の負債を前倒し償還するため、高速交通に 205億円を無利子貸し付けすることを決めた。果たしてアストラムは三セク鉄道立て直しの成功例になれるのか。(中四国・清水信彦)
  ◇
 「JRとの交差点で乗り換えできないのは、誰が考えたっておかしい」−。中村社長は6月26日の就任記者会見で、山陽本線と交わる地点に乗換駅をつくる よう、関係方面と話し合いを始める考えを明らかにした。
 アストラムは途中で2度、JR線と交差する。広島駅から北部に向かうローカル線の可部線とは乗換駅があるのに対し、幹線の山陽線とは結節していない。計 画時には乗換駅建設に向け協議が進められていたが、利害が一致せず不調に終わった経緯がある。不便との声も多く、いわば利用者不在の象徴のような話だ。
 中村社長の呼びかけに対し、JR西日本は交通ネットワークの充実に繋がると前向きな姿勢。一方、路面電車やバス路線を持ち、JR駅から市中心部へのアク セスを担ってきた広島電鉄などにとっては、乗換駅設置は乗客減になる可能性が高いだけに死活問題だ。
 94年に開通したアストラム。交通体系整備の全体的な視点に狂いが生じたのは、乗換駅だけではない。88年の当初計画では、新興住宅地がひしめく途中の長楽寺駅までの路線だっ た。同駅までの区間は今でも営業黒字を計上している。
 その後、市が中心となって北西部の丘陵地帯に人口10万人規模の町を造成する「ひろしま西風新都」開発計画が浮上。これに合わせる形で91年に計画を延 長し、逆U字型のいびつな路線となった。開通時に見込んでいた1日当たりの輸送人員は6万9,000人。いざ開通すると、高架下に道路をつくったことも あって乗客は伸び悩み、5万人前後で推移した。西風新都はバブル崩壊で開発が遅れ、人口はいまだ約4万2,000人にとどまっている。
 今後さらに事業費700億円をかけ、2015年頃をめどにJR西広島駅までの6.2キロメートルを延長開業する計画もある。だが現在では、計画路線に並 行するようにして都市高速4号線が開通。逆U字型の路線をショートカットする形で広島電鉄が1日上下300本のバスを運行している。3分の1の所要時間と 安い運賃により、アストラムの乗客減に追い打ちをかけた。
 公共性と収益性の両立が求められる交通事業。西武鉄道にも在籍したこともある中村新社長には、改革の大なたを振るって欲しいと市民の期待が高まってい る。

▼アストラム債務超過2億1300万円 (2006年6月11日『中国新 聞』)
▽05年度輸送人員は5年ぶり増

 広島市の新交通システム「アストラムライン」を運行する第三セクター、広島高速交通は2005年度決算で約2億円の債務超過になったことが、10日分 かっ た。地下鉄部分の建設費に対する国、市の補助金の交付期間が、予定通り前年度で満了したのが主な要因。一方、輸送人員は5年ぶりにプラスに転じ、乗客離れ の傾向に歯止めがかかった。
 国、市の補助は開業翌年の1995年度から10年間と当初から決まっており、04年度の計約7億8千万円で終了した。
 関係者によると、このため05年度は当期損益が約5億5千万円の赤字になった。累積赤字は資本金の100億円を上回り、2億1,300万円の債務超過に 転落し た。同社の場合、昨年秋の中間決算で同じく債務超過になった市の三セク、広島地下街開発とは違い、運輸収入が日常的に入るため金融機関から新規融資を受け る必要はなく、直ちに深刻な経営危機に陥る可能性は低いという。
 一方、輸送人員は、定期券の値下げ効果で2000年度以来5年ぶりにプラスに転じ、1日平均で4万9,033人になった。運輸収入も、前年度の38億 3,500万円からわずかに増えた。
 アストラムラインは、94年8月に開業。本通(中区)〜広域公園前(安佐南区)間の18.4キロを結ぶ。うち地下鉄部分は本通―県庁前間の0.3キロ。 マイカーやバスとの競争激化などによる経営の悪化に対応し、03年3月に経営健全化計画をまとめ、市から無利子で資金貸し付けを受けている。03年度は開 業以来初の単年度黒字になった。ただ、補助金がなくなる05年度は再び赤字に転落する見通しだった。(滝川裕樹)

▼アストラムにもパスピー導入 (2009年7月21日『中国新聞』)
 広島高速交通(広島市安佐南区)は、運賃支払いICカード「PASPY(パスピー)」を8月8日からアストラムラインに導入する。駅の券売機や窓口でパ スピーの販売も始める。広島高速交通は「混雑の緩和につながる」とみる。
 一方、広島電鉄(中区)はパスピーが普及したとして、運賃支払い用磁気カード「パセオカード」と回数乗車券の販売を10月末で中止する。カードの残額を パスピーに移すサービスを、中区千田町の本社窓口などで受け付ける。カードは2010年10月ごろまでは利用できる予定だ。


2.輸送人員について

▼広島高速交通の1日平均乗(降)車人員数の推移
  (単位:人)

2000年度
2002 年度
2005 年度
2006 年度
2007 年度
2008 年度
2009年度
駅  名
営 業`
乗車人員
降車人員
乗 車人員
乗 車人員
乗 車人員
乗 車人員
乗 車人員
乗 車人員
降車人員
本  通
0.0
9,795
9,304
9,477
9,639
9,721
9,904
10,175
9,964
8,142
県 庁前
0.3
6,545
9,411
5,701
5,157
5,186
5,210
5,219
5,060
8,419
城  北
1.4
1,214
1,334
1,142
1,201
1,241
1,265
1,296
1,263
1,400
白  鳥
2.1
1,767
1,712
1,781
1,789
1,770
1,716
1,742
1,732
1,701
牛  田
2.9
1,008
973
945
855
885
852
816
784
740
不 動院前
4.0
2,066
1,677
1,904
1,731
1,710
1,691
1,671
1,674
1,534
祇 園新橋北
5.0
1,384
1,227
1,444
1,467
1,458
1,503
1,556
1,537
1,405
西  原
6.0
2,200
1,915
2,367
2,533
2,658
2,792
2,959
2,973
2,726
中  筋
7.0
3,071
2,775
3,159
3,242
3,271
3,262
3,277
3,153
2,940
古  市
7.8
1,808
1,526
1,805
1,698
1,721
1,735
1,710
1,649
1,452
大  町
8.4
5,260
5,290
4,959
5,088
5,093
5,281
5,364
5,332
5,208
毘 沙門台
9.6
1,847
1,436
1,795
1,837
1,874
1,945
1,984
1,964
1,745
安  東
10.6
3,088
2,849
2,942
2,935
3,033
3,205
3,301
3,186
2,995
上  安
11.4
2,849
2,970
2,378
2,218
2,211
2,221
2,241
2,192
2,342
高  取
12.0
1,414
1,244
1,441
1,490
1,496
1,522
1,518
1,447
1,334
長 楽寺
12.7
1,562
1,405
1,378
1,343
1,375
1,404
1,468
1,392
1,290

13.9
1,200
1,088
1,249
1,217
1,216
1,254
1,323
1,323
1,211
大  原
14.9
1,721
1,671
1,337
1,255
1,238
1,287
1,290
1,268
1,260
伴 中央
16.0
625
575
570
577
603
637
534
512
482
大  塚
17.6
1,197
1,189
564
634
647
708
627
663
696
広 域公園前
18.4
1,378
1,425
1,332
1,127
1,068
1,150
1,115
1,153
1,197
総 数
52,997
49,671
49,033
49,474
50,685
51,189
50,222
(『広島市統計年鑑』より作成)

▼アストラムライン、客離れ続く (2004年11月3日『中国新 聞』)


▽一日平均0.9%減 定期券値下げも効果薄く

 広島市の新交通システム「アストラムライン」の2004年度上期(4〜9月)の一日平均乗客数は、前年同期比を450人下回る5万135人だった。通 勤・通学定期券を値下げするなど利用促進に取り組むものの、乗客離れに歯止めがかかっていない。


乗客数が伸び悩んでいるアストラムライン
(広島市中区、県庁前駅)

   運行する第三セクター「広島高速交通」のまとめでは、上期の一日平均乗客数の内訳は、定期利用者が2万938人で前年同期比8.3%の伸び。一方、一般 客は2万9,197人で同6.6%減と落ち込み、全体では0.9%減となった。
 旅客収入面でも、一般客のウエートが下がったため、一日平均で1,080万円にとどまり、同4.4%の減収だった。
 同社は乗客減の要因として、台風多発の影響のほか、昨年度の劇団四季公演のような集客効果の高いイベントが沿線で少なかったことなどが響いたとしてい る。
 アストラムラインの一日平均乗客数は、2000年度の約5万3千人がピーク。01年10月の広島高速4号線(西風新都線)開通でマイカーや路線バスとの 競合が厳しくなり、03年度は4万8千人台に減少した。本年度の当初見込みは4万9,540人。上期はこれを上回ったとはいえ、下期は沿線に多い大学生の 利用が落ち込むのが通例で、同社内では「達成は困難な 状況」との見方が出ている。
 同社は今年1月に通学定期、3月に通勤定期をそれぞれ、3カ月間で5%、6カ月間で10%引き下げた。3月からは65歳以上を半額にする定期「シニア 65」を1年間限定の社会実験で売り出している。

▼アストラム利用2億人、開業11年  (2005年8月23日『中国新聞』)
 広島市中心部と北西部を結ぶ新交通システム「アストラムライン」の乗客数が22日、通算2億人を突破した。1994年8月20日の開業以来、4,021 日目の達成は、当初見込みより約3年5カ月遅れた。
 2億人目は、午前11時すぎに広島県庁前駅の北側改札口から出た理容師の狩野達朗さん(26)=安佐南区西原。家族4人で一緒にくす玉を割り、同駅の三 島真治駅長から花束を受け取った。映画鑑賞しようと街中に出てきた狩野さんは「休日によく乗ります。時間に正確で便利ですね」と話していた。
 アストラムラインは、本通〜広域公園前間18.4キロ。94年の広島アジア競技大会に合わせ、旧建設省(国土交通省)と広島市、第三セクターの広島高速 交通の三者が総事業費約1,744億円をかけて整備した。2004年度の一日平均乗客数は約4万8,500人で、開業当初見込みの約7万人を大幅に下回っ ている。
 JR西広島駅などへの延伸が計画されたが、実現の見通しは立っていない。

▼アストラム客、5万人超す (2008年5 月1日『中国新聞』)
 広島市の新交通アストラムラインの2007年度乗客数は、前年度比2.2%増の1日平均5万546人となり、6年ぶりに5万人台に達したことが30日、 分かった。運行する広島高速交通(安佐南区)や出資する市は、沿線で進んだ住宅建設が「追い風」になったとみている。
 内訳をみると、4割余りを占める通勤、通学定期が前年度比4.7%増。中筋、西原両駅(ともに安佐南区)を中心に、国道54号祇園新道沿いから市中心部 への利用が伸びた。沿線でマンションの完成が相次いだほか、安東駅(同区)近くの安田女子大薬学部新設もプラス要因になった。
マンションが林立する西原駅〜祇園新橋北駅間  2011.12

▼アストラム乗客数4年連続増 (2009年 6月20日『中国新聞』)
 広島市中心部と北西部を結ぶ新交通システム「アストラムライン」の2008年度の1日平均乗客数は前年度比1.3%増の5万1,189人で、4年連続で 増 加した。市は、定期券の利用者が増えた一方、不況の影響で行楽地などへの外出が減ったため微増にとどまったとしている。
 総輸送人員は1,868万4千人。内訳は、通勤通学の定期券利用者が堅調で、859万7千人と5.1%増加した。沿線でマンション開発などが相次いだた め とみられる。
 一方、定期券以外の利用者は1,008万7千人と1.8%減少した。不況の影響に加え、前年度より沿線で大型イベントが少なかったことも響いた。

▼アストラム5年ぶり乗客減少 (2010年 6月25日『中国新聞』)
 広島市の新交通システム「アストラムライン」の2009年度の乗客数は、1日平均5万223人で、前年度比1.9%減った。減少は5年ぶ り。市は、高速道路料金の引き下げなどが響いたとみている。
 総輸送人員は1,833万1千人だった。内訳は、通勤通学の定期券利用者が868万8千人で、1.1%増えた。沿線のマンションや団地開発が進み、市中 心 部とを往復する人の流れが膨らんだ。一方で、定期券以外の利用者は964万3千人で、4.4%落ち込んだ。高速道路料金の引き下げで行楽時に車で移動する 人が増えたほか、不況で外出を控える傾向もマイナスとなったとみられる。
 運輸収入は37億円と5.6%減少した。単年度収支は3億5,700万円の赤字で、累積損失は94年の開業以来最多の117億2,800万円に膨らん だ。


▼催し続きアストラム乗客微増  (2011年6月16日『中国新聞』)

 広島市のアストラムラインは、2010年度の乗客数が1日平均5万708人で前年度比1.0%増と2年ぶりに増加した。市は、沿線の人口増や大型イベン トの相次ぐ開催が要因とみている。

 総輸送人員は1,850万8,279人。内訳は、通勤通学の定期券利用者が882万1,338人で1.5%増えた。定期券以外の利用者は968万 6,941人と0.5%増。昨夏の記録的猛暑で外出を控える傾向があったが、沿線の施設で人気音楽グループの野外コンサートなどが多く開かれ、微増となっ た

▼アストラム乗客2年連続増加 (2012 年6月26日『中国新聞』

 広島市出資の第三セクター、広島高速交通(安佐南区)が運行するアストラムラインの乗客数は2011年度、1日平均5万1250人で前年度比1.1%増 と2年連続で増加した。沿線の人口増が要因とみられる。一方で単年度収支は4600万円の赤字。赤字は7年連続となった。

 同社の11年度決算によると、年間乗客数は1875万7615人。内訳は定期券の利用者数が899万2638人で、1日平均では1.7%増えた。定期券 以外は976万4977人。1日平均で0.5%増だった。運賃収入は36億7100万円と2700万円増えた。単年度収支は4600万円の赤字だったもの の、減価償却費の減少などで赤字幅は前年度から約1億円縮小した。同社は12年度、単年度収支の黒字転換を目指す。一方、累積赤字は運行を始めた1994 年以来、最大となる119億2100万円となった。

 同社は02年度決算で債務超過に陥った。市から205億円の無利子融資を受け、金利負担の軽減や資金繰りの改善を図った。ただ、今後必要になる車両や機 器の更新に200億円かかると試算しており、13年度以降の次期経営健全計画の策定を急いでいる。


3.白島新駅について

▼JRにアストラム接続の新駅要望 広島高速交通新社 長 (2003年6月27日『中国新聞』)

 広島市の新交通システム「アストラムライン」を運行する第三セクター広島高速交通の社長に26日、西武建設(埼玉県所沢市)の中村良三常務(61)が就 任し、JR山陽線との乗り換えを実現するため、中区白島地区にJR新駅を設置するよう関係機関と協議に入る方針を明らかにした。
 市中心部を通るアストラムラインは、JR山陽線とネットワーク化しておらず「軌道系公共交通としては欠陥路線」(地元交通関係者)との指摘も根強 い。建設当時にも、JRとの接続を求める声はあった。

 中村氏は「利用者はなぜつながっていないのか疑問だろう。実現に努力する」と強調。JR西日本や国土交通省、広島市、経済界に働き掛けを強める考えを示 した。
 市中心部でアストラムラインは、国道54号に沿って北上。地下から地上に出る西白島町で、高架の山陽線とほぼ直角に交差する。南側400メートルに アストラムラインの城北駅、北側360メートルに白島駅がある。JR新駅を設置する場合、この交差地点付近が有力。関係者によると、JR側も関心を示し ている。

 広島高速交通は現在、市に対し205億円の無利子貸し付けを要請するなど経営不振に陥っている。筆頭株主である市が再建のリーダーとして、西武グ ループで地域開発や鉄道事業に携わり、広島プリンスホテル(南区)と周辺のマリーナ開発も手掛けた中村氏に就任を要請。26日の株主総会と取締役会で選 任した。西武建設常務は27日に退任する。

▽利用者の視点で経営再建 中村良三新社長に聞く
 経営不振に陥った新交通システム「アストラムライン」を運行する第三セクター広島高速交通の社長に決まった中村良三氏(61)は26日の就任会見で、利 用者の視点で再建に取り組む決意を語った。1995年から同社の社長は2人の元市助役が務めていたが、中村氏は上場企業の常務から転身する。一問一答は次 の通り。

 ―就任の抱負を。

 広島市におけるアストラムラインの役割の大きさと、経営状況の厳しさから責任の重さを感じている。利用者の立場にたち、真摯に耳を傾けて改革を図りた い。JRと乗り換えが簡単にできないのは、利用者にとって大変不便。白島地区にJR駅が新設できるよう関係機関と協議を始める。

広島市中区西白島町で交差
するJR山陽線高架橋とアス
トラムライン(左上が白島駅)

 ―高速 交通は市に対し約205億円の無利子貸し付けを要請し、その補正予算が市議会に提案されています。

 前社長がつくられた経営健全化計画に沿った収支改善策だ。金利負担が大きく、経営を圧迫している建設時長期借入金を繰り上げ償還する財源に使う。この計 画はよくできている。これに私が西武鉄道で得たノウハウや経験を生かし、役員、社員と一丸になって努力していく。ぜひとも議決をお願いしたい。

 ―公共交通に対する考え方は。

 いまは全国的に利用者が伸び悩んでいるが、今後は車社会から、公共交通を軸にした歩いて暮らせるまちへと転換するだろう。渋滞対策、環境負荷の軽減、健 康志向などが要因。海、山、川が近接した広島は、公共交通を使って暮らすまちとしては将来性が高い。その可能性を追求する議論を繰り広げたい。
 JR、広島電鉄、バス、アストラムラインなどが会社の枠を超え、利用者の使いやすさを重視し、公共交通として一つのシステムをつくるべきだ。まずは、利 用者の忘れ物をインターネットで一元的に検索できるようにしたらどうだろうか。

▼山陽線とアストラム結節 両線「白島新駅」検討  (2004年12月21日『中国新聞』)
 JR山陽線とアストラムラインが交差する広島市中区白島地区で、市やJRなどは、両線ともに新駅を建設して結節する方向で検討を進めていることが20 日、分かった。総事業費は45億円に上る見込みで、財源確保が大きな課題となる。
 JR山陽線の広島〜横川駅間と、アストラムの城北〜白島駅間は、JR高架の下をアストラムがくぐる形で交差している。市によると、関係者の協議による新 駅設置の最有力案は、JRが高架部分に、アストラムが交差地点から南に約100メートル地点に、それぞれ新駅を設け連絡通路でつなぐ。
 建設費はJR駅が13億円、半地下となるアストラム駅が27億円、連絡通路が5億円の計45億円と見積もられている。市やJRなど関係機関の負担分につ いてはまだ具体的な議論になっていないという。
 両線の結節は、アストラムの開通(1994年8月)以前から構想はあったが、 関係機関の思惑は一致していなかった。しかし昨年6月、アストラムを運行する第三セクター広島高速交通の中村良三社長が就任会見で、新駅設置をJRに要望 する方針を表明。市やJR西日本、国土交通省などは昨年11月、「JR白島新駅設置検討協議会」を設立し、需要予測や建設方法などを話し合っている。
 同協議会は今後、国の補助制度の活用などを検討していく。

▼新交通と連絡・白島新駅実現遠く  (2006年4月5日『中国新聞』)
 広島市とJR西日本などが検討を進めるJR山陽線とアストラムラインの結節駅「白島新駅」構想(中区)が暗礁に乗り上げている。約45億円と見込まれる 事業費確保にめどが立たないからだ。市は昨年8月に施行された「都市鉄道等利便増進法」による国の3分の1補助を「突破口に」と働きかけるものの、国土交 通省は適用に難色を示している。(伊東雅之)

 新駅構想の対象地域は両線が交差する中区白島地区。広島市、JR、アストラムラインを運営する広島高速交通、中国地方整備局、中国運輸局で設置する 「JR白島新駅設置検討協議会」が2003年から検討を進めてきた。
 最大の懸案はJR、アストラムライン双方の駅舎と連絡通路の建設費。JRは建設費の地元負担を新駅の条件とし、独自に支出する構えは見せない。財政難の 市や、累積赤字を抱える広島高速交通も出せる状況にない。
 こうした中で、構想推進を図る市都市交通部は都市交通の利便性を高めるための新法に着目。昨年8月から国交省に補助を要望している。
 ところが国が適用ケースとして念頭に置くのは別の路線のレールを直結させる相互乗り入れで、通路でつなぐ山陽線とアストラムラインは形態が異なる。市は 「利便性向上という目的は一緒」と要望するが、国交省都市鉄道課は「構想には補助対象ではない新駅建設も含まれていて難しい」とする。
 仮に補助対象になっても、残る30億円の確保のめどもない。こうした状況から協議会は昨年10月、市が同省との協議内容を説明したのを最後に当面、開く 予定はない。参加機関の一つは「新駅への地域ニーズを探る調査も十分でなく、準備不足は否定できない」と漏らす。
 白島新駅構想はアストラムラインの建設前からあったが、関係機関の意向が一致せず実現しなかった。可部線との競合などを理由に消極的だったJRが02年、広島シティネッ トワーク計画を打ち出して新駅にも関心を示したのがきっかけで再浮上していた。
 市都市交通部の岡村清治部長は「準備不足と言われるとそうかもしれない。国に事業の理解を得られるよう努力を続けたい」と話している。

▼広島市、白島新駅を新設方針 (2010年 2月4日『中国新聞』)

 広島市が、JR山陽線とアストラムラインの乗り換え拠点として白島新駅(仮称、中区西白島町)を新設する方針を固めたことが3日、分かった。2010年 度に実施設計を進め、11年度に駅舎などの建設に入る。着工から3年程度での完成を目指す。
 アストラムラインの利用促進に向けては、市中心部でのJR山陽線との結節が懸案だった。計画によると、山陽線がアストラムと交差する地点にJRの新駅を 建設。約120メートル南に半地下のアストラム新駅を設け、連絡通路で結ぶ。市は国の補助金の交付見通しなどを踏まえ、事業化を判断した。
 市は昨年7月の市議会建設委員会で、両駅舎や連絡通路の整備費用を約45億円と説明している。費用負担割合についても市、JR西日本、アストラムを運行 する第三セクターの広島高速交通が大筋で合意したとみられる。
 10年度に進める実施設計は、市が連絡通路や駐輪場など周辺設備分を担当。JR、広島高速交通の2社が、それぞれの駅舎や関連施設を受け持つ予定。市 は、両社への補助金を含む関連費用約2億円を、10年度予算案に盛り込む方向で最終調整している。
 市は、JR広島駅から白島新駅でアストラムに乗り換え、紙屋町に到着するまでの所要時間を約8分と試算。路面電車との比較では約6分短縮となる。

▼広島市が白島新駅事業費案 (2010年2月25日『中国新 聞』)
 広島市中心部でJR山陽線とアストラムラインの乗り換え拠点となる白島新駅(仮称)の新設計画で、広島市は24日、事業費の負担割合の見込みを市議会建 設委員会で明らかにした。概算事業費57億円のうち、市は24億円を一般財源と市債発行で負担。広島高速交通が7億円、JR西日本が2億円を支出し、残る 24億円は国交付金を充てる。
 計画では、アストラムと交差する山陽線の広島〜横川間の中区西白島町に、JR新駅を建設。約120メートル南に半地下のアストラム新駅を設け、連絡通路 で結ぶ。事業費の内訳はJR新駅16億円▽アストラム新駅26億円▽両駅の連絡通路や駐輪場など15億円。2014年度開業を目指す。
 市はこの日、市負担分24億円の財源について一般財源15億円、市債9億円と説明。国からは10年度創設予定の社会資本整備総合交付金(仮称)24億円 を見込んでいるとした。


▼白島新駅概要を住民に説明 (2010年4月27日『中国新 聞』)

 JR山陽線とアストラムラインの乗り換え拠点となる白島新駅(仮称) について、広島市は25、26の両日、中区の白島小で地元説明会を開 いた。施設配置の詳細や整備スケジュールを示した。

 両日で住民約180人が参加した。市の案では、アストラムラインの駅は、中区西白島町の国道54号中央分離帯に設ける。駅舎は半地下式で改札は1階、 ホームは地下1階になる。山陽線の駅は約120メートル北側に設け、南北に改札口を配置。駅の整備主体はアストラムは運営する広島高速交通 と市、山陽線はJR西日本を予定する。

 両駅間は約170メートルの連絡通路で結ぶ。車いすがすれ違えるよう横幅は4〜6.5メートル確保し、屋根を付ける。エスカレーターを2カ所、エレベー ター4カ所備える。駐輪場は2カ所設置し、計約900台を収容する。

 概算の総事業費は57億円。うち24億円は国土交通省の補助金を充てる予定という。市は7月に都市計画審議会を開き、秋以降に実施設計に入る。2014 年春の開業を目指す。

▼「白島新駅」工事が始動へ (2012年1月5日『中国新聞』)

 広島市中心部でJR山陽線とアストラムラインの結節駅となる白島新駅(中区西白島町)の建設工事が2012年、始まる。アストラムラインは1994年の 開業以来、初の新駅設置。東西と南北の動脈接続で広域的な軌道系ネットワークを形成する。市やJR西日本などは14年春開業を目指す。

 新駅は山陽線の広島〜横川間、アストラムラインの城北〜白島間に位置する。JR新駅はアストラムラインと交差する山陽線の高架に付設される。アストラム ライン新駅は国道54号の中央分離帯に半地下方式で整備。両駅は、連絡通路と国道をまたぐ橋で結ばれる。

 整備主体はアストラムライン新駅と連絡通路、橋が市と運行会社の第三セクター広島高速交通、JR新駅はJR西日本で総事業費は57億円。市が24億円、 広島高速交通が7億円、JR西日本が2億円を負担し、残る24億円は国の交付金を充てる。市は3月までに橋の建設に着手。工事は12年度に本格化する。

 市は連絡通路のデザインに、公募でシーラカンスアンドアソシエイツ(東京)の案を採用。大小の穴が開いたコンクリート製の屋根で覆うユニークな外観が目 を引く。通路には広場の機能も持たせ、店舗設置やイベント開催も可能だ。


半地下のアストラム新駅と橋上のJR新駅(奥)のイメージを重ねた白 島地区の合成写
真。国道54号の中央分離帯にはユニークな外観の連絡通路が設けられる


▼白島新駅、連絡路を簡素化へ (2012 年2月18日『中国新聞』

 広島市は、JR山陽線とアストラムラインの結節点となる白島新駅(中区西白島町)の連絡通路を簡素化し、工事費を約6億円削減する。追加の地盤工事が必 要となり、総事業費の抑制に迫られたため。17日の市議会総括質問で明らかにした。

 連絡通路は国道54号の中央分離帯に設ける半地下のアストラムライン駅と、アストラムラインと交差する山陽線の高架に付設されるJR駅をつなぐ。約 150メートルをコンクリート製の屋根で覆う。
 見直しは屋根を51メートル短縮。短縮部分は簡易な覆いに変更する。デザインしたシーラカンスアンドアソシエイツ(東京)は「市の判断に委ねたい」とす る。

 新駅整備では追加の地盤工事が必要となった上、国から排煙対策の不十分さを指摘された。市は57億円の総事業費が14億円も膨らむと見込まれるため、事 業内容の見直しを進めている。追加工事の影響で開業予定も1年遅れ15年春と なる。


4.延伸計画について


▼アストラム西広島延伸計画で「西の玄関」再整備へ (2002年 1月8日『中国新聞』)

 広島市の中心部と北西部を結ぶ新交通システム「アストラムライン」の西広島(西区己斐地区)への延伸計画を受け、市は新年度、600世帯規模の区画整理 事業と、110万都市の西の玄関にふさわしい交通ターミナル化を柱にしたJR西広島駅一帯の再整備構想を打ち出す。基本理念は「平和を象徴する緑の再 生」。市民参加型まちづくりのモデルにする方針で、地域の基本合意を確認し、4月にも正式決定する。

 整備構想の中心になるのが、同駅北口の区画整理事業。約15ヘクタールの660世帯を対象に検討中で、庭園的な風景が広がる街並みにする。国鉄清算事業 団から取得した用地も活用、駅前広場に交流拠点を設ける。3月に住民アンケートを実施した上で最終判断する。

 アストラムラインは1994年、広島アジア大会開催に合わせて開業。本通駅(中区)から広域公園前駅(安佐南区)まで18.4キロを運行している。 2015年ごろには西広島駅までの6.2キロを延伸する計画(事業費約700億円)。

 延伸区間のうち己斐地区約2キロは住宅地を高架橋で貫き、3駅を設置するルートを通す。約200世帯が立ち退きになる見込みで、アストラムラインに沿っ たまちづくりにも着手する。

 沿線に 標準幅員22メートルの幹線道路約1.8キロを新設するため、新年度中に都市計画決定する。車道と歩道を高木の植樹帯で分離し、「緑のシンボル通り」に し、マンションや店舗を誘導する。

 交通ターミナル計画ではアストラムラインの駅をJR西広島駅の上部に建設。山陽線で分断されている南北地区を自由通路で結び、路面電車やバスへの乗り継 ぎ機能も抜本的に改善する。今後、JRとの協議に入る。

 一方で、市は「再整備構想は地域への提案。最終的な計画は住民が議論し、合意形成を図るプロセスが必要」と説明。既に地元の「21世紀の己斐を創(つ く)る会」(桜井親会長)を窓口にした勉強会も本格化している。

 同会の辻本弘副会長は「駅北口一帯は狭い道路しかない密集地のため防災上も危険。アストラムライン延伸という100年に一度ともいえる絶好の機会を生か し、先見性のあるまちづくりを住民の幅広い参加で実現したい」と話している。

▼アストラムライン延伸で西広島ルート案決定 (2002年11月 20日『中国新聞』)
■200世帯立ち退きへ あすから地元説明会
 新交通システム「アストラムライン」の延伸計画で、広島市は19日までに、西広島地区のルート案(1.85キロ)を正式決定した。新たに幹線道路を通 し、中央部にアストラムラインの高架橋を建設する整備手法を取り、約200世帯が立ち退き対象となる。市は21日から地元説明会を始める。

 アストラムラインは2015年頃を目標に、現在の終点である広域公園前駅(安佐南区)からJR西広島駅(西区)までの6.2キロを延伸する計画。今回、 市がルート案を正式決定したのは、このうち西区己斐上四丁目(沼田分かれ交差点)〜己斐本町一丁目(西広島駅)間。己斐小の南西を通り、おおむね県道伴広 島線の西側に沿ったルートとなる。

 高架橋の受け皿となる幹線道路(仮称・己斐中央線)は標準幅員22メートル。片側1車線の車道と停車帯を設けるほか、高木の植樹帯で分離した歩道を両側 に配置する。
 市が21日から始める地元説明会は、この幹線道路を都市計画決定するための手続き。25日までに己斐小体育館で計4回開き、地元町内会の1,980世帯 に出席を要請している。説明会で住民の理解が得られれば、市は本年度中の都市計画決定を目指す。

 西広島地区以外の延伸区間は、既存道路の県道広島湯来線の活用やトンネル新設などで、ルート案は固まっている。
 アストラムラインの延伸計画を機に西広島地区では、市と地元住民が、600世帯規模の区画整理事業や、112万都市の「西の玄関」にふさわしいターミナ ル化などの再整備構想を合同で検討中。アストラムラインのルート沿いも「緑のシンボル通り」に位置付け、マンションや店舗を誘導する案を描いている。


▼アストラム延伸代替策も検討 (2007年2月3日『中国新 聞』)
 アストラムラインの延伸計画を再検討している広島市は2日、東西線(JR西広島駅〜広島駅)、南北線(本通〜広島大本部跡地付近)の新規2路線につい て、既存の公共交通機関による代替も検討する方針を市議会本会議で示した。新交通体系整備の基本計画では、西風新都線(広域公園前〜JR西広島駅)を含む 3路線に計3,000億円を投じ、延伸する内容だった。ただ、西風新都線もいまだ着手していない。

▼西広島駅周辺を先行整備へ (2008年4月2日『中国新聞』)
 アストラムライン延伸事業の遅延を受け、広島市は、JR西広島駅(西区)周辺を先行整備する検討に入る。将来的なアストラムラインの乗り入れに支障のな い範囲で、バス、タクシーが発着できる駅前広場の新設を盛り込んだ構想を本年度中にまとめる。JR西広島駅の1日の利用者数は約1万8,000人。約 100メートル南には路面電車駅があり、路線バスやタクシーが発着する南口駅前広場は朝夕、人と車で混雑する。駅構内も階段しかなく、バリアフリー化され ていない。
 市は1999年、アストラム西風新都線(広域公園前〜JR西広島駅)の2015年延伸完成に合わせ、駅周辺整備を進める計画を提示した。その後、03年 度に市は財政非常事態を宣言。約700億円を見込む延伸事業は今も着手の見通しが立たないことから、駅周辺の先行整備の手法を探る方針に転じた。

▼南北自由通路 建設へ前進 (2011年8月17日『中国新 聞』)
 広島市は本年度、JR西広島駅(西区)周辺整備で、駅の南北を結ぶ自由通路の建設を都市計画決定する。駅南口・北口広場の整備と併せて事業着手する。市 の財政難から約8年間凍結されていた計画が動きだす。
 市が建設する自由通路は線路を高架でまたぎ南口と北口を結ぶ約50メートル。改札を通らず駅南北を行き来できる。JR西日本は新しい駅舎を建設。ホーム と自由通路を結ぶエレベーターを設けるなどバリアフリー化も進める。
 駅前広場整備で南口はバス停とタクシーなどの乗降場の位置を変更。バス停を駅舎そばに移し、屋根を設けて乗り換えの利便性を高める。北口はバス停の一部 を南口から移す。
 完成時期や総事業費は未定。市は来年度、基本設計を進め詳細を詰める。自由通路と広場の整備は市が、新駅舎建設はJRが担当する。JRの負担は市から駅 舎移動に伴う補償費が入るため軽減される。市は来年2月の都市計画決定を目指す。

自由通路の建設が計画されているJR西広島駅の周辺。駅舎の手前が南口広場

▼アストラム延伸求め看板設置 (2009年12月28日『中国新 聞』)
 アストラムラインの五日市駅(広島市佐伯区)までの延伸を目指す五日市商工会の「アストラムライン研究小委員会」は、延伸を訴える看板やバナーを五日市 駅周辺などに設置した。広島市が2020年夏季五輪誘致に乗り出したのを機に「オリンピックの実現には環状線化が必要」と訴えて、機運を高める。
 看板やバナーには、黄色の背景に赤い字で「アストラムラインを佐伯区へ!!」と書かれている。JRと広電の同駅周辺に、縦1.8メートル、横35センチ の看板を12カ所に、石内バイパス沿いには縦1.2メートル、横4.5メートルの看板を3カ所にそれぞれ設置。コイン通り沿いの街灯には、長さ1.8メー トルのバナー90枚を取り付けた。
 委員会は石内バイパス沿いの利便性の向上や商店街の活性化などを目指し、2008年9月に発足した。「オリンピックという夢の実現には、軌道系交通網の 整備が必要」として、09年11月には秋葉忠利市長にアストラム延伸を陳情している。

▼広島市:新交通システム「アストラムライン」延伸、見直し  (2011年6月29日『毎日新聞』)
▽伸びぬ利用者…経営難で
 広島市の高井巌・道路交通局長は28日の市議会建設委員会で、新交通システム「アストラムライン」の延伸計画について、見直しを含めて検討に入る方針を 明らかにした。1994年に市の第三セクター・広島高速交通の路線として開業したアストラムラインは、秋葉忠利・前市長時代の99年に延伸計画を発表した が、財政難などを理由に事実上、計画は凍結されていた。市側が計画見直しを公に言及したのは初めて。【寺岡俊】

 高井局長は「(広島高速交通の)経営状況や資金計画が市の財政に与える影響は大きい。延伸計画のあり方も含め、市の交通施策の視点から検討をしたい」と 答弁した。
  アストラムラインは現在、本通(中区)〜広域公園前(安佐南区)の全長18.4キロ。99年に発表された延伸計画では、総事業費約3,000億円をかけて 30年ごろまでに、西風新都線(広域公園前〜JR西広島、約6.2キロ)▽東西線(西広島〜JR広島駅、約5.4キロ)▽南北線(本通〜広大跡地付近、約 1.4キロ)の計約13キロを環状線として段階的に整備する計画だった。

 しかし、開業初年度の利用者数が4万3,575人で、想定の6万9,116人を下回った。01年度に西風新都と都心部を結ぶ広島高速4号が開通し、バス 路線 との競合などで利用者数は伸び悩んだ。
 同社は03年3月、10年間の経営健全化計画を策定したが、利用者数は現在でも5万人程度。さらに昨年度末で、借入金は347億円に上り、今後は車両や 施設の更新などに約200億円を見込む。こうした状況を受け、13〜22年度の経営健全化計画を策定する予定で、それに合わせて延伸計画を再検討すること になった。

▼アストラム更新費用200億円 (2011年6月29日『中国新 聞』)
 広島市は28日、1994年に開業したアストラムラインの車両や機器の更新に約200億円かかることを市議会建設委員会で報告した。市はまた、99年に 策定した己斐地区(西区)など3路線の延伸計画の事業費や需要予測を本年度中に見直し、事業化が可能かどうか検証に着手する。

 運行主体の第三セクター広島高速交通(安佐南区)が次期経営健全化計画(2013〜22年度)を作成するため、更新費用をはじき出した。

 内訳は、20〜30年で更新となる車両144両の経費が約170億円と試算。中央制御システムの改修は約30億円。車両の更新は早ければ、数年後から着 手する必要がある。システムは、14年春に予定するJR山陽線に接続する白島新駅の開業に合わせて更新する。市はどちらも費用の3分の1程度を国からの補 助金を見込んでいる。

 巨額の更新費用に対処するため、高速交通は、来年春に素案をまとめる次期経営健全化計画の中で、経営のスリム化や利用者数の増加策を盛り込む。

 一方、延伸計画のうち第1期整備に位置付ける己斐への延伸は、事業費約700億円で1日平均乗客数を約2万人と見込んできた。事業費や需要予測の見直し では、計画時より地価が下落したため買収に要する事業費を減額。沿線の人口の増減を調査し、需要予測を再設定する。また、白島新駅の設置に伴う増収が財源 に充てられるかどうかも精査する。

 市中心部を地下鉄で通す残る2路線の事業化は己斐への延伸が前提となる。

 市は来年度以降、路面電車やバスを含めた市の交通体系の中で、事業費などの見直しを踏まえて3路線の延伸計画の実現可能性を議論する。道路交通局の高井 巌局長は「まずは10年以上前にできた延伸計画の事業費や需要予測の見直しを急ぎたい。延伸計画をどうするかは次のステップだ」と説明している。


▼アストラム延伸、路線見直し (2012 年6月22日『中国新聞』

 広島市は、財政難で凍結しているアストラムライン延伸計画3路線のうち、西風新都線(広域公園前〜JR西広島、6.2キロ)の予定ルートを見直す方針を 固めた。沿線の大規模開発エリア「ひろしま西風新都」(安佐南区、佐伯区)で大型商業施設を備えた複合団地の開発計画が動き始めたのを受け、延伸実現に向 けて乗客増につながる新ルートを探る。

 西風新都線は、停滞する西風新都開発の起爆剤として、昨年4月に就任した松井一実市長が事業化に意欲を示している。西風新都線の予定ルートは市が 1999年に設定。現在の終点の広域公園前駅(安佐南区)とJR西広島駅(西区)を結ぶ。事業費は当時の試算で約700億円。1日平均2万人の利用を見込 む。

 予定ルートは西風新都南端の石内東地区をかすめる。ここに広島電鉄(中区)が2007年、約82ヘクタールの複合団地を造る方針を表明した。現在、15 年の完成を目指して市に開発許可を申請中。2600人規模の団地となる計画で、流通大手イオン(千葉市)が大型商業施設の出店を検討する。大型商業施設は広島都市圏で最大級になる見通しだ。

 市はアストラムライン延伸計画について来年度中に事業化の可否を判断する予定で、判断材料を示すための検証作業を進めている。その中で「団地や商業施設 を通って予定ルートより乗客増が見込める新たなルートを検討する」としている。

▼「大型団地付近に新駅を」 (2013 年2月27日『中国新聞』

 広島市がルートの見直しを検討するアストラムライン延伸計画の西風新都線について、大規模団地がある西区山田町、山田新町、佐伯区美鈴が丘地区の住民で つくる3地区連絡協議会は26日、3地区に近い場所に新駅を設けるよう市に要望した。

 協議会の中本雅策議長(72)たち9人が市役所を訪ね、荒本徹哉副市長に要望書と1万1573人分の署名を提出した。

 3地区には山田団地と美鈴が丘団地、梅の木団地が広がる。中本議長は「傾斜地に造成された地域で高齢化が進んでいる。生活の利便性を高めてほしい」と強 調。住民が西風新都線を利用できるよう、山田団地の入り口付近に新駅を設ける案を提案した。

 荒本副市長は「団地のにぎわいがなくなる中で交通問題は重要な課題。利便性とコストを考えながらルートを検討する」と答えた。

 西風新都線は、広域公園前駅(安佐南区)からJR西広島駅(西区)まで延伸する計画。市は財政難のため凍結している。広島電鉄(中区)が石内東地区(佐 伯区)で大型商業施設を備えた複合団地を造成していることも踏まえ、同地区を経由する延伸ルートが可能かどうかを検証している。


▼アストラム延伸は軌道急勾配 (2013 年6月22日『中国新聞』

 広島市は、アストラムライン延伸計画の検討状況を21日の市議会定例会の一般質問で説明した。広域公園前駅(安佐南区)からの延伸構想ではJR西広島駅 (西区)に延ばす西風新都線など3案とも途中に尾根などがあり、ポイントは軌道の勾配。向井隆一道路交通局長は車両メーカーに技術的な問い合わせをしてい ることを明らかにした。

 広域公園前駅から延ばす先はJR西広島駅を軸に商工センター(西区)、五日市(佐伯区)が候補となっている。道路交通局によると、いずれも直線的なルー トにすると勾配が急になり、蛇行すればその分だけ距離が延びて事業費は膨らむという。向井局長は答弁で「急勾配を採用できるかは、ルート選定や事業費に大きな影響を及ぼす」と 述べた。

 道路交通局によると、現行のアストラムラインでは伴〜長楽寺間(安佐南区)など2カ所の勾配4.5%(100メートル進むと4.5メートル上下する)が 最もきつい。全国の新交通システムでは埼玉県内に5.9%の例がある。広島市は、これよりきつい勾配を上るパワーやブレーキ性能が可能か、車両メーカーの 意見を聴いている。

 向井局長は「できる限り早い時期に基本方針を決定したいが、安全性の面から慎重な検討が必要」と述べた。


【参考文献】
佐藤 信之「広島市の高速鉄道網計画と路面電車の整備」『鉄道ジャーナル』第33巻第11号、1999年、所収


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