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広島 電鉄
本 社所在地
広島市中 区東千田町二丁目9番29号
設 立
1942 (昭和17)年4月10日
資 本金
23億 3,562万5千円
公 式Webサイト
http://www.hiroden.co.jp/
目  次
1.広島電鉄の概況
2.広島電鉄のLRT化に向けた様々な取り組み
 @電停の改良
 Aグリーンムー バーなどの新型低床車両の導入
 B優先信号や軌 道緑化などの走行性の改良
 C新線建設や路 線再編への動き
3.広島電鉄とJR山陽本線の競合関係について
4.乗車記録

紙屋町東〜本通を走るグリーンムーバーマックス 2011.12

広電五日市駅を発車した宮島口行きグリーンムーバー 2011.12

1.広 島電鉄の概況  

 広島電鉄は軌道線の営業キロ19.0km、鉄道線は同16.1kmの計35.1kmを擁し、鉄道線は全て軌道線に乗り入れ一体的な運行を行っている。 1日当たりの利用者数は軌道線が110.1千人(2008年度実績)、鉄道線が49.8千人(同)で計約16万人に達する。1〜9系統(4系統は無し) に及ぶ運行形態を含め、紛れ も無く我が国最大規模の路面電車であり、広島都市圏を支える重要なインフラとして今なお発展を続けている。

 広島電鉄では多くの連接車両のLRVが走り、郊外の鉄道線と都心部の軌道線を直通運転をしているという点で、LRTと呼んでも差支えないと思えるのだ が、 その一方で路面電車の域を脱しない貧弱なインフラも残っており、抱える課題も少なくはない。
 それは広島駅電停から都心部の八丁堀や紙屋町までの距離を乗車しただけで感じられることです。広島駅を出発するといきなり狭い道路となりノロノロと走り 出す。電停が多いだけでなく、出発したかと思いきや赤信号に引っ掛かり停車することもしばしば。電車の脇をバスや自家用車がどんどん追い抜いていく。更に 都心部の電 停では乗降客が多く、降車の際に運賃を払う必要があるため停車時間は長くなりがち。八丁堀や紙屋町は広島駅からは1.5〜2.0km程度の距離なのだ が、広島電鉄に乗ると10〜15分程度はかかってしまう。もし地下鉄など都市高速鉄道ならば1駅分、3分程度の距離だろう。路面電車の場合は単にスピード が 遅いだけな く、信号待ち等を含めて停まっている時間が多いため、余計にまどろっこしく感じてしまう。路面電車にとっての最大の弱点はまさにこの点だと個人的には 思っているのだ。いくら地下鉄よりも高頻度な運転をして、乗り降りも地平のため楽とは言っても、体感的な速度感に乏しいのでは現代の大都市の交通機関と しては力不足と見られてしまうであろう。よりスムーズな運行が可能になることでLRTへと本当の意味で脱 皮 したと広島電鉄の利用者には実感されると思われるのだ。広島電鉄サイドでも広島駅〜都心部のスピードアップの重要性は認識していて、特に広島駅〜稲荷町の 区間 は最優先で取り組むとして、線路の付け替えによる短絡化を計画しているところだが、大いに期待したいところである。

 広島市は人口117万4千人(2010年10月現在)を数える大都市であり、我が国で路面電車が都市内の基幹交通として利用されている都市の中では圧倒 的に 大きな都市である。それは利用者が路面電車で運ぶには多すぎる水準でもあるとさえ感じるほどだ。そのため、ある意味路面電車の限界というものを感じてしまうのが広島電鉄の特徴の1つ であるような気がする。それだけにそのような限界を超え、より高度なLRT化を目指す必要があるのだと思う。
 そのような広島電鉄の現状と課題を地元紙「中国新聞」の社説が簡潔に纏めている。
▼次世代の路面電車網 日本一に磨き掛けよう (2009年11月 2日『中国新聞』 社説)

 住んでいると、ことさら意識しないが、広島は日本一の路面電車の街である。
 半径2.5キロのデルタはちょうどいいサイズ。1971年に軌道敷内への車乗り入れを禁止し、路線が守られた。年間4千万人という乗客数、134両とい う車両の数は全国で抜きんでている。
 その広島市で先週末、次世代型の路面電車(LRT)とまちづくりをテーマに市長たちが語り合う初の都市サミットがあった。次世代型は、人に優しい低床車 両で、しかも快速。都市空間を彩るおしゃれなイメージもある。
 11都市からの報告は刺激的だった。富山市長は市民と議論し、じり貧のJR線をLRT路線によみがえらせた。軌道敷を芝生化する鹿児島市では、緑の帯が うるおいのアクセントになっている。
 車で目的地へ一直線ではなく、路面電車で出かけて街歩きを楽しむ。そんな公共交通への乗り換えは環境負荷を減らす。高齢化が進むにつれ、歩いて暮らせる コンパクトなまちづくりが求められるようにもなってきた。
 市長たちの発言は、LRT化に追い風が吹いていることを実感させる。国の補助制度も手厚くなった。他都市にも学びながら、路面電車の高度化を加速させた い。
 広島でのLRT化は、 既にかなり進んでいる
 まず車両。広島電鉄は、乗り降りが楽でデザインも斬新な超低床車を10年前から入れている。今は連結車両の3割強の22両に。次は短い車両への導入が待 たれる。
 スピードアップは途上にある。運行時間の3割が信号待ちで、 5カ所の優先信号をさらに増やす必要がある。素早く運賃を払えるIC カード「パスピー」への切り替えも進む。それを機にすべての出口から降りられるようにすれば、停車時間はもっと短くなる。
 右左折を減らす新路線の整備は、10年来の課題である。
 最優先は駅前大橋線。電車の重みに耐える橋の架け替えは済 んでいる。5分の短縮が見込まれ、駅前広場のレイアウト変更 などを市と広電が研究中だ。平和大通り線は、1期を整備すれば4分程度は 短縮するという。ただ、途中の橋を架け替えなければならない。
 市は99年に公共交通のマスタープランをまとめた。これらの新路線も盛り込んでいるが、動きは止まったままだ。
 マスタープランには、アストラムラインを西広島まで700億円かけて延伸する計画もある。こちらも事業化のめどは立たない。今の終点と中心部を結ぶ高速 4号線ができ、採算的にも厳しそうだ。
 財政難の折、市に二兎(にと)を追う余裕はなかろう。そろそろアストラム 延伸は断念し、LRT整備にしぼり込む時期ではないか。
 利便性をアップさせる。市民を巻き込み、なるべく車に頼らず歩いて楽しいまちづくりを進めていく。「路面電車都市」を宣言し、日本一にさらに磨きを掛け てはどうだろうか。サミット参加都市はよきライバルでもある。


紙屋町西電停 2011.12

立町電停 2011.12

 広島電鉄の「グリーンムーバー」と「グリーンムーバーマックス」は全長30mというその車体から分かる通り相当な輸送能力を持っている。まさに大都市 「広 島」の幹線を担う貫禄充分だ。日本では一般的に路面電車は地下鉄やモノレール、新交通システムなどと比べて輸送能力が劣るというイメージを抱きがちだ が、広島電鉄のこれらの車両を見ればそのような見方は覆されることだろう。

▼魅惑のLRT 広島電鉄「グリーンムーバーマックス」
(2011 年8月14日『産経新聞』)
 洗練されたデザインの5両編成の超低床車両(LRV)が、始発駅の広島駅から軌道上を滑るように走り出す。従来形の路面電車 に比べ、騒音 や車体の揺れは少ない。日本の路面電車の中でも最長級の全長30メートルながらカーブもなめらかに曲がり、広島市の市街地を走り抜けていく。
 グリーンムーバーマックスは、広島電鉄のLRVの2代目として平成17年3月に導入された。初代の「グリーンムーバー」がドイツ・シーメンス社製だった のに対し、グリーンムーバーマックスは国産車両。四隅が丸みを帯びた大きな窓のある運転席は広い視界を持つ。白を基調とした車体の側面には広島電鉄のコー ポレートカラーの緑色の帯が走る。
 現在、グリーンムーバーマックスは広島電鉄の8系統の軌道・鉄道のうち1・2号線で10編成が運行されている。
 広島市中心部には、平均約300メートルの短い間隔で電停が設けられ、グリーンムーバーマックスが停車するたびに、サラリーマンや買い物客、学生らが乗 降する。車高は入り口部で33センチ、車内中央部でも36センチと低く設計されている。電停がかさ上げされ段差がないため高齢者や車いす利用者にも乗り降 りしやすくなっている。
 車内には車いすやベビーカーを置くスペースも設けら れ、バリアフリーへの配慮が行き 届いている。
 また、乗客の要望を取り入れ、初代のグリーンムーバーよりも座席数を増やし、通路幅も広くとってあるため車内移動も容易だ。
 広島電鉄は従来形の路面電車の老朽化に伴い、LRVに順次、入れ替える計画を持っているが、そこには大きな壁が立ちはだかる。電車輸送企画グループの井 手ヶ原誠・マネジャーは「LRVは環境にやさしく、バリアフリーでサービス向上を図れるが、従来形の路面電車よりも車両価格が約1億円も高いため、行政の 支援がなければ導入には大きな困難が伴う」と話す。
 「路面電車王国」といわれ、21年には初の「LRT都市サミット」も開催された超低床車両の先進地・広島市。近年、地域公共交通への公的支援の枠組みが 拡大しているとはいえ、LRVを中心としたLRTの普及には高いハードルが待ち受ける。

広島市内を駆けるグリーンムーバーマックス(2011年8月14日『産経新聞』より)

▼広島電鉄の乗客1.4%増 上半期 不景気で車控え? (2011 年11月8日『朝日新聞』

 広島電鉄は7日、今年度上半期(4〜9月)の電車の乗客数が前年同期に比べ1.4%増えたと発表した。ここ数年は減少傾向にあったが、4〜9月としては 3年ぶりに前年を上回った。椋田(むくだ)昌夫専務は「景気低迷が長引き、マイカーやタクシーの利用を控えているのでは」とみている。
 今年4〜9月の乗客数は2810万人。前年同期の2770万人から約40万人増えた。3月以降、東日本大震災の影響で買い物客や観光客が減り、乗客数は 前年同月を下回っていたが、7月以降に好転した。越智秀信社長は「10月以降の乗客数も好調。しばらく持続しそうだ」と話した。
 同社がこの日発表した9月中間決算は、売上高が前年同期比6.1%増の180億円、純利益は約4.3倍の9億円で、中間決算では過去最高益となった。売 上高のうち、電車の運賃収入は1.2%増の29億円だった。(諏訪和仁)


2. 広島電鉄のLRT化に向けた様々 な取り組み  

 広島電鉄は近年、@電停の改良、Aグリーンムーバーなどの新型低床車両の導入、B優先信号や軌道緑化などの走行性の改良、C新線建設や路線再編への動 き、といった 様々なトピックスがある。それらを分野ごとに纏めてみた。

@電停の改良  
▼広電西広島(己斐)電停の改良 (広島電鉄Webより)
 (共に広島電鉄Webサ イトより)
 2001年11月1日リニューアル。広電西広島は鉄道と軌道が接続する電停で、以前は別々のホームで乗降を行ってきたが、軌道側の電停を一部廃止し、鉄 道側のホームに統合した。
 更に、超低床車両グリーンムーバーの導入に伴い、ほぼフラットで乗降できるようにホーム高を25cmから30cmにマウンドアップさせ、点字ブロックの 設置、段差のスロープ化等構内のバリアフリー化を行ったほか、この整備にあわせて、これまでの駅舎にない巨大なドーム型屋根を設置することで、開放感あふ れる空間を演出し、憩いの場の提供、地域のランドマークの創出を図った。

広電西広島 2011.12

広電西広島 2011.12

広電西広島 2011.12

広電西広島 2011.12

▼広電横川電停をJR駅前広場内へ (2001年4月28日『中国 新聞』)

 JR横川駅(広島市西区)前の広島電鉄の電停を国道上から駅前広場内に移設する計画が、27日までに中国地方整備局、広島市、JR西日本の間でほぼまと まった。本年度中に着工し、2003年春に完成の予定。広電は新たに紙屋町方面へ「都心線」を運行する。国土交通省が昨年度に創設した交通結節点改善事業の全国初の例となり、横川駅の交通結節点としての機 能がアップする。
 計画によると、駅前広場の全面改修に伴い、国道54号上にある電停を、駅前広場内の東側に移す。電停から駅までの距離は現在の100メートルから40 メートルに短縮され、連絡路には屋根を付ける。電停ホームは2本増えて3本と し、長さも現在の1.5倍の31メートルとする。
 広電によると、横川電停の一日の乗降客は約2,700人。 現在、横川〜江波間の電車しか運行していないが、電停の移設と同時に紙屋町方面への「都心線」を運行し、4両編成の低床車両を導入する。横川駅から都心へ の流れがスムーズになるため、可部線や山陽線の乗客増も期待される。
 また、広場入り口の変則交差点は、十字路に改良し渋滞の解消を図るほか、バス乗り場、駐車場、駐輪場も整備。広場西側のスーパーも建て替えを計画してお り、駅前の装いは一新される。
 総事業費は約12億8千万円。本年度は設計、工事費として、整備局と市が計1億1千万円を負担する。
 電停移設はこれまでにも検討されたが、商店街の一部の反対などで実現しなかった。アストラムラインの開通後、同駅前のバス利用者が大幅に減ったため、地 元は駅前活性化策を検討。99年に移設同意でまとまった。
 横川商店街振興組合の松木朝海理事長は「地元も一緒になって、人が訪れやすい町づくりを進めたい。都心線への期待も大きい」と話している。
写真説明】現在は国道54号の路上にある路面電 車の横川電停    (共に『中国新聞』より)
▼JR横川駅前に新電停完成  (2003年3月28日『中国新 聞』)

 国土交通省や広島市などが進めている西区のJR横川駅前リニューアルで、広場に移設していた路面電車の新しい電停が27日完成し、広島電鉄の路面電車の 駅前広場への乗り入れが始まった。
 新電停は長さ約30メートルのホームを緑色の大きな屋根で覆った。超低床車両に対応し、スロープも設けた。来春には、JRの駅舎建て替えに伴い、JRの改札口と広電の電停が屋根続きになる。
 これまでJRの駅舎から約140メートル離れた国道54号の路上にあった電停の移設で、JR山陽線と可部線も交わる横川駅の利便性アップが期待される。 広電は4月中にも紙屋町方面へ直行する「都心便」(仮称)を運行す る。

▽交通の要衝復活へ第一歩
 広島市西区のJR横川駅前広場に、広島電鉄路面電車の乗り入れが始まった27日、記念イベントに集まった地元住民や利用者からは、かつての交通の要衝の 「復権」を期待する声が飛び交った。
 イベントを主催した横川商店街振興組合の副理事長は「感無量。横川がターミナルとして復活する第一歩になる」と力を込めた。
 横川は初の国産バスが走った場所であり、JR可部線と山陽線が交わる。かつては県北への玄関口として賑わった。市民からは「広島の副都心を目指せ」とい うエールも上がった。
 路面電車は始発から広場へ乗り入れた。JRから乗り換えて、中区の会社に通う廿日市市の会社員は「国道を渡らなくていいので、安全で楽になった」と喜 ぶ。
 中区紙屋町方面と直結する「都心便」(仮称)も近く運行する。商店街振興組合の理事長は「横川に立ち寄ってもらうため、町の魅力をもっと磨きたい」と気 を引き締めていた。
改良前(広島電鉄Webより)  改良後(広島電鉄Webより)
▼JR横川駅リニューアル 東へ50m移転 (2003年8月23 日『中国新聞』)

■広電と「連結」
 広島市西区、JR横川駅南口の新駅舎が移転・新築され、23日の始発から利用が始まった。午前中、関係者が完成式典を開いてリニューアルを祝った。
 新駅舎は、1949年から利用していた旧駅舎の東50メートルに新築。鉄筋平屋約82平方メートルで、改札口3カ所は、国道54号から駅前広場内に移っ た広島電鉄の電停真正面に設けられ、乗り継ぎが便利になっ た。総事業費は1億円。
 国や市などが進める駅前広場整備工事は昨秋にスタート。来春までに駅ビルや駐輪場を建設して完了する。
広電の横川駅電停から横川駅改札口を望む 2011.12

横川駅電停 2011.12

横川駅電停 2011.12

 横川電停の改良と都心便(7系統) 新設がバスのサービスアップに繋がった事例。
▼バス運賃、競争時代に 広島 (2003年4月18日『中国新 聞』)

 同じ区間で「190円」対「150円」という違う運賃体系が、広島市中心部のバス路線に登場する。西区のJR横川駅と市中心部を結ぶルート。広島電鉄が 横川と中心部を結ぶ路面電車を復活させるため、乗客を奪われるとみた中国ジェイアールバスが、路面電車と同じ150円まで40円値下げする。一方、競合す る3社は同調せず、広島のバス業界は本格的な運賃競争の時代に突入する。
 路線バス事業では昨年2月の改正道路運送法施行に伴い、運賃が原則、自由化された。中国運輸局は「本格的な異種運賃は中国地方で初めて。全国でも珍しい ケース」としている。
 現在、横川駅〜中区の紙屋町・八丁堀界隈へのバスは、4社が運行し運賃はいずれも190円。横川駅そばのバス停経由も含め、1日約1,560便が走って いる。
 ジェイアールバスは81便を運行し、うち30便が横川〜広島バスセンターのピストン輸送体制をとる。同社は、20日に運行を始める路面電車の都心便の直 撃を懸念し、「運賃差から路面電車に乗客が流れる可能性は高い」と値下げに踏み切った。
 これに対し1日900便を持つ広島交通、350便の広島電鉄のバス部門、230便の広島バスは値下げが減収につながる恐れもあり、静観の構え。広島バス などは「路面電車もからみ、乗客の流れがどうなるか、見極める」としている。
 規制緩和を受けた運賃値下げは昨年4月、市北部と中心部を結ぶ路線での最大30%や、広島駅〜本通・広島市民球場界隈までの一律150円化の本格実 施などがあったが、結果的に各社が足並みをそろえた。今回の異なる運賃の登場は、中国地方での規制時代の運賃体系崩壊の始まりとなる。

▼広島港(宇品)電停の改良 (広島電鉄Webより)
 (共に広島電鉄Webサ イトより)
 2003年3月29日リニューアル。広島港宇品旅客ターミナルが以前の広島港電停より約250m離れた位置に建設されるのにあわせて、電停施設を終端部 の新旅客ターミナル前に移設する等、広島県の港湾事業に協力し、海上・陸上の交通結節点としての整備を行った。新旅客ターミナルの前に電停を移設すること で、旅客船との乗り継ぎ利便性を向上した。
 また、横川駅電停と同様、広電西広島駅の整備方法を採り入れて、新旅客ターミナルと広島港電停を大屋根でつなぐ一体的な整備を行い、これにより電停が開 放感あふれる空間となり、賑わいと憩いの場を創出するとともに、乗り換え抵抗の軽減を図った。

▼平良駅 バリアフリー発車 廿日市市も負担金 (2004年9月15日『中国新聞』)

■広電ホームとバス停一体

 広島電鉄と中国運輸局、廿日市市が計画していた同市新宮、広電宮島線平良駅のバリアフリー計画がまとまった。電車のホームとバス停を段差なしで移動でき る全国でも例のない方式で、2006年春の完成を見込む。市は14日に開会した市議会定例会に、本年度の負担金500万円を盛り込んだ補正予算案を提案し た。
 計画によると宮島口方面の下り線ホームを、約80メートル西寄りに移設。新ホームと駅前バス停は上屋を共有して、改札もなく移動時の段差はゼロとなる。 線路を挟んだ上りホームとも、スロープ付き通路で結ぶ。
 2年がかりの事業費は4千万円。広電が60%、国と市が20%ずつ出す。国土交通省の規定で第三セクターへの補助が条件となるため事業主体は広島市出資 の三セク・広島バスセンターとなる。
 市議会議決が得られれば詳しい設計などに入る。同駅は新宮地区再開発の玄関口に位置付けられており、市の巡回バス「さくらバス」のほか、広電バスの一部 も路線を再編して止まることを検討中。中国運輸局鉄道部は「全国的なモデルケースにしたい」と説明している。
 (共に広島電鉄Webよ り)
▼広島電鉄、路面電車とバス停留所を一体化 (2006年6月1日 『日本経済新聞〈中国〉』)
 広島電鉄は運営する路面電車の駅とバス停留所を一体化した新型ホームを広島県廿日市市で2日から稼働するなど路面電車とバスのシームレス化を推進する。 広島市内は中心部と郊外の公共交通アクセス改善が課題となっている。路面電車と路線バスの乗り換えをスムーズにして利便性を向上し、乗客増につなげる。
 一体化するのは広島市内と宮島口(廿日市市)を結ぶ宮島線の廿日市市役所前駅(旧平良駅)で、市が駅前に新設したバスロータリーまで下り線ホームを約 50メートル移設した。上り線ホームと行き来できる踏切付きスロープも新たに設置し、2日から本格稼働する。
 バス停と一体にしたホームを4,000万円を投じて新設し、路面電車を降りると住宅街などに向かう路線バスにすぐに乗り換えられるようにした。これまで 利用者は200〜300メートル離れた国道沿いのバス停まで歩く必要があった。
 宮島線では広電阿品駅(同市)についても今年度中に路線バスのバス停と一体化する改修工事を実施する計画。

▼私鉄駅移動など宮島口整備案 (2010年12月11日『中国新 聞』)
 廿日市市は10日、世界遺産の島・宮島への玄関である宮島口について、広島電鉄宮島口駅を現在より海寄りに移し、JR山陽線北に周辺駐車場へのアクセス 道を建設することを柱とした整備案を公表した。3月に策定した港湾整備計画を基に固めた。整備案を受け、広島県は本年度中に宮島口を港湾指定する見通し だ。
 現在、国道2号から桟橋前ロータリーや周辺駐車場へ延びる道路は広電宮島線の軌道と交差する。市は踏切が観光シーズンの混雑の一因になると判断。駅舎を 海寄りに移し、道路を一部付け替えて交差を解消する。
 一方、市は駐車場不足解消のため宮島競艇駐車場の活用を検討。国道2号から競艇駐車場や周辺の民間駐車場への進入を容易にするため、JR宮島口駅北と市 道宮島口対厳山線を結ぶ新たな市道を整備する。JR宮島口駅から桟橋前に延びる県道厳島公園線を宮島への参道と位置付け、景観形成を図る。
 宮島口は年間300万人を超す来島者が利用するが港湾指定を受けていない。桟橋はJR西日本宮島フェリーと宮島松大汽船がそれぞれ所有。護岸の老朽化も 目立つ。このため市は県の港湾指定を目指し2008年、「宮島口みなとづくり推進協議会」を設置。今年3月、旅客ターミナル建設などを盛り込んだ整備計画 をまとめた。
広電宮島口駅(『中国新聞』より)

(『中国新聞』より)

▼広電が電停表示 より詳しく (2007年1月10日『中国新 聞』)
 広島電鉄(広島市中区)は、路面電車の広島駅〜西広島駅間の主な電停に、次に来る電車の行き先をこれまでよりも詳しく表示し、あと何分で到着するかなど も知らせる新たな電光表示板を導入する。乗客の利便性向上が目的で、6月から12月にかけて切り替えていく予定。海外からの観光客にも分かるように行き先 などをローマ字でも表示するほか、台風時の運行見合わせや終電発車後の営業終了も伝える。
土橋電停にて 2011.12
▼電車到着時刻 宮島線も表示 (2012 年10月23日『中国新聞』

 広島電鉄(広島市中区)は来年2月から宮島線の駅に、電車の到着時刻が分かる発光ダイオード(LED)を使った案内表示器を導入する。5カ年計画で計 20駅に取り付ける。

 既に市内線の主要9電停に設置しているタイプを導入する。行き先別に、電車が到着するまでの時間を「まもなく」、5、7、9分などと表示する。英語表示 もある。従来は、細かな時間表示はなかった。

 車両がバリアフリー対応かどうかも知らせる。運休や遅れの情報も表示できる。
 本年度は来年2、3月に広電五日市、楽々園、廿日市市役所前など6カ所の上下線ホームに設置する予定。16年度末までに、既にある広電西広島などを除く 20駅に整備する。

 総事業費は3億4500万円を見込む。一部、廿日市市と国の補助金を活用する。

広島市中区の電停にあるLEDを使った案内表示器。
宮島線にも導入する(
『中国新聞』より)

▼本通電停15年ぶり改修へ (2012年8月10日『中国新 聞』)
 広島電鉄(広島市中区)は、中区の繁華街にある路面電車の本通電停を、15年ぶりに改修する。1日8千人が利用し混雑することもあるため、幅と長さを拡 大する。9月に着工、来年2月上旬の完成を目指す。

 上下線の電停を改修。ホームの長さは31.9メートルから37.5メートルに延ばし、幅も1.3メートルから1.6メートルに広げる。屋根は現在の 2.5倍の36メートルに延長し、ホームのほぼ全体を覆う。さらに、電停へのスロープをより緩やかにし、壁面はガラス張りにする。総事業費は8100万 円。

 本通電停には平日は上下線に各293本の電車が停車。電車を待つ人が、ホーム上からはみ出ることもある。同社は「乗客の安全を確保し、ベビーカーや車い すでも利用しやすくする。他の電停も順次、改装を進めたい」としている。
買い物客たちの利用が多い本通電停 (『中国新聞』より)

(『中国新聞』より)

▼廿日市駅南のロータリー完成 (2013 年8月12日『中国新聞』
広電廿日市駅南側にできたロータリーと市道(奥) (『中国新聞』より)

 廿日市市東部の玄関口となるJR廿日市駅周辺の再開発で、広電廿日市駅南側の市道やロータリーが完成し、今月から供用を始めた。駐輪場の台数が増え、秋 にはコミュニティーバスのバス停を設置する。

 市道は延長178メートル、幅6メートルで、JR廿日市駅と国道2号をつなぐ駅通り商店街の県道と、広島県が整備中の道路をつなぐ。広電宮島線沿いに幅 3メートルの歩道も設ける。ロータリー周辺には公衆トイレやベンチ2基などを備える。約500平方メートルのロータリーも含めた総事業費は約5億円。市が 2008年度から整備を進めていた。

 ロータリーには、廿日市地域で運行するコミュニティーバス「廿日市さくらバス」のバス停を秋にも設置する。鉄骨平屋約25平方メートルの待合所も近く利 用開始を予定しており、外壁や内装に市内産のスギを用いた。整備に伴い、駅南側にあった約180台分の駐輪場は、市が線路の南北3カ所に移設し、約40台 増の計219台分とした。無料で利用できる。

 一帯は、市がJR駅北側の区画整理事業で16.2ヘクタールを造成中。南口駅前広場とをつなぐ自由通路を16年3月末までに完成する計画。市施設整備課 は「より便利になり、にぎわいづくりにつながるよう、整備を続ける」としている。



Aグリーンムーバーなどの新型低床 車両の導入  
▼広島県が超低床電車支援 広電導入で補助金 (2005年2月5 日『中国新聞』)

▽拠点都市機能強化へ

 広島県は、広島市の拠点都市機能の強化に向け、市内の路面電車への新型の超低床車両の導入を支援する。広島電鉄(広島市中区)に対する補助8千万円を 2005年度当初予算案に盛り込む方針。バリアフリーの推進による都市の魅力度アップを狙い、初めて市内で完結する路線を対象に補助する。
 県が補助金を出すのは、同社が3月以降に広島駅〜広島港(紙屋町経由)など市内での運行を予定するグリーンムーバーマックス。国内の鉄道車両メーカー3 社と共同開発した新型車両で、広島駅〜宮島口間を中心に運行している現行のグリーンムーバー(ドイツ製)より、通路幅を広げ、座席数も増やした。
 県は過去、広島市と廿日市市、大野町など複数の市町を結ぶ広島駅〜宮島口間への新型車両導入は支援してきた。
 しかし、県は昨年11月にまとめた分権改革推進プログラムで、将来の道州制移行を提唱。藤田雄山知事は「広島市が州都に最適」との見解を示した。それを 受け、「拠点都市機能の強化」の一環として、市内の路面電車への超低床車両導入を支援することにした。
 広電は9億6千万円で3編成を導入する予定。県など地元が支援することで、国土交通省が拡充した次世代路面電車(LRT)システムの整備に対する補助制 度も活用できる。広島市も支援を検討している。
 県地域振興部は「広島駅と広島港という広島市の玄関口を結ぶ市内の路面電車の高性能化につなげたい」としている。
紙屋町交差点で行き交うグリーンムーバーマックス  2011.12
▼広島電鉄が低床車両導入を4年ぶり再開 (2012 年5月11日『日本経済新聞』

 広島電鉄は約4年ぶりに低床の路面電車車両の導入を再開する。低床車両はこれまで5両編成のみで運行してきたが、小規模の3両編成車両を2編成、 2012年度中に新規投入する。現在、低床車両が走行していない区間を軸に投入する計画。投資負担の少ない小編成車両の投入によりバリアフリー化を進め、 高齢者など利用者の拡大につなげる。
 広電が低床車両を最後に投入したのは08年3月。その後は導入が一巡したことやリーマン・ショックなどもあり投入を控えていた。

 広電が導入を再開するのは低床車両「グリーンムーバーマックス」。国産初となる車軸のない台車を採用したことで、車内の低床化を実現。ホームから段差な く乗降ができる。ロングシートの座席を可能としたことで、座席定員を従来の低床車両よりも10席多い56席としている。客室の通路幅を広げたことで車いす やベビーカーも移動をしやすくしている。広電は三菱重工業や近畿車両、東洋電機製造と共同開発し、05年に導入を開始していた。

 これまでは1編成5両で車両価格は3億円程度だった。今年度導入する新規の2車両は3両に短縮することで、投資規模を6割程度に抑えられる見通し。これ により、来年度以降も安定的に投入できる体制を整える。
 現在、低床車両は1号線(広島駅〜紙屋町東〜広島港)、2号線(広島駅〜広電宮島口)、5号線(広島駅〜比治山下〜広島港)で走行している。新車両は現 在、低床車が走行していない横川駅〜江波、八丁堀〜白島の区間などを念頭に投入する。これら区間では電停のホームの長さが5両編成ではおさまらない場所も あり、3両編成にして低床車両が走行しやすい体制にする。

 現在、広電の車両数は約130編成(1台編成含む)。このうち低床車両は22編成(旧式のグリーンムーバー含む)。既存車両にはホームから車内に入る際 の段差が30センチ近くあるため、高齢者や乳幼児連れ利用者には不便な要素があり、補助の踏み台などを設置することで対応している。
 広電の乗降者数はICカード乗車券「PASPY」の利用者の増加に加え、宮島(廿日市市)などの観光客の増加で拡大傾向にある。
▼広電、100周年へサービス向上−超低床車両10編成導入  (2012年06月25日『日刊工業新聞』)

 【広島】広島電鉄は経営計画「サービス向上計画」をスタートした。11月に電車開業100周年を迎えるのを契機に、4〜10年の中・長期計画で実施す る。電車部門では新型車両の導入やバリアフリー化を進める。

 バスはグループ4社の路線ネットワークを再構築、広島県内で50%のシェアを目指す。不動産では高付加価値住宅や商業施設を提供する。電車、バス事業だ けでも総額50億円を超える投資となる。

 広電は100周年記念として、独・ドルトムント電車をカフェに改装するほか、本社前の電停の屋上に欧州風デザインの採用や、電車型のUSBメモリーなど の記念グッズの販売など多彩な行事を展開する。サービス向上計画もこの一環。車両償却期間の長い電車部門は10年程度の長期計画として取り組む。電車部門 では、約30億円をかけて10編成程度の超低床車両を導入、運行路線を拡大する。
▼広電全線に超低床車両導入へ (2012 年9月11日『中国新聞』

 広島電鉄(広島市中区)は来年1〜2月をめどに、路面電車の白島線と横川駅〜江波間で超低床車両の運行を始める。初めて短い編成の超低床車両を導入し、 運行を全線に広げる。2027年時点で、運転する電車の半数を超低床型にすることを目指す。

 導入するのは、05年から運行している「グリーンムーバーマックス」の長さを短縮したタイプ。現在の5両編成(30メートル)を3両編成(18.6メー トル)にする。定員は86人(座席数33)。ドアは1両目と2両目の2カ所に設ける。車掌なしのワンマンで運転する。

 まず1編成ずつを白島線と横川駅〜江波間に入れる。現在、超低床車両は5両編成のタイプしかなく、乗客数などから両区間は運行していなかった。短編成の 導入により、全路線で超低床車両を運行できるようになる。

 3両編成の価格は2億7千万円。一部、国と広島市の補助金の活用を検討する。三菱重工業三原製作所(三原市)、近畿車両(東大阪市)、東洋電機製造(東 京)で製造する予定。

 超低床型は5両編成も合わせ、今後15年間で40編成の購入を目指す。1両編成の古い車両を中心に更新する。現在、営業運転中の124編成のうち超低床 は22編成。27年には半数に当たる62編成にしたい考え。「高齢化社会に合わせたバリアフリー化で、迅速に予定時刻通りに運行できる体制をつくる」とし ている。

 費用を確保するため来年、市内均一運賃を現行の150円から170〜180円へ上げる検討もしている。

運行中のグリーンムーバーマックス。長さを短くして白島線などに導入する(広島市中区)
(『中国新聞』より)
▼超低床の路面電車お披露目 (2013 年2月15日『中国新聞』

 広島電鉄(広島市中区)は14日、新しい超低床タイプの路面電車の出発式を本社車庫で開いた。従来の超低床型より小さく、15日から白島線と江波線で運 行。これで全線にバリアフリー車両が走る。

 出発式には、中国運輸局の小橋雅明局長たち約70人が出席。椋田昌夫社長は「新しい車両も引き続きかわいがってほしい」とあいさつした。

 全長18.6メートルの3両編成を2台導入する。外観は開業した大正期の電車をイメージして赤紫に塗装した。定員は86人。従来の5両編成の超低床車両 より11.4メートル短い。横川駅〜広電本社前と横川駅〜江波で毎日各10往復、江波〜白島間は4往復する。

出発式を終えて千田車庫を出る新型車両 (『中国新聞』より)

 車両の更新には原資が必要ということか。
▼広電が路面電車値上げ検討  (2012 年8月24日『中国新聞』

 広島電鉄(広島市中区)が来年に、路面電車の運賃の値上げを検討していることが23日、分かった。市内路線は150円から20〜30円上げる方向。老朽 車両の更新費用に充てる。実施されれば16年ぶりとなる。

 広島、廿日市市などの全8路線でそれぞれ20〜30円アップ。白島線を除く市中心部は、現行の150円を170〜180円とする方針でいる。中国運輸局 に来年申請し、審議会への諮問などを経て同年の実施を目指す。運賃は、1997年に市内路線で130円を150円に上げて以来、据え置いてきた。値上げに より、2027年までに40編成を超低床車両に更新したい考えで、電停のバリアフリー化も進める。

 同社の車両124編成のうち48編成が、製造から45年以上経過。更新は1編成2億〜3億円かかり、現行運賃では難しいという。越智秀信社長は「安全な 運行を確保し、より便利なサービスを提供するため、利用者に理解を求めていきたい」としている。
▼路面電車運賃の全線均一検討 (2012 年9月5日『中国新聞』

 広島電鉄(広島市中区)が、路面電車の運賃を全線均一にする検討をしている。距離に応じて運賃が上がる宮島線を、広島市内の均一運賃に含める。車掌をな くして全てのドアから乗り降りできる「信用乗車方式」の導入に向け、運賃を分かりやすくする。

 計画では来年、150円の広島市内均一運賃を170〜180円に上げるのに合わせ、宮島線の多くにも市内の均一運賃区間を拡大する。2014〜15年に は全路線、どの区間を利用しても170〜180円にする方向。

 現在、均一運賃でないのは宮島線(広電西広島より西)と白島線。均一制の導入により、現行270円かかる広島駅〜広電宮島口間などは値下げになる。一 方、宮島線の短い区間と白島線では値上げとなる。激変緩和のため、一部は段階的に値上げをする。

 広電は、車掌を置かず全ドアで乗り降りができる信用乗車方式を22年までに全線に導入する方針。運賃を均一にすることで乗り降りの時間が減り、不正乗車 も防ぎやすくなるという。

(『中国新聞』より)

 欧州のLRTはこの「信用乗車」を全面的に採用することで、停車人間の短縮とそれによる全体的なスピードアップを実現しているという。果たして日本でも 根付くか?
▼路面電車で「信用乗車」実験 (2010年4月15日『中国新 聞』)
 広島電鉄(広島市中区)は、車掌がいない扉からでも下車できる路面電車の「信用乗車方式」の社会実験を来年4月にも始める。2013年度以降の本格導入 を目指す。乗客の乗降時間を短縮し、運行のスピードアップにつなげる。
 広電によると、路面電車の信用乗車方式導入は、富山市に次ぎ2例目という。社会実験は広島駅と広島港、広電宮島口、江波を結ぶ路線と、広島港〜広電西広 島の計4路線で始める。超低床の「グリーンムーバー」など連結車両を対象とする。
 車掌を廃止し、計4カ所ある扉のどこからでも降車できるようにする。現在は運転士と車掌のいる2カ所からしか降車できず、利便性が高まる。ICカード 「PASPY(パスピー)」を持つ乗客は扉付近の読み取り機で精算するが、現金による精算方法は今後検討する。
 ICカードの普及で信用乗車に近い運行形態が可能になりそうだ。
▼路面電車でICカード実験 (2012 年2月15日『中国新聞』

 広島電鉄(広島市中区)は15日、運賃を支払うICカードPASPY(パスピー)かICOCA(イコカ)を使えば、路面電車のどの扉からでも降りられる 試験運行を始める。対象は2路線の各1台。広島駅から紙屋町東を経由し、広島港までの1号線と、同駅から宮島口までの2号線で走らせる。
 通常、3両編成の車両では、運転士と車掌そばの扉は乗降どちらも可能だが、中扉2カ所は乗車専用。試験運行では、中扉にも精算用のICカードリーダー機 を設置し、全ての扉から乗り降りできるようにする。
 乗客が降りるために車内を移動する距離を短くするほか、降車時間を短縮し、スムーズな運行につなげる。3月31日まで。広電によると現在、乗客の約7割がICカードを利用している。現金の場合はこれまで通り、 2カ所の扉からの降車になる。

 新型のLRV導入だけでなく、このような地道な改良も利便性アップに不可欠だろう。
▼路面電車の利便性向上へ実験 (2009年2月6日『中国新 聞』)
 国土交通省は5日、路面電車内の液晶モニターで主な電停の到着予想時刻や新幹線のダイヤなどを案内し、利便性の向上を図る実証実験を、広島市内で9日か ら3月中旬まで実施すると発表した。
 広島電鉄(中区)の江波発広島駅行き電車(1両編成)の車両3台に15インチの液晶モニターを設置。広島バスセンター(中区)の最寄り電停となる紙屋町 西への到着予想時刻や、広島駅で乗り継げる新幹線、在来線、広島空港(三原市)行き高速バスの出発時刻を表示する。
 衛星利用測位システム(GPS)を利用するなどして電停ごとに各情報を更新。利用客にアンケートはがきを配布し、効果や改善点を調べる。広島市での実験 は昨年度に続き2回目になる。
路面電車内で乗り継ぎ案内をする液晶モニターの表示イメー ジ(『中国新聞』より)


B優先信号や軌道緑化などの走行性 の改良  
▼路面電車優先で初の交通実験 (2008年12月13日『中国新 聞』)

 路面電車が近づくと青信号が長くなり電車の運行がスムーズに―。広島市中区の広島電鉄江波線で、交差点を路面電車が優先して通行できるシステムの実証実 験が13日から始まる。社団法人新交通管理システム協会(東京)が、所要時間の短縮や乗客の利便性向上のため全国で初めて実施する。広島県警と広島電鉄が 協力し、3月中旬までの予定。
 江波〜舟入幸町間の上り約1.3キロで信号待ちの時間が長 い3交差点を対象に、午前7時〜午後8時に実施。路線の隣接車線に電車の通過を検知する光ビー コンを設置し、専用の端末機を載せた車両が通ると県警交通管制センターに情報を送信。進行方向の青信号の延長や赤信号の短縮でスムーズな運行を可能にす る。平均6分の所要時間を約10%短縮できる見込みという。
 公共交通機関では、路線バスが優先通行できる同様の「公共車両優先システム(PTPS)」を全国で導入。広島市でも2003、04年に2路線が取り入 れ、深川(安佐北区)〜基町(中区)間11.9キロでは平均5分の短縮効果が上がっている。

▼路面電車軌道を緑化 広島市 (2011年1月22日『中国新 聞』)

 広島市は、広島電鉄(中区)と共同で路面電車の軌道敷の緑化に本格的に乗り出す方針を固めた。2011年度は、都心の一部を緑化する社会実験の実施を目 指す。放射熱によるヒートアイランド現象を抑制するのに加え、都市景観への配慮をアピールする狙いもある。
 市は都心部に数十メートル規模で軌道緑化するよう広電と協議に入った。市民や観光客へのPR効果も考慮し具体的な場所を選定する。社会実験に向けて市 は、広電や市造園建設業協会と連携。09年秋から1年間、市植物公園(佐伯区)に芝生を植えて、気候や交通事情に適した芝生の種類などを調べてきた。
 芝生による軌道緑化は既に、広電が独自に南区の海岸通〜広島港電停間の2カ所の計252メートルで実施している。03、08の両年に広島港や広島南道路 の整備に伴い軌道を変更する際、騒音・振動軽減策として進めた。
 最大の課題はコスト面とされる。先進地の鹿児島市では、市内電車全路線のうち約半分の5キロを緑化したが、基盤整備や植え付け費用が1メートル当たり約 20万円。鹿児島と同じ方法で広電市内線全19キロを緑化すると、費用は約38億円かかる。これとは別に散水や芝刈りなどの維持管理費も必要となる。
芝生で緑化した広島電鉄の路面電車の軌道(広島市南区宇品 御幸)(『中国新聞』より)
▼旧球場前の軌道敷緑化へ (2011年9月7日『中国新聞』)

 広島市は2011年度から2年間かけ、旧市民球場跡地(中区)の南側を走る広島電鉄の路面電車の軌道敷を緑化する。まず11年度は原爆ドーム前電停付近 の約40メートルを芝生で覆う。15日開会の市議会定例会に経費1,600万円を盛り込んだ11年度一般会計補正予算案を提案する。
 市は都市景観の魅力アップや放射熱によるヒートアイランド現象の抑制、騒音軽減などに効果があるとして軌道敷の緑化を検討。13年春に全国菓子大博覧会 が開かれ、「観光客や市民へのPR効果が期待できる」として球場跡地前での実施を決めた。
 緑化区間は計約100メートルで、車が進入する交差点や横断歩道などを除く軌道敷に芝生を敷き詰める。緑化にかかる費用の半分は国の補助金を充てる。
 市は広電や市造園建設業協会と連携し、09年秋から約1年間かけて市植物公園(佐伯区)で3種類の芝を育成。広島の気候や交通事情に適した品種や保水性 の高い基盤材料を調べる実験を進めていた。
 軌道敷の緑化は、市内では広電が03、08年に宇品線の海岸通〜広島港の2カ所計252メートルで導入。都心部では初めてとなる。
広島電鉄の原爆ドーム前電停(『中国新聞』より)


C新線建設や路線再編への動き  
▼広電、平和大通り線構想の修正検討 (2002年1月11日『中国新聞』)

■平和公園前は通らず

 広島電鉄(広島市中区)は、5年前に打ち出した路面電車の「平和大通り線」構想の一部修正を中国地方整備局、中国運輸局、広島市と共同で検討しているこ とが分かった。平和記念公園前を通らず、西区西観音町から中区舟入町まで直進し江波線に接続する。中国地方交通審議会広島県部会が3月に中国運輸局に答申 する県地域交通計画に盛り込まれる見通し。

 直進区間は平和大通りの0.9キロ。舟入町の小網町交差点で江波線に接続し、土橋町電停方面に向かう。現在の路線は、カーブが多く道幅も狭いため廃止す る。直進により西観音町〜土橋町間に3カ所あった交差点の右左折が1カ所になり、所要時間が数分短縮できるとみている。
 軌道は、上下線を平和大通りの車道の両端に分けて敷設する「路側走行方 式」を検討。現在、平和大通りの中央を走る西区福島町から西観音町の約0.4キロの軌道も、両端に移す。歩道に電停を設けバリアフリー化を 図る。事業費は25〜40億円程度と試算。別に天満川を渡る緑大橋の架け替えが必要となる。

 平和大通り線については、国土交通省の提案で昨年8月から4者が「路面電車懇談会」をつくり再検討してきた。4者とも直進案に前向きの姿勢を示してい る。今後、市が検討している平和大通りのリニューアル事業とも調整を図りながら議論を進める。
 平和大通り線は、1997年に広島電鉄が西観音町から中区白神社前までの 1.8キロの新設構想を表明。平和記念公園前を通ることへの反対や、アストラムラインの延伸構想と競合するなどの理由で、議論はストップし ていた。

(『中国新聞』より)

▼路面電車強化で検討委発足 新設・延伸8ルート案 (2004年 12月2日『中国新聞』)

■中国運輸局広島市など 需要・採算の調査へ
 中国運輸局や広島市などが1日、路面電車の機能強化策を探る検討委員会を設置した。事務局の運輸局は6路線を新設し、既存2路線を延伸する8ルート案を 提示。今後、需要予測や採算性などを調査し、来年3月までに報告書をまとめる。
 検討委は、運輸局や市、広島商工会議所、広島消費者協会などの担当者ら9人で構成し、広島電鉄がオブザーバーとして加わる。市が、検討結果を今後の都市 交通施策の参考にするため、運輸局に設置を要請した。

 運輸局案では、
平和大通り線西区西観音町〜中区大手町、約2キロ
JR広島駅前大橋線南区松原町〜稲荷町、約0.5キロ
段原線南区的場町〜翠、約2キロ
宇品東線南区翠〜宇品海岸、約2キロ
吉島線中区中島町〜光南、約3キロ
観音線西区西観音町〜観音新町、約2.5キロ
の6ルートを新設候補に設定した。
白島線(中区八丁堀〜東白島町)を北約1キロの東区牛田旭
江波線(西区横川町〜中区江波西)を南約1キロの中区江波南まで、
それぞれ延伸する案も盛り込んだ。運輸局は、いずれも都心部と周辺部の交通拠点や商業施設、住宅密集地などとのアクセス強化が図れるとして、候補に挙げ た。

 この8ルート案の提示を受けて検討委では、利用者アンケート、需要予測、事業費の算定を通じ、課題の洗い出しを進めることなどを申し合わせた。
 8ルート案は、アストラムラインの延伸構想や路線バスとの競合を視野に入れず、路面電車の有効活用を最優先する形になっている。運輸局企画振興部は「今 後の都市づくりをフリーハンドで考えるたたき台にしたい」としている。

(『中国新聞』より)

▼「白島線廃止」に市は否定的 (2007年6月27日『中国新 聞』)
 広島市は26日、広島地域の総合交通体系のあり方の一環として広島商工会 議所から提言を受けた広島電鉄白島線の廃止について、市も広電も廃止には否定的 な考えであることを明らかにした。市側は、存廃について市民の問い合わせが数件あったと報告。年間128万人の利用があり市民生活に欠かせない▽沿線の県 立美術館や縮景園へ来る観光客が利用しやすい―などを踏まえ、「存続させるべきだ」と回答した。
 白島線の廃止どころか、江波線への乗り入れが検討され始めた。しかし1日3〜4往復というのは少ないな…。
▼白島〜江波に路面電車検討 (2012 年11月23日『中国新聞』

 広島電鉄(広島市中区)は、広島市中心部を走る白島線の路面電車を江波線に乗り入れる検討を始めた。来年2月から、3両編成の新しい超低床車両を白島線 で運行するのに合わせて実施を目指す。白島線はこれまで白島〜八丁堀間の1.2キロを往復してきた。計画では、ラッシュ時を除き1日3〜4往復、白島〜江波間で運行する。実現すれば、乗り換えなしで 白島から紙屋町方面へ行けるようになる。現在、県警など関係機関との調整を進めている。電車が八丁堀交差点を右折する際の安全性などを確認した上で実施す る。

 新車両は、05年から運行している5両編成の超低床車両「グリーンムーバーマックス」より11.4メートル短い18.6メートルの3両編成。これまで超 低床車両を運行していない白島線と横川駅〜江波間で、来年2月からワンマンで運行する。23日にある「電車開業100周年記念祭」で越智秀信社長が新車両 について公表する。

 広電は、今後15年で超低床車両を40編成購入する計画。高齢者やベビーカーでも乗り降りしやすい電車を目指す。

▼広電が「駅前大橋線」新設へ (2010年5月13日『中国新 聞』)

 広島電鉄(広島市中区)の社長に6月29日に就任予定の越智秀信常務は12日、JR広島駅と広島市南区稲荷町を結ぶ路面電車の新路線「駅前大橋線」につ いて、2016〜17年の運行開始を目指す考えを明らかにし た。同路線の開始時期を示したのは初めて。運行時間短縮につながる新線計画が動きだす。
 越智氏は中国新聞のインタビューに「駅に真っすぐ入る路線を整備する。紙屋町と広島駅間の時間短縮のため早く実現したい」と、新線の実現に意欲を示し た。また「駅南口広場の再整備に合わせ、広場内のホームを増やしたい」と話した。
 現路線は東側の的場町と猿猴橋町を経由しており、大回りになっている。
 市は本年度予算でJR広島駅南口広場再整備の調査費約545万円を計上した。広電は広場再整備に合わせ、線路やホームを改修する計画。同駅〜稲荷町間の 駅前通り約0.5キロに線路を敷設し、ルートを変更する。同区間の所要時間は約 3分の短縮を見込む。
 市都市交通部は新線について「JRやタクシー、バス会社や県警と調整しながら、広場の再整備計画の中で検討する」としている。
 駅前大橋線は中国地方交通審議会広島県部会が2002年、整備を中国運輸局長に答申した。だが駅前広場の再整備の見通しが立たず、計画は進んでいなかっ た。


(『中国新聞』より)
▼広島駅〜稲荷町電停直進 市街地便利に  (2010年10月8日『 読売新聞』)
 1997年に構想が公表されて以降、実質的に〈たなざらし〉となっていた広島電鉄の広島駅〜稲荷町両電停間を直線ルートで結ぶ計画案が、実現に向けて動 き出した。6月に就任した同社の越智秀信社長(53)が最重要課題に掲げ、市も8月に有識者による検討委員会を設置。市中心部への移動時間が短縮され、周 辺道路の交通渋滞緩和も期待できるとあり、計画の行方が注目される。
 現在のルートは1912年の営業開始当時のままで、広島駅電停から東に大きく迂回(うかい)して荒神橋を渡る。4路線の車両がこのルートを通り、信号も 多いためダイヤの遅れが生じ、幅員の狭い道路で交通渋滞を招く要因にもなっている。
 路線整備計画案では、駅前通にレールを新設し、距離を現行の約700メートルから約200メートル短縮。駅前広場のホームを1本増の4本とし、車両の出入りをスムーズにすると している。
 市も同案を踏まえ、99年に駅前再開発を含む公共交通整備の基本計画を策定したが、財政難などを理由に計画は事実上先送りに。市とJR西日本の土地を含 む駅前広場の軌道変更は難しくなり、同社の構想も“棚上げ”状態となった。
 国土交通省出身の越智社長は「札幌、福岡市などの大都市は、ターミナル駅と中心市街地が地下鉄などで数分以内で結ばれている。現状は市街地の活力を損な う一因になっている」と指摘する。
 マツダスタジアムの建設など駅周辺で再開発が進み、公共交通の見直しを迫られたため、市は10年度当初予算に駅前広場の整備検討費545万円を計上。検 討委員会では、交通渋滞発生の有無、地下鉄化などを含めた工法、市民全体の合意形成などの課題を協議。委員会の提言を基に、市とJRは年度内に広場の整備 案をまとめ、財源を検討する。
 越智社長も「2016〜17年頃に新ルートでの運行を始めたい」と意気込む。同市東区の女性会社員(29)は「買い物をするにも市街地に出るには時間が かかるので、車で郊外の商業施設に行くことが多い。交通の便を良くしてほしい」と話す。

▼広島電鉄の新路線で意見交換  (2011年1月13日『中国新 聞』)
 広島市は12日、JR広島駅(南区)南口広場の再整備を考える検討委員会(有識者7人で構成)の2回目の会合を市役所で開いた。広島電鉄が構想する路面 電車の新路線「駅前大橋線」について、市が広島駅に乗り入れるルートの構造3案を提示し、委員が意見を交わした。
 駅前大橋線は、駅東側を迂回する現行ルートを変更し、駅正面を直進する。距離は現行より200メートル短縮される。広電は2016〜17年の開通を目指 している。
 構造3案のうち、平面案は道路上を通って駅前大橋を渡り、 南口広場に電停を設ける。事業費は約 30億円。3案のうち最もコストを抑制できる一方で、周辺道路の渋滞を招く可能性がある。
 地下案は、稲荷町交差点北側から地下に入る。猿猴川の下を くぐり、南口地下広場の下(地下約15メートル)に新設する電停に乗り入れる。事業費は約250億〜300億円で、最 も高い。
 高架案は、駅前大橋南側と南口広場の間を高架化で結ぶ。電 停は広場に高架で設ける。事業費約 70億〜100億円。ただ、短い区間に高低差ができ、広電側は「運行に支障が出る」 としている。
 3案とも猿猴橋町の電停は廃止する。委員からは「バス、タクシーなど他の交通機関のスペース整備も併せて考える必要がある」「電停が消える地域への対策 も必要だ」などの意見が出た。

▼電車新路線 年度内に基本案 (2011年12月7日『中国新 聞』)

 広島市は、広島電鉄が構想する路面電車の新路線「駅前大橋線」について、JR広島駅(南区)南口に乗り入れるルートの構造を3案から絞り込んだ基本方針 を2011年度中にまとめる。駅南口広場の再整備計画も盛り込む。関係機関との協議が難航した結果、予定より1年遅れで具体化へ向け動きだす。

 駅前大橋線は、市中心部との時間短縮が目的。駅東側を迂廻(うかい)する現行ルートを変更し、駅正面を直進する。広電は16〜17年の開通を目指してい る。

 市は1月、駅南口へ乗り入れる構造について、
▽地下(250億〜300億円)
▽平面(30億円)
▽高架(70億〜100億円)
―の3案を公表。バス停留 所 やタクシー乗り場、駐車場の再配置などを盛り込んだ駅南口広場(1万5千平方メートル)の再整備計画と合わせ、10年度中に基本方針をまとめる予定だっ た。

 だが、各案の実現可能性などをめぐり、広電やJR西日本など関係機関との協議が長期化。駅南口広場の再整備計画も3案ごとに必要となるため、準備に時間 を要した。

(『中国新聞』より)

広島電鉄が駅前大橋線を計画する駅前通り(中央)。
稲荷町交差点(手前)から広島駅(奧)に直進する。
(『中国新聞』より)

▼JR広島駅の整備計画混沌 路面電車新線、3案動かず (2012 年5月8日『日本経済新聞』

 JR広島駅周辺の整備計画が混沌としている。広島電鉄が駅前南口で計画する新路線「駅前大橋線」は、広島市が提示したJRの駅に乗り入れる際の構造を巡 り選定が難航。北口ではバス、タクシー乗降場などを巡り、市の再編案に業界団体が難色を示す事態が起きている。

■距離と時間短縮
 「広島電鉄の広島駅前新線計画は全国でも注目度が高い」。4月14日、超党派の国会議員で構成するLRT(次世代型路面電車)推進議員連盟は広島駅周辺 を視察し、議連として、新線の設置を支援していくことに意欲を示した。議員視察には広電やJR西日本広島支社などの幹部が広電の路面電車に同乗。市中心部 の町並みや交通体系について説明した。

 広電が新線を計画するのは市中心部と広島駅南口を結ぶ路線の時間短縮を図るためだ。現在は、広島駅に向かう際、東側に大きく迂回しているが、路面電車の ため駅周辺でのバスやタクシーなどの混雑に巻き込まれやすい。広島駅に直線で進む新線を設置し、稲荷町の電停から広島駅までの距離を現行の800メートル から200メートル短縮、市中心部からの所要時間も15分程度を約5分短縮したい考えだ。

 広島市は2010年8月、駅前南口の再整備計画を話し合う検討委員会を設置。道路上を通る「平面案」(事業費30億円)、南口地下広場の下を通る「地下 案」(同250億〜300億円)、南口広場に高架を設置して駅ビルの2階部分に上る「高架案」(70億〜100億円)を提示している。平面案は事業費が最 も少なく抑えられるというが、タクシーやマイカーなどを含めた駅前の交差点が混雑することが想定される。高架案は路面電車が斜面の走行に耐えられるかが課 題を残す。地下案では設計が可能かどうかの判断も必要となる。

 広電の越智秀信社長は「高架案は急勾配で上れないし、平面は渋滞を招く可能性がある。可能なのは地下案だけだ」と強調。事業費も140億円と想定してい る。一方、JR西日本広島支社の杉木孝行支社長は「広島駅のメーンの乗り換えの動線は2階のため、(高架化案が)有効だと考えている」と話している。広島 市道路交通局公共交通計画担当の品川弘司課長は「3案が技術的に可能かどうかを検討している」としており、今夏にも技術的な検証結果を提示する予定。事業 者からは広島の街のあり方に大きな影響があるにもかかわらず、結論が出ないまま月日がたってしまったことだけに「早く結果を出してほしい」との声が高まっ ている。

■北口でも課題
 北口の交通計画も難航している。現在、北口は西側がバスとマイカー、東側がタクシーの広場だが、西側をバスとタクシーに東側をマイカー専用に再編する計 画。だが、業界団体は市に「接触事故などの安全面の課題が多い」との要望書を提出した。北口では「二葉の里地区」の開発、南口でも大型の商業施設やマン ション開発の計画も進む。これら再開発のあり方も新しい交通体系の影響を大きく受けるだけに、その整備を急ぐ機運は一層の高まりを見せている。 (広島支 局 花井悠希)
▼広電駅前大橋線「高架案」を (2012 年9月9日『中国新聞』

 広島電鉄(広島市中区)が構想する新路線「駅前大橋線」について、JR西日本広島支社の杉木孝行支社長はこのほど、JR広島駅(南区)南口に乗り入れる 構造は「高架案が最善」との見解を明らかにした。JR線への乗り換えの利便性などを考慮したとしている。

 杉木支社長は2017年度に広島駅2階に南北自由通路を整備する計画に 触れ「最短でJRから広電に乗り換えられる案が優れているのではないか」と言及。路面電車の乗り入れ場所は、自由通路に近い方が利便性が高いと説明した。 駅前大橋線の開通時期は「自由通路の完成からできるだけ早い時期が望ましい」とした。また乗り入れに伴う駅の改修については「現状で対応しきれない部分は 努力していきたい」と述べた。

 広電の越智秀信社長はこれまで、地下で広島駅に乗り入れる案が実現性が高いとの見方を示している。杉木支社長の発言については「バスやタクシー、マイ カーの交通処理など、総合的に判断して慎重に検討を進めるべきだ」と話した。
 一方、市は道路上を走る「平面」を加えた3案について、技術的な検証を進めている。市道路交通局都市交通部は「有識者などでつくる検討委の議論などを経 て、市として最終的な方針を決める」としている。
▼広電駅前大橋線に県警が難色 (2012 年10月14日『中国新聞』

 広島市による広島電鉄の路面電車の新路線「駅前大橋線」の検討で、同線に接続するために必要となる比治山線の路線変更に、広島県警が難色を示している。 「交通渋滞が悪化する」として別ルートが必要と主張。駅前大橋線の在り方の議論に影響する可能性がある。

 県警が問題視しているのは、広島駅と広島港を結ぶ比治山線の駅前大橋線への接続方法。市の検討では、現在の的場町電停付近から駅前大橋線まで、比治山通 り上に約200メートル、新たな線路を敷き、現在の猿猴橋町などを通るルートから変更する。

 県警によると、線路を敷く比治山通りは1日2万2千台以上の車の通行が ある。高橋若衛交通部長は「電車を通すと車線が減り、混乱を招く」と説明。比治山線の比治山下電停付近から駅前通りに向けて軌道を新設し、稲荷町で駅前大 橋線に接続する別の新ルートを提案する。

 市は、駅前大橋線の乗り入れ方式を「平面」「高架」「地下」の3案で検討しており、県警、広島電鉄などと協議してきた。年内に3案を絞り込む方針。た だ、比治山線の接続方法の本格的な議論はこれまで行われていないという。
▼「広電、高架化望ましい」 広島駅乗り入れでJR西支社長 (2012 年12月22日『日本経済新聞』

 西日本旅客鉄道(JR西日本)広島支社の杉木孝行支社長は21日の記者会見で、広島電鉄が計画するJR広島駅直結の新線について高架方式が採用された場 合、「駅ビル『アッセ』を建て替えることも必要になるかもし れない」との考えを明らかにした。乗り入れ方式については地下式も候補となっているが、利便性の観点から「高架式が望ましい」との従来の見解を改めて強調 した。

 広電の新線計画は広電の広島駅をJR側に寄せる計画だ。杉木支社長は高架式が採用され、広島電鉄が現在の駅ビルの2階や3階を通過することになっても 「新幹線に直結する自由通路などとの段差がありいい形にならない」と指摘。駅ビルを建て替え構造を変更することが必要との見方を示した。

 ただ、広島市が高架と地下から乗り入れ方式を絞り込む作業を進めていることから、「現時点では建て替えを決定しているわけではない」と話した。広島電鉄 は地下式による乗り入れを希望している。
▼広電「駅前大橋線」は2案 (2012 年12月21日『中国新聞』

 広島市は20日、広島電鉄(中区)が構想する路面電車の新路線「駅前大橋線」について、JR広島駅南口(南区)へ乗り入れる構造を高架か地下の2案から 選ぶ方針を明らかにした。交通渋滞の懸念から平面案は見送る。 駅前大橋線に接続する比治山線も新たな見直しルート案を示した。市は本年度中に、路面電車の乗り入れ構造を含めた広島駅南口広場再整備の基本方針を決める 方針でいる。

 市議会都市活力向上対策特別委員会で市が報告した。駅前大橋線は駅前通りを北進し、広島駅南口に乗り入れる。市は乗り入れ方式を、高架(概算事業費 70〜100億円)▽地下(250〜300億円)▽平面(30億円)―の3案で検討した。

 このうち平面案について市は「駅前交差点で渋滞が起きる恐れがある」として検討対象から外すと説明。高架と地下の両案の事業費をあらためて試算するとし た。

 駅前大橋線の乗り入れ方式は、広島駅南口広場再整備の焦点の一つ。1月以降、有識者でつくる市の検討委員会が、高架か地下の2案のどちらかに絞り込む予 定でいる。

▼広電、高架案に方針転換 (2013 年1月19日『中国新聞』

 広島電鉄(広島市中区)の椋田昌夫社長は18日、中国新聞の取材に対し、JR広島駅南口(南区)に乗り入れる路面電車の新線の構想について、高架方式で 進める考えを明らかにした。越智秀信前社長(現取締役)が目指した地下方式から方針を転換した。

 高架方式を主張するJR西日本広島支社(東区)と意見が一致する形となる。広島市による乗り入れ方式の検討が進む可能性が出てきた。新線「駅前大橋線」 について椋田社長は「JRとの乗り換えなどを考えると高架の方が良い」と説明。地下より高架で広島駅に乗り入れた方が、乗客がJRに乗り換えやすいとし た。今後、市や関係機関と協議を進める。

 越智前社長はこれまで「高架は柱を立てる分、車道が減り、交通に影響が出る。美観も損なう」と地下方式を主張。「高架が最善」とするJR西日本広島支社 の杉木孝行支社長と、方針が食い違っていた。杉木支社長は、駅ビルを建て替えてビル内に路面電車のホームを整備する可能性も示している。

 新線の検討を進める広島市都市交通部は引き続き、地下と高架の2案を比較、評価する方針。「(2案から)絞った案を現行ルートと比較し、広電以外の交通 事業者や住民の意見も踏まえて判断する」としている。広電の取締役会は8日、「経営手法が独断的」などとして越智前社長を解任した。
▼広島市長、駅前大橋線に意欲 (2013 年4月4日『中国新聞』

 広島市の松井一実市長は3日、広島電鉄(中区)が構想する路面電車の新路線「駅前大橋線」について「必ず事業化させる」と強い意欲をみせた。JR広島駅 (南区)南口の再開発が終わる2015年度までに計画は動きだすとの見通しを明らかにし、広島駅への乗り入れ方式は高架案が有力とする考えをあらためて示 した。就任2年を前に、中国新聞のインタビューに答えた。

 松井市長は、広島駅南口B、Cブロック再開発の完成を目指す2015年度までに「具体的な動きを出したい」と述べた。「再開発の建物ができても、交通面 が整わないと陸の玄関としての機能は完結しない」と説明した。

 市は13年度、南口広場のレイアウト改善に向けた再整備基本方針をまとめる。これに連動し、駅前大橋線の乗り入れ方式も決める。有識者の検討委員会が橋 上駅になる広島駅と乗り継ぎしやすい「高架」か、他の交通機関への影響が少ない「地下」の2案から選ぶ。

 JR西日本広島支社(東区)と広電は、いずれも高架案を支持している。松井市長は「地下より動線が優れている高架でまとまるだろう」との見方を示した。 市は今後、検討委の判断を受け、現行ルートとの比較や地元との協議を経て、乗り入れ方式を決定する。

▼広電駅前大橋線は高架で一致 (2013 年6月18日『中国新聞』

 広島市は17日、JR広島駅南口広場(南区)の再整備を考える有識者の検討委員会を市役所で開いた。検討委は広島電鉄(中区)が構想する新路線「駅前大 橋線」の広島駅への乗り入れ方式について「高架が望ましい」との見解をまとめた。広島の玄関口と都心のアクセス向上を目指す新路線は、1999年の構想浮 上から14年で新たな段階に入った。

 委員7人のうち、青山吉隆委員長(京都大名誉教授)たち6人が出席した。事務局の市都市交通部は、駅への乗り入れ方式について高架と地下の2案を評価し た結果、「技術的には可能」と説明。概算事業費は高架案は135億円、地下案は195億円と報告した。

 これを受け、委員長を除く5人の委員が「地下案より事業費が安く、橋上駅になる広島駅との乗り換えがしやすい」などと高架案を支持した。

 具体的には、駅前大橋から高架で南口広場に入り、改築した広島駅ビルの2階部分に電停を設けるルートを想定する。紙屋町や八丁堀地区との距離は現行ルー トより約200メートル縮まり、約4分の時間短縮になるという。

 市は検討委の意見を基に現行ルートとメリット、デメリットを比較。地元住民や広電以外の交通事業者、市議会との協議を経て、本年度中に駅前大橋線の乗り 入れ方式を含めた南口広場の再整備基本方針をまとめる。

JR広島駅ビルに高架で乗り入れる広電の駅前大橋線のイメージ図(広島市提供)
▼「高架」で電停廃止に懸念 (2013 年6月18日『中国新聞』

 JR広島駅(広島市南区)に乗り入れる広島電鉄(中区)の路面電車の新路線「駅前大橋線」は17日、事業化に向けて新たな局面を迎えた。懸案だった駅に 路面電車が入る構造で、市の有識者検討委員会は「高架が望ましい」との見解で一致。一方、新路線導入で電停が廃止される地域からは実現性や影響について市 に説明を求める声が相次いだ。

 検討委が高架方式を打ち出したことについて、広電は「JRとの乗り継ぎが便利になる。少しでも早い実現をお願いしたい」と市に求めた。JR西日本広島支 社(東区)は「市の基本方針に沿い、広島駅が利用者により良い形になるよう努める」としている。駅前通りを北進し、広島駅南口に乗り入れる駅前大橋線。実 現すれば接続する比治山線のルートも変わり、猿猴橋町▽的場町▽段原一丁目 ―の3電停が廃止される。市は、3電停の利用者数を1日計 3900人とはじく。

 「数分の短縮のために巨額の投資をするのは疑問。市は地元と十分話し合いをしていない」。猿猴橋町電停そばでカメラ店を営む増本光雄さん(72)は実現 性に首をかしげる。的場町電停そばの呉服店で働く可部由紀子さん(57)は「年配のお客さまの多くは電車を利用される。電停がなくなると…」と表情を曇ら せた。対照的に、通勤で猿猴橋町電停を使う公務員門脇富士枝さん(64)は「高架で駅前の交通混雑がスムーズになるなら」と歓迎の姿勢だ。

 市は現行ルートと新路線のメリット、デメリットを比較。その後に地元説明を始める。市都市交通部は「地元に丁寧に説明し、市民や議会から幅広く意見を聞 いて判断したい」としている。
▼駅前大橋線レイアウト公表 (2013 年8月23日『中国新聞』

 広島市は、JR広島駅南口広場(南区)の再整備2案をまとめ、21日夜の住民説明会で示した。ポイントは広島電鉄(中区)の路面電車をどういうルートで 広場に引き込むか。同社が構想する新路線「駅前大橋線」では広島都心部との所要時間は縮まる。一方、新路線導入で3カ所の電停が廃止される。現行路線の沿 線住民は「不便になり地域が沈む」と反発している。

 駅前大橋線は駅前大橋から高架で南口広場に入り、広島駅ビル2階に電停を設けるルートを想定。駅東側を迂回(うかい)する現行路線に対し、駅正面を直進 するため紙屋町・八丁堀地区との所要時間は4分縮まる。南口広場と南口周辺に分散しているバス乗降場を広場の西側に集め、マイカーとタクシーの乗降場は東 側に置く。

 ルート変更に伴い、現行路線の猿猴橋町▽的場町▽段原一丁目―の3電停は廃止される。利用者は1日当たり計3900人。市は代わりに循環バスの運行を計 画する。

 現行路線のままとした場合も南口広場のレイアウトは変わる。手狭だった路面電車の乗降場を広げ、発着をスムーズにする。だが、バス乗降場の集約は広場の スペースが制約されてできない。

 21日夜。市は現行路線沿いの荒神地区で初めての住民説明会を開いた。参加した約40人のほぼ全員が新路線導入に反発した。

 市は広場再整備にかかる概算事業費を駅前大橋線の場合135億円、現行路線の場合80億円とはじく。市都市交通部は「丁寧に住民の意見を聞いて再整備方 針に反映していく」としている。




3.広 島電鉄とJR山陽本線の競合関係について  

JR五日市駅(左)と広電五日市駅(右) 2011.12

大都市としては異例の国鉄型車両が集うJR広島駅 2011.12

 広島電鉄は広島と宮島の間において、JR山陽本線と競合関係にある。競争が本格的に始まったのは、国鉄末期の1982年11月ダイヤ改正からで、地 方の都市圏輸送改善の先駆けとして広島近郊区間において「ひろしまシティ電車」と名付け短編成化による列車増発という積極策に打って出た。その後、新 駅設置(新井口駅など)等のインフラ整備も行い広島電鉄の強力なライバルとなっていった。現在ではスピードはJR、運賃の安さと列車本数の多さでは広島 電鉄 がそれぞれ有利になっているが、JRは都心部に乗り入れていないことから、西広島か横川または広島のいずれかの駅で広島電鉄に乗り換えて都心部まで移動 する流動が発生する。そういった意味では、単に競合関係にあるのではなく、補完関係にあるとも言えそうだ。

▼広島〜宮島間の広島電鉄とJR西日本の比較

広 島 電 鉄
J R 西 日 本
区 間
広 島駅
〜広電西広島
広 島駅
〜広電五日市
広 島駅
〜広電宮島口
広 島
〜西広島
広 島
〜五日市
広 島
〜宮島口
営 業キロ
5.4km
12.0km
21.5km
5.5km
12.1km
21.8km
運 賃
150 円
230 円
270 円
180 円
230 円
400 円
所 要時間
日 中34分
日 中49分
日 中67分
7〜8 分
15〜16 分
27〜28 分
運 行頻度
日中片道9分毎
日中1時間に片道4本
(2011年3月時刻表などから作成)

 このように運賃と運行頻度で圧倒し都心部直通というメリットも持つ広島電鉄だが、所要時間の面ではJR西日本が大きく優っている。しかしJR西日本 の広島地区の弱点として見過ごせないのは、国鉄時代に作られた旧型車両の巣窟と化している点(ネット上ではそのあまりに古い車両ばかり残っている ことから『國鐵廣島』と揶揄されるほど)だ。広島電鉄はグリーンムーバーのような革新的なLRVを導入し、快適な乗車空間を提供しているのに対し て、JR西日本は内装を全面的に抜本更新し転換式クロスシート車などを導入しているとは言え、関西圏で使い倒した古ぼけた老朽化車両ばかりを広島地区に集 め ているという印象が拭えない。特にその他の中枢都市、札幌・仙台・福岡のJR線はいずれも新型車両の導入が進み国鉄型の車両が殆ど見られなくなっただけ に、広島地区のJR線の立ち遅れが余計に目立つ(更に車両だけでなく高架化などのインフラ面の整備も遅れがちだ)。下記の写真はやや意図的ではあるが、 札仙広福≠ノおいて広島地区の投資が最も遅れていることを示すべく選んでみた。

桑園駅(札幌都市圏) 2013.6

長町駅(仙台都市圏) 2012.3

天神川駅(広島都市圏) 2011.12

吉塚駅(福岡都市圏) 2009.12

▼広島電鉄の輸送人員の推移

1985 年度
1990 年度
1995 年度
2000 年度
2005 年度
2006 年度
2007 年度
2008 年度
軌道線(年間)
(1日平均)
38,371 千人
105,126人
43,880 千人
120,219人
45,614 千人
124,628人
41,010 千人
112,356人
38,912 千人
106,608人
39,218 千人
107,447人
39,703 千人
108,478人
40,190 千人
110,110人
宮島線(年間)
(1日平均)
16,088 千人
44,077人
18,132 千人
49,677人
19,981 千人
54,593人
19,340 千人
52,986人
17,836 千人
48,866人
17,991 千人
49,290人
18,223 千人
49,790人
18,172 千人
49,786人
合 計(年間)
(1日平均)
48,246 千人
132,181人
62,012 千人
169,890人
65,595 千人
179,221人
60,350 千人
165,342人
56,748 千人
155,474人
57,209 千人
156,737人
57,926 千人
158,268人
58,362 千人
159,890人
(『鉄道統計年報』より作成)

 輸送人員を見ると1985年度から1995年度にかけて大きく増加していることが分かる。その後は減少傾向にあったが2006年度以降は持ち直 しの傾向にある。特に2008年はガソリン価格の高騰によりマイカーから広島電鉄などにシフトする動きが見られた。(参考記事:ガ ソリン高でマイカー離れ
 しかし下記の1日平均乗車人員を見ると分かる通り、2009年度は一転各駅とも殆ど乗車人員を減らしている。これは2008年秋のリーマンショックに よる景気悪化の影響と思われる。またガソリン価格が落ち着いたことからマイカーに再シフトしたとも考えられそうだ。

▼広島電鉄宮島線 広電西広島〜広電宮島口間の1日平均乗車人員の推移  (単位:人)

営 業`
1998 年度
2000 年度
2002 年度
2005 年度
2006 年度
2007 年度
2008 年度
2009 年度
広 電西広島
0.0
14,899
14,567
13,860
13,326
13,430
13,476
13,487
12,605
東 高須
1.0
1,227
973
932
907
890
897
911
847
高  須
1.4
1,592
1,471
1,427
1,414
1,414
1,426
1,464
1,427
古 江
2.1
3,260
3,016
2,827
2,852
2,932
2,914
2,929
2,792
草  津
2.9
1,581
1,373
1,345
1,227
1,258
1,330
1,326
1,258
草 津南
3.5
1,211
1,151
1,068
1,079
1,090
1,084
1,075
997
商 工センター入口
4.2
3,507
3,718
3,682
3,537
3,537
3,551
3,456
3,397
井  口
4.8
1,545
1,345
1,255
1,181
1,238
1,264
1,275
1,134
鈴 峯女子大前
6.0
2,942
2,419
2,134
2,068
2,066
2,069
2,019
1,907
広 電五日市
6.6
4,077
3,978
3,926
3,660
3,693
3,715
3,770
3,655
佐 伯区役所前
7.2
1,364
1,452
1,342
1,244
1,238
1,254
1,247
1,203
楽 々園
8.2
5,644
5,137
4,805
4,477
4,427
4,385
4,186
3,740
山 陽女子大前
9.2
2,402
2,323
2,055
1,978
1,969
1,941
1,903
1,798
広 電廿日市
9.9
1,351
1,233
1,325
1,265
1,274
1,310
1,326
1,319
廿 日市市役所前※1
10.7
760
858
715
763
895
948
1,086
1,183
宮  内
11.5
1,789
1,641
1,652
1,555
1,568
1,577
1,459
1,350
JA 広島病院前※2
11.9
1,276
1,702
1,151
1,106
1,135
1,150
1,140
1,004
地 御前
12.4
779
684
598
601
603
643
630
590
阿 品東※3 13.9
446
358
306
269
265
276
285
271
広 電阿品
14.6
971
1,782
1,796
1,946
1,883
1,951
2,003
1,910
広 電宮島口
16.1
2,851
2,571
2,423
2,416
2,488
2,664
2,814
2,714
(『広島市統計年鑑』、『廿日市市統計年鑑』より作成)
山陽女子大前〜広電宮島口間の各駅は1日平均乗降客数を2で割ったものを便宜的に乗車人員とした
※1平良駅は2006年6月1日に廿日市市役所前(平良)に改称 ※2JA広島病院前駅は1998年9月1日開業 ※3阿品駅は2001年11月1日に阿 品東駅に改称

 気になるのが中間駅で最大の乗車人員を誇る楽々園駅地図)が1998年度に対して2009年度の乗車人員が33.7%も減少してい ることだ。周辺の広電五日市駅(地図)が同10.4%減、広電廿日市駅(地図)が同2.4%減と比べても減り方が際立っていて、このペースで減っていく と中間駅最大の乗車人員は広電五日市駅に逆転されてしまいそうである。この激しい減少についての理由は不明なので、今後も要確認だ。
 また廿日市市役所前駅(旧平良駅)は順調に乗客を増やしている。これは2006年6月に完成したバスとの乗り換えのシームレス化によって利便性が向上した結果と思われ る。このような改善によって目に見える形で利用者が増えるというのは嬉しいものだ。

 さて乗車人員の推移の傾向は、競合するJR山陽本線も広島電鉄と似ているものがある。広島駅の乗車人員は1985年度から1995年度にかけて大き く増加 し、その後は減少に転じたものの下げ止まり、やはり2006年度から微増傾向にあったものが、2009年度はまた落ち込んだところも広島電鉄と同様であ る。
 その中で特に目立つのが横川駅の堅調さだ。広島駅や西広 島駅が横 這い傾向で伸び悩んでいるのに対し、2005年度以降着実に増加している。これは2003年の広島電鉄の横 川電停改良に伴うJRとの乗り継ぎ利便性向上及び都心への直行系統(7系統)新設により、横川駅が乗り換えの拠点としての地位を年々向上させてい ることが原因と思われる。

▼JR山陽本線 広島〜宮島口間の1日平均乗車人員の推移 (単位: 人)

営 業`
1985 年度
1990 年度
1995 年度
2000 年度
2005 年度
2006 年度
2007 年度
2008 年度
2009 年度
広 島駅
0.0
60,408
72,267
75,578
71,444
69,796
70,162
70,574
70,656
69,840
横 川駅
3.0
9,860
14,478
15,624
14,679
16,499
16,714
17,168
17,561
17,696
  西広島駅 
5.5
6,800
9,909
10,490
9,837
9,326
9,205
9,311
9,367
9,193
新井口駅
9.7
2,397
7,072
7,944
7,418
7,322
7,375
7,461
7,450
7,568
  五日市駅 
12.1
7,464
11,173
13,126
12,117
12,376
12,477
12,730
12,806
12,818
  廿日市駅 
15.5
4,398
3,807
3,958
3,899
3,463
3,488
3,556
3,478
3,376
宮 内串戸駅※1
17.1

3,359
4,462
4,723
4,645
4,633
4,692
4,888
4,943
阿 品駅※2
20.1

1,660
2,399
2,721
2,711
2,625
2,586
2,556
2,539
  宮島口駅※3 
21.8
5,556
7,920
7,199
3,515
3,248
3,302
3,432
3,599
3,809
(『広島県統計年鑑』、『広島市統計年鑑』、『廿日市市統計年鑑』、Wikipediaより作成) 
※1宮内串戸駅は1988年4月3日開業  ※2阿品駅は1989年8月11日開業  ※3宮島口駅の1985年度〜1995年度は宮島口桟橋の乗車人員 を含む


 また広島電鉄沿線の人口を見ると1990年代は郊外化が進行していて、都心部の南区や中区が人口を減らしていたのに対して、西区、佐伯区、廿日市市、大 野町はいずれも増加傾向にある。特に佐伯区と廿日市市は10年間で共に約2万人も増加しており、これが広島電鉄の輸送人員が1985年度から1995 年度にかけての増加の大きな理由と思われる。
 しかし2000年代からはこのような人口動態に変化が生じ、郊外部の伸びが鈍化、都心回帰の傾向が顕著になり南区や中区が増加に転じる。このような変 化は今後少子高齢化が進展すると更に拍車がかかるものと予想される。そうなると都心部内に路線網をめぐらしている広島電鉄に有利になると言えそうだ。逆に 郊外部と都心外縁部までを結ぶJRの輸送人員は横這いか微減傾向が続くものと予想される。JR西日本は近年(特に2010 年3月ダイヤ改正)、広島圏の在来線において快速列車の減便や普通列車の間引きなど縮小均衡策を採るようになってしまった。宮島線と一部並行 する広島〜岩国間は1986年11月ダイヤ改正以降は日中10分ヘッドという1時間当たり6本体制が長年続いていたのだが、2010年3月ダイヤ改正以 降は15分ヘッドに後退している。広島電鉄も 宮島線の日中の運転間隔がかつては日中5〜6分間隔だったものが9分間隔に延びている。このようにかつて積極的に競争し合っていた両者だが、最近はダ イヤ面ではサービ スダウンしている部分があるのが懸念されるところだ。

▼広島電鉄沿線の市区町の人口推移

1985 年10月
1990 年10月
1995 年10月
2000 年10月
2005 年10月
2010 年10月
広 島市
1,044,118
1,085,705
1,108,888
1,134,134
1,154,391
1,173,843
(広 島市南区)
147,541
143,938
138,208
135,467
137,874
138,190
(広 島市中区)
135,883
134,651
128,360
124,719
127,763
130,482
(広 島市西区)
169,190
178,484
178,838
179,519
184,795
186,985
(広 島市佐伯区※1
100,026
124,618
124,618
126,818
126,732
128,696
廿 日市市※2
52,020
63,441
71,227
73,587
74,392
74,023
大 野町※3
22,550
23,802
25,511
25,727
26,442
26,778
(『国勢調査』より作成)  ※1佐伯区は2005年4月に湯来町を編入合併したが2005年、2010年の人口は旧域のみ
※2廿日市市は2003年3月に佐伯町、吉和村を2005年11月に大野町、宮島町を編入合併したが2005年、2010年の人口は旧域のみ ※3大野町 は2005年11月に廿日市市と合併したが2010年の人口は旧大野町を掲載



4. 乗車記録  

広電五日市駅 2011.12
2011 年12月某日(日)、「広電五日市駅」から2系統の電車に乗り「広島駅」ま で乗
り通した。その乗車記録である。

広電五日市駅発11時9分の2系統の広島駅行きは、既に座席は埋まり立客も多い
状況で到着した。

この日はこの前に広電宮島〜広電五日市間に乗車したのだが、宮島を出発し た
時はガラガラでも山陽女子大前楽々園などの駅からはかなり多くの乗客があり、
五日市に着く時点では乗車率が100%を超える状況になっていた。

日曜日の午前中という時間で、JRと並走する区間でも5連接車をしてこれほど混雑
しているとは正直驚いた。広島都市圏の活力をまざまざと実感したのである。

鉄道線内ではスピードをけっこう出すのだが、そのせいか揺れが酷く乗り心地が良
いとはお世辞にも言えない。50kgレールやPC枕木などの重軌道化がされていない
ようなので、乗り心地改善のためにはそのような施策が必要ではないかと思う。

商工センター入口駅でまとまった下車はありましたが、乗ってく る客も多く混雑した
状況は変わらない。山側の斜面にはびっしりとマンションや戸建住宅が建ち並び
人口密集地帯を走っていると感じられる。

JR線では1駅(新井口〜西広島)だが、広島電鉄はその間(商工センター入口〜
広電西広島)に5駅(草津南、草津、古江、高須、東高須)もある。

各駅で乗客を集めながら電車はますます混雑の度合いを増して広電西広島駅
到着した。同駅でも多くの下車があったが、やはり乗客も多く混雑度はあまり変わ
らないままだ。ここからは軌道線となるが、早速西広島駅を出発すると信号待ちで
暫く停車する。

そして発車するとすぐに太田川放水路を新己斐橋で渡る。広々とした景色が爽快
だ。戦災復興事業として整備された平和大通りに線路が敷設されているため走行
環境も良好だ。

途中車いすのお客さんが乗ってきたが、段差無く乗れるグリーンムーバーの威力
を実感できる乗車風景が印象的であった。

広電西広島駅 2011.12

小網町電停 2011.12

小網町電停〜土橋電停 2011.12

土橋電停 2011.12

しかし西観音町電停を出ると信号待ちで暫く停車した。ここで左折し平和大 通りを
離れ、すぐに右折をして非常に狭い道路へと入る。途中の小網町電停は、上記 写
真の通り安全地帯は道路上にペイントしただけで、危険な電停だ。幸いクルマの通
行量も少ない通りのようではあるが、西観音町電停での信号待ちを含め、この区
間を廃止して、平和大通りを直進するルートへの付け替えがやはり必要だと思わ
せる風景だ。

この区間の3つの電停(観音町、天満町、小網町)はそれぞれ利用者がそれほど多
いわけでもなさそうであるし、平和大通りまでの距離も歩ける程度で大したことはな
いので、廃止のハードルは低いのではないかと思う。

土橋電停から寺町通りに入り、片側3車線の広幅員道路となる。 土橋電停で江波
線が合流するので、行き交う電車の数が更に増える。

そして次の十日市町電停で右折し、広島を代表する目抜き通りである相生通り とな
る。既に周りは高層ビルが建ち並ぶ都心部といった趣がある。

車内の混雑ぶりもピークに達する。利用者の多くが「パスピー」を使っていることに
に気付かされる。私は1日乗車券を利用したが、こちらは昔からの磁気カードだ。
もちろん現金利用者も少なからずいて、車掌が両替も行っている。このように様々
な利用手段が確保されているのは便利だが、一方で降車の際に運賃を支払うので
どうしても時間がかかってしまう。この点が悩ましいところだ。

十日市町電停と相生通り 2011.12

紙屋町西電停 2011.12

広島都心部の中心、紙屋町西電停に到着。多くの乗客が降りてしま い、車内は急
にかなり空いてしまった。日曜日の昼間を紙屋町界隈で過ごそうという流動が非常
に強いことを実感した。道路上もクルマとバスが溢れ、渋滞を起こしている。

この辺りは信号と電停が多いことから、電車もスムーズに進むという感じではない。
しかし都心部なので電停が多いことに違和感を感じることはないだろう。各電停で
乗り降りが多く、利便性の高い乗り物として利用者に認知されていることが窺える。

そして都心部の喧騒が落ち着き稲荷町電停を過ぎると左手の駅前通りの先に JR
広島駅のビルが見える。しかし電車は遠回りするように直進し、皆実線と合流する
的場町電停に着く。

的場町電停を発車すると、すぐに信号待ちで暫く待たされる。この広島駅を目前に
した信号待ちは、なかなかイライラさせられるものがある。既にJR広島駅が近いと
いうことを視覚的に分かっているだけに余計に時間がかかっていると思わせてしま
うものがある。

猿猴橋町電停は狭い道路と老朽化した商店街の中にある電停で、 広島の中心駅
のすぐ隣とは思えない環境にある。広島のイメージダウンにも繋がりかねない老朽
市街地だ。この信号待ちが生じやすく無駄に時間のかかる老朽市街地を経由する
この区間はやはり付け替えが必須だと改めて実感する。

終点の広島駅には11時58分着。時刻表によれば定時とのこと。あれだけ信 号待ち
や混雑で遅れが生じていると思わせたのに、それを織り込んでのダイヤなのだと
少々驚いた。

しかしもしJRを利用したならば、五日市駅を11時15分に発車した電車は、広島駅に
11時30分に着く。広電の所要49分に対して僅か15分。この差は大きく、広電を使っ
て広島駅まで通しで利用する人が多くないことも納得できる。

広島駅電停 2011.12

【参考文献】
鈴木 文彦「ひろしまシティ電車の実績と課題」『鉄道ジャーナル』第25巻第5号、1991年、所収
鈴木 文彦「広島 新たな交通体系への挑戦」『鉄道ジャーナル』第32巻第4号、1998年、所収
種村 直樹「LRT GREEN MOVER快走 軌道線を守り育てる広島電鉄」『鉄道ジャーナル』第33巻第11号、1999年、所収
佐藤 信之「広島市の高速鉄道網計画と路面電車の整備」『鉄道ジャーナル』第33巻第11号、1999年、所収


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